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2006年8月号

〓〓〓〓〓〓試写室だより 封切はこれからだ!〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓第四号〓〓〓

     映画を見るプロが選ぶベスト映画&裏ベスト映画
      ∴・∴・∴2006年8月封切り篇∴・∴・∴

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【ベスト】=これぞまぎれもなく、映画を見るプロが選んだ8月の最高作。心して見よ。
【裏ベスト】=出来、不出来は二の次、偏愛あり、ヒイキの引き倒しあり、極私的なケッサク選!
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┣今月の執筆陣(50音順)┫
◇秋本鉄次さん 映画評論家
◇安藤智恵子さん ライター
◇稲垣都々世さん 映画評論家
◇宇田川幸洋さん 映画評論家
◇内海陽子さん 映画評論家
◇馬場英美さん ライター&エディター
◇浦崎浩實さん 激評家(映画評、劇評)
◇江戸木純さん 映画評論家
◇大森さわこさん 映画評論家
◇加藤久徳さん 映画ライター
◇河原晶子さん 映画・音楽評論家
◇黒田邦雄さん 映画評論家
◇塩田時敏さん 映画評論家
◇品田雄吉さん 映画評論家
◇ジャンクハンター吉田さん (有)クルーズ代表取締役
◇高橋諭治さん 映画ライター
◇高村英次さん 映画ライター
◇田中千世子さん 映画評論家
◇暉峻創三さん 映画評論家
◇轟夕起夫さん 文筆稼業
◇西脇英夫さん 映画評論家
◇野村正昭さん 映画評論家
◇増當竜也さん 映画評論家
◇まつかわゆまさん シネマアナリスト
◇皆川ちかさん 雑文業
◇みのわあつおさん ポップ・カルチャー評論家
◇宮城正樹さん 映画&音楽の批評&分析家
◇宮崎祐治さん イラストレーター
◇森直人さん ライター
◇山田宏一さん 映画評論家
◇渡部実さん 映画評論家・日本大学藝術学部講師

◆各人のプロフィール、近況、著作はHPの「執筆者プロフィール」に掲載◆
    http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest

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★秋本鉄次さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/
  ●狩人と犬、最後の旅
     http://www.kariudo.jp/
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html

  「ユナイテッド93」は究極の再現映画、というところ。無垢の乗客たちも、決然と
 蛮行に走るハイジャック犯たちも、ともに神に祈るシーンが印象的だ。「狩人と犬~」
 はドキュメントドラマとして、虚実薄膜なところが興味津々。ワンコもかわいいけど
 ね。超然と、孤高に、と思いきや実は、しっかり女性のパートナーがいるし(実際には
 何度か結婚・離婚している艶福家)、下界に降りてきちゃあネエチャンもいる飲み屋で
 酒も飲むし、商売もするし、の俗っぽさがいいね。“大自然のふところなんざ3日で飽
 きる、ネオンの海で酒池肉林が好き”なボクだが、この映画にはどこか惹かれる。
 「マッチポイント」はアレンがこれまでのトレードマークを捨てたかに見えて、きっと
 運命論者のはずのアレンの本質が見える作品。長年小バクチやってると、一瞬のアヤが
 左右することが身に染みて分かるなあ。ところで、スカーレット・ヨハンセンってもっ
 と下品にして日本人にすると井上和香かね。

 【裏ベスト】
  ●鬘 かつら
     http://www.sonypictures.jp/movies/thewig/index.html
  ●ハイテンション
     http://hightension.jp/

  季節感薄れる中、やっぱり夏はホラーでしょ、ってなもんで、2本選んでみました。
 韓国メロドラマはもううんざりだが、ホラーはまだイケることが判明したのが「鬘(か
 つら)」。「亡国のイージス」で北の女性テロリストを演じたチェ・ミンソがかなりお
 ぞましい熱演。スキンヘッドをかきむしると頭皮が破れ血みどろ頭になって不気味な笑
 みを浮かべるあたり、かなりのもの。「ハイテンション」もスプラッターものに実績薄
 いフランス映画にしては頑張っているほう。「悪魔のいけにえ」のバリエーションだけ
 どね。本当は地元・府中の行きつけの居酒屋のマスター&常連たちが『あれが見たい』
 とひそかに話題にしている「日本以外全部沈没」を載せたかったが、24日に見るので
 この欄には間に合わず、残念~! って波田陽区…あの人はド~してる?

 【封切は終わったけれど…】
  「笑う大天使(ミカエル)」はひょんなことから、超ウルトラスーパーお嬢様学園に
 入学してしまった関西弁の庶民派女子高生が、『ごきげんよう』のお上品なご挨拶が闊
 歩する浮世離れした世界で大奮闘、珍活躍する一席だ。上野樹里を筆頭に、関めぐみ、
 平愛梨のネエちゃんたちは僕の守備範囲内とは言い難いが、一見癒し系、清純派の上野
 の素顔はかなり勝ち気なのが判って見直した。試写会舞台挨拶で記者たちにキレまくっ
 たとか、この映画の撮影中にも監督と衝突したとか夕刊紙に書かれていたっけ。この映
 画にちなんでじゃないけど、“猫かぶり”も楽じゃないね、樹里クン。少なくとも9月
 公開の「出口のない海」の凡庸な戦時下ヒロインよりははるかにいいよ。

★安藤智恵子さん(ライター)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●該当作なし(というより、見ていないので。すみません)

 【裏ベスト】
  ●お散歩
     http://tabenomati.main.jp/koukai/top.html

  好きかキライかといえば決して好きな映画ではないけど、印象に残る作品。純情とい
 う名の男の鈍さ、優しさという名の女の狡さをリアルに見せつけられ(まるで自分の姿
 を見ているようで?!)胸が痛くなりました。

★稲垣都々世さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1)マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html
  ●2)狩人と犬、最後の旅
     http://www.kariudo.jp/
  ●3)紙屋悦子の青春
     http://www.pal-ep.com/kamietsu/
  ●4)深海 Blue Cha-Cha
     http://www.shinkaimovie.com

  1)W・アレンの復活に歓喜し、鮮やかなオチにノックアウトされた。2)コッテリ
 したドラマはともかく、犬の表情と、猟師の顔に刻まれた人生の真実を見るだけで感動
 する。3)真摯であることの力。4)こういう人迷惑なヒロインは好きではないが、彼
 女や彼女を受け入れる人々の心のひだにふれる演出スタイルが好きだ。

 【裏ベスト】
  ●1)太陽
     http://taiyo-movie.com/
  ●2)弓
     http://yumi-movie.net/index.html
  ●3)ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/

  1)語ることさえ危険だが、主人公が天皇であることを置けば作品として面白い。
 2)映画の心はこれまでと同じだが、(悪い男や魚と寝たくない)私でも楽しんで見ら
 れるこなれた娯楽作を、ギドク作品として評価すべきか? 3)事実と思われることを
 そのまま提示するアプローチと、力強い演出力を認める。これを見た(一部の)単純な
 アメリカ人が、ヒロイズムとテロリストへの憎悪だけを感じなければよいのだが……。

★宇田川幸洋さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●楽日
     http://www.tml-movie.jp/

  3年まえだったか、東京国際映画祭で『さらば、龍門客棧』の題で上映された作品。
 むかしからある、いまはめっきりすくなくなったタイプの映画館の、もう廃業という最
 後の日の最後の回、そこにこの映画がいあわせる(「楽日」というのは、ひとつの興行
 が無事おわる日で、むしろめでたいニュアンスがあるのではないか。ぼくの認識がまち
 がっていなければ、この邦題は意味のズレがある)。上映されているのが、キン・フー
 (胡金銓)監督の名作『龍門客棧』('67年)。場内では出演者のシー・チュン(石雋)
 とミャオ・ティエン(苗天)もスクリーンを見つめている。どうしてこんな映画がつく
 れたのか、夢を見ているようでもある。映画館につつまれる幸福感と、それがまさに、
 いまおわる――ひとつのいのちが、うしなわれることのかなしさ。

 【裏ベスト】
  ●紙屋悦子の青春
     http://www.pal-ep.com/kamietsu/

  アニメ版『時をかける少女』の芳山和子(主人公の少女の叔母として登場)にも、つ
 い原田知世のおもかげを見いだそうとしたりしてしまうのだったが、この映画の原田知
 世もふしぎな時のかけかたをしているのではないか。戦争中の本筋と、いわゆる“額縁”
 の現在(これも、額縁をこえたヴォリュームをもってしまっている)と、彼女の年はい
 くつなのだろう。小林薫と本上まなみの兄妹は、いくつちがいなのか。ふつうは気にな
 りそうな、そういうことが、どうでもよくなってくる、ふしぎなタッチの映画。きりっ
 とピントのあった美しい撮影、省略をはぶいたかのような長くつづく日常的会話、どこ
 までも具体的でありながら抽象的でもあるような…。

 【封切は終わったけれど…】
  『デイジー アナザー・バージョン』。普通に公開した国際版は2時間5分。テアト
 ル新宿の午前の回でやってたこれは、韓国公開版ということだが、1時間42分。だいぶ
 みじかい。はじめのほうから、もうチョン・ウソンの一人称描写がはいってきて、彼と
 チョン・ジヒョン、二人が主役の映画である。デイジーの咲く野原と石畳の広場の場面
 がすくなく、国際版に出てこなかった刑事の居室もふくめ、3人の個室の場が多い。メ
 ルヘン調はなりをひそめ、悲劇的な調子がつよく、泣かせる。アクション・シーンのモ
 ンタージュは、こっちのほうが精確でわかりやすい。といったちがいがあった。
  前々回(6月)に書いたDVD『ツイ・ハーク ミッション・ポッシブル M:P-2』、
 約20年ぶりに再見したら、歌合戦の場面、ひどい記憶ちがいをしていたことがわかった。
 笑ってやってください。

★内海陽子さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●キンキーブーツ
     http://www.movies.co.jp/kinkyboots/
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html

  「キンキーブーツ」はイギリスの地方色とロンドンの風俗をミックスした喜劇。紳士
 靴工場を継いださえない青年と、いかついドラッグクイーンの相性がいい。偏見は個人
 の魅力と努力で乗り越えさせるもの、という提言は骨太だ。「マッチポイント」は上昇
 志向の青年の成功とつまずきを描く定番の“愛欲サスペンス”だが、ウディ・アレンの
 艶やかで優美な皮肉が隅々にゆきとどいている。エンディングの先を想像して背筋が凍
 るのもまた楽しい。

 【裏ベスト】
  ●ファントマ 危機脱出
     http://www.fantomas.jp/

  昔、映画ファン仲間の男の子たちがよく騒いでいたなあと思い出す、愉快な60年代
 の「ファントマ」シリーズ第1作。ジャン・マレーの名は忘れても、ルイ・ド・フュネ
 スとミレーヌ・ドモンジョの名は忘れない。
  ご馳走をたらふく食べながらのルイ・ド・フュネスの尋問がおかしく、邪険にされて
 もけなげに救出活動にいそしむドモンジョの姿がたまらなく可愛い。

★馬場英美さん(ライター&エディター)―――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/
  ●サムサッカー ※9月封切
     http://www.sonypictures.jp/movies/thumbsucker/site/top.html

  『ユナイテッド93』は正直、結末を知っているだけに見る前は気が重かった。でも、
 混乱する管制センターの様子など、試写室が静まりかえるほどの臨場感&緊張感に圧倒
 されました。『サムサッカー』は、17歳になっても親指しゃぶりがやめられない少年の
 話。物語の設定、監督がGAPのTVコマーシャルなんかを担当したマイク・ミルズと聞い
 て、単なるオシャレ映画かと思いきや、これが意外とまっとうな青春映画で楽しめまし
 た。少年の心の歪ませ方に愛嬌があり、演じるルー・テイラー・ブッチの“きもかわい
 さ”も妙味。

 【裏ベスト】
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html

  きっと<ベスト>に選ぶべき映画なのでしょうが、不倫の末に堕ちていく男の身勝手
 さに辟易。でも、これが現実とでもいいたげなウディ・アレンの皮肉は好きです。

★浦崎浩實さん(激評家)――――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●スーパーマン リターンズ
     http://wwws.warnerbros.co.jp/supermanreturns/
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html
  ●深海 Blue Cha-Cha
     http://www.shinkaimovie.com
  ●サムサッカー ※9月封切
     http://www.sonypictures.jp/movies/thumbsucker/site/top.html
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/

  「リターンズ」の悪の権化、ルーサー(ケヴィン・スペイシー)が反米主義者らしい
 のがケッ作。エヴァ・マリー・セイント(1922年生れの他、諸説あり)の出演にも、
 感銘。「マッチ~」はシニカルな味わいがしゃれている。ただ、役者が小粒か。「深
 海」は昨年の東京国際映画祭で見たが、ヒロインにいらいらさせられるものの、後半、
 “狙い”が明確になるに従って映画が輝く。「ユナイテッド93」は、どうせ、ヒステ
 リックなアメリカ万歳になってるだろう、と思ったら、意外や、公平な映画。映画(に
 限らないが)は観ないとわからないもんですね、当たり前ですが。

 【裏ベスト】
  ●トリノ、24時からの恋人たち
     http://www.crest-inter.co.jp/torino24/index.html
  ●夢遊ハワイ
     http://www.muyu-hawaii.jp

  前者は、遅れてきたイタリアのヌーヴェル・ヴァーグ(?)で、画面が暗いのと、ナ
 レーションがフランス映画のそれと違って、ダサいのと、欠点いろいろだが、トリノと
 いえばM・アントニオーニ「女ともだち」(1955年、日本公開1964年)を思い出した
 り、なんとなしノスタルジーを喚起させられた。後者は以前、東京国際映画祭で見て、
 実はもうよく覚えてないですが(笑)、脱走兵を追跡する内容でしたっけ? 諧謔的な
 タイトルに妙にカンシンした記憶です。

 【封切は終わったけれど…】
  35年も前になる旧作を紹介させてほしい。「日本侠客伝」BOXが出たが、全11作の
 最終篇「刃(ドス)」(1971年)は、脚本の笠原和夫が亡くなってから(2002年12
 月12日没)、中野武蔵野ホールの特集で初めて見て心打たれ、今度、再見して、感銘
 をさらに深めました。歴史への参画、が脚本家・笠原和夫の作家精神だったとすれば、
 本作はそれが実に美しい形で娯楽映画として結実したように思えてなりません。小沢茂
 弘監督とは、そりが合わなかった由ですが、それらを克服させたのは、脚本の力だった
 かも。

★江戸木純さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/
  ●太陽
     http://taiyo-movie.com/
  ●スーパーマン リターンズ
     http://wwws.warnerbros.co.jp/supermanreturns/
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html

  『ユナイテッド93』はポール・グリーングラスの演出が冴えるパニック・サスペン
 スの傑作。優れたドキュ・ドラマであると同時に、迅速な判断と勇気ある行動が求めら
 れるテロとの闘いについての寓話でもある。『太陽』はイッセー尾形の好演が光る天皇
 映画の力作。この題材を日本の映画が描けないことは日本映画の悲劇であり最大の弱点
 でもある。本来なら『日本沈没』規模で上映すべき作品。『スパーマン リターンズ』
 はブライアン・シンガー監督のダークなセンスが生きた娯楽大作。クリストファー・
 リーブ主演シリーズの記憶を大切にした作り手の姿勢が嬉しい。『マッチポイント』は
 ウッデイ・アレンのファン以外にも楽しめる本当に久々の快作。正直言ってここ数作は
 醜悪極まりない愚作の連続だった。

 【裏ベスト】
  ●サムサッカー ※9月封切
     http://www.sonypictures.jp/movies/thumbsucker/site/top.html

  鼻持ちならないアーティスト系映画と思ったら、予想外に生真面目で好感の持てる青
 春映画だった。主演のルー・プッチの演技も見事だし、シネスコにこだわった映像も上
 出来で音楽ももちろん抜群のセンス。ただし、キアヌ・リーブスの下手クソな芝居が作
 品の完成度を急降下させている。

 【封切は終わったけれど…】
  『スカイ・ハイ』『ダ・ヴィンチ・プロジェクト』。『スカイ・ハイ』はアメコミ・
 ヒーローものと青春学園ものというアメリカ映画の2大要素を合体させた最も正しいハ
 リウッド映画にして本年度ベスト級の大傑作。未公開のポーランド映画『ダ・ヴィンチ・
 プロジェクト』は、知る人ぞ知る傑作『キングサイズ』のジュリアス・マチュルスキ監
 督の最新作で、クラクフの美術館にあるダ・ヴィンチの「白貂を抱く貴婦人」の強奪&
 贋作作戦を描いたサスペンス活劇。決して『ダ・ヴィンチ・コード』のバッタものなど
 ではない。クラクフの街を駆け巡るロケも楽しくあの町に行ったことのある人なら絶対
 必見。

★大森さわこさん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html
  ●弓
     http://yumi-movie.net/index.html

  今も試写はまるで行けてなくて、すごーく前に見た在庫品から放出(すみません)。
 「マッチ・ポイント」はウディ・アレンの久しぶりの快作。英国の風景とアレンの(意
 地の悪い)世界がうまく合体。最近の彼の映画は毒がすっかり抜けていましたからね。
 (アクが戻った)J・リース・マイヤーズと(どこまでもビッチな)S・ヨハンセンも
 イイです。
 「弓」はキム・ギドクの新作。「サマリア」や「うつせみ」の方が“ワザあり”だが、
 今回は神話的な世界を美しい映像で見せ、けっこう分かりやすい。オヤジの哀愁(と願
 望?)が込められた作品なんでしょうか。
 アレンも、ギドクも、若いオネーチャンの色気をうまく撮りますね。
 未見の新作では「ユナイテッド93」に期待です。この映画を撮ったポール・グリーン
 グラス監督、前作の「ボーン・スプレマシー」も良作でしたね。

 【封切は終わったけれど…】
  『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』。今度、DVDになりますが、このメル
 マガも推薦の1本ですよね。今年、最も力を感じた1本でした。傑作「アモーレス・ペ
 ロス」の脚本家、ギジェルモ・アリアガが手がけたシナリオは本当に素晴らしい。彼の
 新作「バベル」(監督は「アモーレス~」のイニャリトウ、主演はブラピや役所広司)
 にも期待しています!

★加藤久徳さん(映画ライター)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1)ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/
  ●2)紙屋悦子の青春
     http://www.pal-ep.com/kamietsu/
  ●3)マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html
  ●4)スーパーマン リターンズ
     http://wwws.warnerbros.co.jp/supermanreturns/
  ●5)森のリトル・ギャング(吹替版)
     http://mori-gang.com/

  今月は内容が濃い。1)から3)までは、実際に今年のベスト10に入りそうだ。夏
 休み向けの娯楽主体の作品が揃う8月なのに、夏休みらしい映画を僕はあまり見ていな
 い。そのためか、裏ベストがほとんどない。よって、ワンのみ。
  1)2)4)は、これはもう鎮魂歌である。セプテンバー11、黒木和雄監督、クリ
 ストファー・“スーパーマン”・リーブのことを脳裏に浮かべて観ると、もう胸迫るも
 のがある。漠然とは観られなかった。ウディ・アレンの『マッチポイント』は、彼が
 ニューヨークを離れて撮らざるを得なかった理由に納得。タイトルも昔風に『倫敦のア
 メリカ人』に変えればもっといい。『森のリトル・ギャング』は吹替、字幕両方観たが、
 画面のスピードに付いていくためには吹替の方がお薦め。亀のヴァーンに扮する武田鉄
 矢は適役だと思う。

 【裏ベスト】
  ●1)I am 日本人
     http://iam-nipponjin.com/
  ●プラスワン)ファントマ映画祭
     http://www.fantomas.jp/

  “永遠の青春”森田健作が精魂傾けて製作主演した『I am 日本人』を裏に入れるの
 は失礼な気もするが、お世辞にも完璧な映画とは呼び難いから裏に入れた。とは言え、
 彼の現代日本の実情や日本人に対する危惧は、全く同感で、彼が本作を作りたい気持ち
 はオジサンには理解できる。作品の造り方は、彼が若かった頃に出演した70年代の
 (松竹)映画・TVの世界と同じで、今の目では古めかしいほど庶民的だ。でも気骨を
 はっきり感じる。後半部には特にバイタリティが漲っていて、同時期に公開される他の
 日本の“感動作”より見所は多い。
  プラスワンとして、映画祭の形で全3作がリバイバルされる『ファントマ』シリーズ
 も入れておく。今から40年以上も前、007シリーズを初めとしたスパイ映画ブームの最
 中にフランスが製作した、フランス流ゴーマニズムに支配されたノワール・コメディ。
 CGなし、若くもないスターたちが、見栄とプライドだけで体を張った究極のアクション
 がけっこうゾクゾクする。M・マーニュの洒落たサントラも大いに楽しめる。

★河原晶子さん(映画・音楽評論家)―――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●太陽
     http://taiyo-movie.com/
  ●弓
     http://yumi-movie.net/index.html
  ●楽日
     http://www.tml-movie.jp/
  ●迷子
     http://www.tml-movie.jp/
  ●西瓜
     http://www.tml-movie.jp/

  世界史の重要な転換点を生きた昭和天皇を描いてくれた「太陽」のソクーロフ監督に
 ありがとう、と。
  「弓」でギドク監督はさらに神話的世界へと歩み入っています。
  閉鎖される映画館に愛を込めたツァイ監督の「楽日」。一方でAV撮影というスキャン
 ダルに挑んだ「西瓜」。彼の映画は観るほどにくせになります。リー・カンションの初
 監督作「迷子」も愛すべき作品です。

★黒田邦雄さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/
  ●太陽
     http://taiyo-movie.com/

  「ユナイテッド93」は何より航空パニック映画として傑作。事実の捏造と批判する
 人もいるようだが、ハリウッド映画にしては意外なほどヒーロー主義もプロパガンダ性
 も感じられなかった。「太陽」は昭和天皇もマッカーサーも威厳がなく、老人会のお芝
 居みたいで意表をつかれた。日本人にはとても撮れない映画で、ソクーロフの勇気に脱
 帽。

 【裏ベスト】
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html

  モンティとリズが美しかった「陽のあたる場所」のリメイク? NYを飛び出したウ
 ディ・アレンが、舞台をロンドンに移してのびのびと新境地に挑戦している。ひょっと
 して、NYが足枷になっていたのかも。もうアレンは出なくていいから、ヒッチコック
 ばりの作品を撮って欲しい。

 【封切は終わったけれど…】
  ツヴァイクの小説「女の24時間」を脚色した「ブラウン夫人のひめごと」は、3つ
 の時代をリンクさせながら語られる愛の物語。フランス映画らしい恋愛至上主義がゴー
 ジャスに描かれている。

★塩田時敏さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●弓
     http://yumi-movie.net/index.html
  ●46億年の恋
     http://www.cinemart.co.jp/46/

  今年既に「うつせみ」が公開されているキム・ギドク監督だが、「弓」は今月のみな
 らず今年のベストとも言うべき傑作だ。神話の域に達したか。武器の弓を逆に持ち、愛
 の楽器として奏でるヴィジュアル一つで、愛と憎しみの全てを描き出す、奇跡。「サマ
 リア」にも出ていたハン・ヨルムのエロかわいさに尽るか。女優が出ないのがもの足り
 ないが、三池崇史の「46億年の恋」も宇宙真理的な愛の前衛エンタテインメント。

 【裏ベスト】
  ●トリノ、24時からの恋人たち
     http://www.crest-inter.co.jp/torino24/index.html
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/

  「ユナイテッド93」は表ベストでもいいのだが、でもやはり、面白すぎる位の究極
 の再現フィルムだろう。「トリノ、24時からの恋人たち」は今春、訪問したトリノ国
 立映画博物館が舞台で、一緒に食事した館長のアルベルト・バルベラも出演しており偏
 愛したい。のみならず、個人的には嫌いな偽善的な「ニュー・シネマ・パラダイス」が
 チャップリンなら、同じくイタリア映画の本作はまさにキートンという肌ざわりなので
 ある。

★品田雄吉さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/
  ●紙屋悦子の青春
     http://www.pal-ep.com/kamietsu/
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html

  「ユナイテッド93」は、再現ドキュメンタリーのような迫真感。編集がうまい。
 「紙屋悦子の青春」は故黒木和雄監督の熱い反戦の思いが伝わってくる。「マッチポイ
 ント」はウディ・アレンらしい皮肉な結末。

 【裏ベスト】
  ●スーパーマン リターンズ
     http://wwws.warnerbros.co.jp/supermanreturns/
  ●太陽
     http://taiyo-movie.com/
  ●サムサッカー ※9月封切
     http://www.sonypictures.jp/movies/thumbsucker/site/top.html
  ●深海 Blue Cha-Cha
     http://www.shinkaimovie.com

  「スーパーマン リターンズ」はタイトルロールを演じるブランドン・ラウスがいか
 にもスーパーマンっぽくってよかった。ケヴィン・スペーシーの悪役も結構。「太陽」
 はイッセー尾形が飄々としていてよかった。皇居内のセットはわびしかったが。「サム
 サッカー」はみんながそれぞれの問題を抱え込んでいる現代アメリカの〈家庭〉の姿が
 見えるような内容だ。「深海」は男とどう付き合ったらいいかわからない女性の悲劇。
 こういう女性、いるな、と思わせて、かなり怖い。

★ジャンクハンター吉田さん(有限会社クルーズ代表)―――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1)マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝
     http://www.m-thunder.com/
  ●2)青春☆金属バット
     http://www.s-bat.com/

  1)は国内外の多くの作品でアクション監督として演出の腕を磨いてきた谷垣健治監
 督の劇場初長編作。冒頭7分間ノンストップの格闘シーンは何度もリハを重ねて仕上がっ
 た賜物。倉田vs千葉に目が行き過ぎるけど観所は豊富! 2)は熊切和嘉監督が初めて
 描いた青春映画。熊切作品好きからは賛否が分かれるけど「野狐禅」の竹原ピストルの
 ネガティブなようでポジティブな自然体オーラに惹かれる。終演で流れる新曲「ならば、
 友よ」も最高の歌詞!

 【裏ベスト】
  ●1)ハイテンション
     http://hightension.jp/
  ●2)ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/

  1)は日本でも公開が期待されている『サランドラ』を現代劇として完璧なリメイク
 に挑戦した(傑作!!)アレクサンドル・アジャの'80年代を彷彿させるようなスプラッ
 ター描写は大きなスクリーンで観る価値大! 2)は逆に大画面で観ると飛行機酔いと
 は違った酔いが襲うはず。緊張感の続く演出に加えほぼ全編をオールハンディ&ステディ
 カムで撮影しているから。本作はテレビ的に言えば「金かけた再現VTR」なんだよね。
 惜しい。

 【封切は終わったけれど…】
  『バタリアン4』。傑作とまでは言い難いが、ピーター・コヨーテの弾けた演技は最
 高だったと思う。タラレバになってしまうけど、トビー・フーパーが監督を降板しない
 で演出していたらと考えると、ちょっと物足りなさが残る。が、脚本のウイリアム・バ
 トラーは『13金パート7』や『悪魔のいけにえ3』で殺される被害者役を演じていた
 だけあり、ホラー好きが喜ぶようなマニアックなポイントをかなり押えてあるので好意
 的な脚本でしたね。

★高橋諭治さん(映画ライター)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●スーパーマン リターンズ
     http://wwws.warnerbros.co.jp/supermanreturns/
  ●紙屋悦子の青春
     http://www.pal-ep.com/kamietsu/
  ●ハイテンション
     http://hightension.jp/
  ●深海 Blue Cha-Cha
     http://www.shinkaimovie.com
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/

  超大作にはほっといても注目が集まるので、積極的に薦める機会は少ないのですが
 『スーパーマン リターンズ』には完敗だ。繊細で優雅で、なおかつ必死で、最後には
 ウウッと涙してしまいました。珍しいフレンチ・スプラッタ『ハイテンション』は、若
 者が殺人鬼に脅かされるハリウッド・ホラー風のお話だが、新人監督の“繊細で荒っぽ
 い”演出力がずば抜けている。しかもヒロインが“(親友を救出するために)追跡しな
 がら(殺人鬼に気づかれないように)逃げ回る”という実にユニークなシチュエーショ
 ンがスクリーンで繰り広げられ、物凄いスリルを感じた。台湾映画『深海~』は、まる
 でケン・ローチのような厳しくも優しい眼差しで撮られた孤独な女たちの友情劇。必見
 の一作です。

 【裏ベスト】
  ●弓
     http://yumi-movie.net/index.html

  老人と美少女が海に揺らめく船上で織りなす“純愛”映画。キャラクターも舞台設定
 もキム・ギドク監督ならではの異色作で興味深く観賞したが、今回はやや緊張感が持続
 せず驚きも乏しい。ちなみに主演のハン・ヨルムは、同監督の『サマリア』の前半で死
 亡した女子高生を演じていた小悪魔女優です。

 【封切は終わったけれど…】
  前回の〆切時点で未観賞だった『ジダン 神が愛した男』。あのジダンのプレーぶり
 を一試合延々と追いかけた記録映画である。当然のことだが、サッカー選手は試合中
 ボールに触っていない時間帯のほうがはるかに長いわけで、よくもこんな企画を実現さ
 せたものだ。すでにワイドショーなどで報じられている通り、ワールドカップ決勝戦と
 同じ驚きの結末。音響効果の凄さ、呻き声とツバを吐く獣のようなジダンの振る舞いも
 含め、崇高な何かを観た手応えが残る。

★高村英次さん(映画ライター)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●・・・なし

  対象作の試写がないので見ている数が些少。したがってその中からベストと呼べるも
 のは、・・・。

 【裏ベスト】
  ●花田少年史 幽霊と秘密のトンネル
     http://www.hanada-shonen.com/

  劇画をTVドラマ風の演出で見せるポップすぎる邦画作品にしては、適度なバランス
 感覚で楽しませる。特に前半が素晴らしく、ほとんど前半だけでいいと思わせるほど。
 『ALWAYS 三丁目の夕日』の子役・須賀健太と『さくや妖怪伝』の安藤希の関係がな
 にやらエロティックで、安藤が須賀の坊主頭に触るシーンにはトリュフォーの『あこが
 れ』のような、思春期の嬉し恥ずかしい悦びが……。後半は映画が変わっちゃうのが惜
 しい。

 【封切は終わったけれど…】
  『東京湾』(1962)は野村芳太郎の隠れた傑作。タイトな構成でテンポがよく、い
 かにも本格スリラーの味。囮捜査官が殺され、それをベテラン刑事の西村晃と新米が追
 跡。西村の妹に新米が惚れて悩む件は同監督の『張込み』を、刑事部屋での捜査会議は
 黒澤明の『天国と地獄』を彷彿とさせる。ワンシーンだけの中国戦線が異常に重くてリ
 アル、壮絶なラストには意表をつかれた。最北の名画座・蠍座での野村監督特集で見ら
 れて、幸せ。

★田中千世子さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●楽日
     http://www.tml-movie.jp/
  ●西瓜
     http://www.tml-movie.jp/
  ●太陽
     http://taiyo-movie.com/
  ●紙屋悦子の青春
     http://www.pal-ep.com/kamietsu/
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/

  ツァイ・ミンリャンの『楽日』は昔の映画館のにおいや椅子の感触に淫するようにノ
 スタルジックなのがとてもいい。『西瓜』はラストシーンが好きだ。ソクーロフの『太
 陽』は昭和天皇の人間くささを描いて面白い。太陽をずっと見つめたあと、他に目を転
 じるとそこが緑にみえるが、それと同じで、画面の天皇が人間らしくあればあるほどか
 えって普通の人でなく、やっぱり万世一系かもしれないと思えてくる。『紙屋悦子の青
 春』は黒木監督の最高作だ。

 【裏ベスト】
  ●青春漫画~僕らの恋愛シナリオ~
     http://www.seishunmanga.jp/

  韓流・恋愛ものは食傷ぎみだが、子供時代を演じるパク・チビンに感心している。こ
 の子は『奇跡の夏』の時もよかった。

 【封切は終わったけれど…】
  前回はモンゴルで自転車にのっていて締め切りをすっかり忘れてしまった。アニメの
 『時をかける少女』が素晴らしい。

★暉峻創三さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●太陽
     http://taiyo-movie.com/
  ●マスター・オブ・サンダー ~決戦!!封魔龍虎伝
     http://www.m-thunder.com/
  ●深海 Blue Cha-Cha
     http://www.shinkaimovie.com

  『太陽』は、今月のベストの域を超えて年間のベストも伺える屈指の出来栄え。一方、
 それと一見対照的な出で立ちの(笑)『マスター・オブ・サンダー』も、アクション・
 シーンに限らず谷垣演出が冴えまくる。倉田保昭のカワイさ!

 【裏ベスト】
  ●幻遊伝
     http://www.kadokawa-herald.co.jp/official/genyuden/

  これ、別に気に入ってるわけではないが、一流の役者陣に加え、エドワード・ヤンの
 弟子・陳以文監督、侯孝賢、王家衛の愛用カメラマン・李屏賓、台湾、香港のあらゆる
 (と言っても大げさではない)名作の録音を手がけてきた杜篤之、という台湾が誇る超
 一流スタッフの力を総結集しておきながらこんなクオリティ!!(←もちろん悪い意味で
 言ってます)とは、映画制作の奥深さを改めて知らされた。

★轟夕起夫さん(文筆稼業)―――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●紙屋悦子の青春
     http://www.pal-ep.com/kamietsu/
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/
  ●太陽
     http://taiyo-movie.com/
  ●異常性愛記録ハレンチ
     http://www.cinemabox.com/schedule/shinjuku/soon.shtml ※劇場サイト

  元「時をかける少女」原田知世がヒロインなのは、決して偶然ではない! 『紙屋悦
 子の青春』は、現在から“過去”を照射し、それを“未来”のように体感させる逸品(
 黒木和雄監督、あらためて合掌です)。『ユナイテッド93』も、似たような劇構造を
 持っていて(あるいは黒木監督の『TOMORROW/明日』か……)、クライマックスも
 すごいが(決定的瞬間を捉えた“一人称”カット!)、そこに至るまでのかけがえのな
 い一瞬一瞬時間が印象に残る。何とイッセー尾形が昭和天皇ヒロヒトを演じた『太陽』。
 マッカーサーとの珍問答やらヒロヒトの口癖「あっ、そう」に和ませられつつ、ラスト
 の会話にドキっとさせられますぞ。監督のソクローフ氏に取材する機会を得たが、ユー
 モア好きなオッサンでしたよ。『異常性愛記録ハレンチ』は、昨年8月12日に亡くなった
 “キング・オブ・カルト”石井輝男監督の幻の怪作。一周忌特別レイトショー公開され
 ます。

 【裏ベスト】
  ●弓
     http://yumi-movie.net/index.html
  ●狩人と犬、最後の旅
     http://www.kariudo.jp/
  ●お散歩
     http://tabenomati.main.jp/koukai/top.html

  主要登場人物は老人と少女と若者。世界を極度に抽象化し、いつもながら反則スレス
 レの寓話を創り出したのがキム・ギドク監督の『弓』(ギドク監督に取材、雑誌「TV
 Bros.」と劇場用パンフに載ります)。『狩人と犬、最後の旅』は、手塚治虫の『シュ
 マリ』や犬好きは必見でしょう。最初に出てくるリーダー犬の名前が“ナヌーク”で、
 真打ちがアパッシュ(アパッチのフランス語読みか)。監督のニコラス・ヴァニエは今
 年3月、犬ぞりで3ヶ月半かけ、シベリア横断8000キロを走破した本物の冒険家! 
 なりゆきでセックスしてしまった男と女のその後を描いているのが『お散歩』。監督、
 脚本、編集は松田彰(67年生まれ)。8ミリ長編作品『餓鬼の季節』で97年度PFF審
 査員特別賞を受賞し、本作もバークレー映画祭ほかで賞に輝いている。日曜に近所を散
 歩するだけのカンケーになっちゃう、この“散歩プレイ”がなかなか味わい深いんです。

 【封切は終わったけれど…】
  前回参加できなかったのですが、『ゆれる』がベスト、裏ベスト合わせてイチバン人
 気だったのが嬉しかったです(劇場パンフに執筆しております。オダギリジョー氏のイ
 ンタビュー)。

★西脇英夫さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1位)ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/
  ●2位)狩人と犬、最後の旅
     http://www.kariudo.jp/
  ●3位)マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html

  1位は、ほとんど芝居っけのないドキュメンタリーな作りが、迫真のサスペンスと恐
 怖を生み、ドラマでは味わえない感動を与えてくれる。2位も、自然と人間との調和と
 対立をリアルな演出と、猟師と犬との微笑ましいやりとりで描き、心の奥にジワッと
 迫ってくる。3位は、逆にこれぞドラマの真髄といった雰囲気で、これまでのウッディ・
 アレン作品とはひと味もふた味も違う。ラストが実にいい。

 【裏ベスト】
  ●1)深海 Blue Cha-Cha
     http://www.shinkaimovie.com
  ●2)夢遊ハワイ
     http://www.muyu-hawaii.jp
  ●3)弓
     http://yumi-movie.net/index.html

  1と2は、最近珍しい台湾映画で、のんびりとした味わいが、昔の日本映画を思い起
 こさせる。中国映画とも韓国映画とも違う、独特の人間描写と感情の機微が、切なくて
 暖かい。3は、韓国の鬼才キム・ギドクのこれも久し振りの作品。初期作品の、心の底
 をえぐるような残酷さや、観る者にも感じとれる痛さはかなり和らいできたが、それで
 もどこかドキドキするような葛藤が潜んでいて、サスペンスフル。

 【封切は終わったけれど…】
  すでに公開されているが、『アルティメット』がすごい。ノーCG、ノーワイヤー、
 ノースタントマンのアクションとしては、これまでで最高。なんといっても、主演の二
 人の男優が見事で、かっこいい。『マッハ!』を軽く超えている。粗製濫造の多かった
 リュック・ベッソン印作品として、これは名誉挽回になった。アクション好きは、絶対
 観るべし。

★野村正昭さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●太陽
     http://taiyo-movie.com/

  ソクーロフの映画は「マリア」以外は私には、どれもこれも退屈極まりなく、しかも
 数年前、山形国際ドキュメンタリー映画祭の壇上で本人が「ここにこうして来れたのも
 ハスミ先生のお蔭です」と、ふざけたコメントをしていたので、生涯縁がないだろうと
 思っていたが、これは傑作。昭和天皇役イッセー尾形の良く言えばイノセント、悪く言
 えば××な素晴らしい演技を、あのタラーッとしたカメラワークで捉えていて飽きるこ
 となく見た。

 【裏ベスト】
  ●花田少年史 幽霊と秘密のトンネル
     http://www.hanada-shonen.com/

  日本版ハリー・ポッターと苦しまぎれの宣伝をしているようだけど、主人公が超能力
 を持った少年ならば、そうなるのかという疑問はさておき、ひとえに母親役篠原涼子の
 コメディエンヌぶりに一票を投じたくて、裏ベストに推す。西村雅彦のヒッピー姿も大
 いに笑えたし。ところで、この原作漫画、数年前に東映で実写化されかけたが、撮影中
 にあるトラブルで中止され、その理由というのが実に面白かったのだが、あ、紙数が尽
 きた!

★増當竜也さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●スーパーマン リターンズ
     http://wwws.warnerbros.co.jp/supermanreturns/

  リメイクではなく、リチャード・ドナー監督の79年版を第1作とするシリーズの最
 新作(微妙に分岐している感もあるが)であり、その第1作を少年時代に観て感激した
 世代のこだわりが随所に伺える快作。スーパーマンとはやはりヒーローのスタンダード
 であることを痛感し、改めて涙。久々にハリウッド製大作の気持ちよさを満喫しました。
 ケヴィン・スペイシーのレックス・ルーサーはジーン・ハックマンを凌駕しています。

 【裏ベスト】
  ●マスター・オブ・サンダー 決戦!!封魔龍虎伝
     http://www.m-thunder.com/

  はっきりいってひどい出来で、アイドル映画としても中途半端。小松彩夏チャンの
 ファンとしても無念の想い。しかし、倉田保昭と千葉真一の対決シーンのみ急にテン
 ションが上がり(決して撮り方が上手いわけでもないのに)、思わず興奮してしまった
 自分が悔しい。二大アクション・スター夢の共演という事実におもねず、もっと映画と
 して企画段階からきちんと作り上げてほしかった。

 【封切は終わったけれど…】
  『ゲド戦記』。宮崎アニメへのリスペクトと、往年の東映動画などの素朴な漫画映画
 へ回帰しようとする意欲、地に足の着いたアクション、人心の光と影にこそこだわった
 姿勢などなど、すべての要素が今の自分にフィットしました。新人監督ゆえのぎこちな
 さも初々しく、後半の作画クオリティがダウンといった短所も超えて、今の時代ならで
 はの真摯な映画として強く推したい。誰が何と言おうとも、今年のベスト1候補です。

★まつかわゆまさん(シネマアナリスト)―――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html
  ●スーパーマン リターンズ
     http://wwws.warnerbros.co.jp/supermanreturns/
  ●僕の、世界の中心は、君だ。
     http://wwws.warnerbros.co.jp/bokukimi/

  いずれも一種のリメイクながら「じぶんのもの」にしているところ。リスペクトは持
 ちつつ、オリジナルに寄りかからない。スーパーマンは神になり、50年代アメリカン・
 モラルからウディは解放され、韓国ラブストーリーのべたさを真似した日本版の映画版
 に韓国の方が三行半を突きつけた。

 【裏ベスト】
  ●キンキーブーツ
     http://www.movies.co.jp/kinkyboots/
  ●ハッスル&フロウ
     http://www.eiga.com/official/HandF/
  ●サムサッカー ※9月封切
     http://www.sonypictures.jp/movies/thumbsucker/site/top.html
  ●森のリトル・ギャング
     http://mori-gang.com/

  まっとう。奇をてらわない、一生懸命の後に来るハッピーエンドがうれしい。報われ
 る、という感覚。大事だと思うなぁ。いまちょっと個人的なこころの疲れがハッピーエ
 ンドを求めているだけかもしれないけどね。しかし、四作品ともきちんと考え抜いた脚
 本で、役者たちも自分の役割を楽しみながらきっちりとこなし、いい作品になっている
 のが前提だが。

 【封切は終わったけれど…】
  「ゲド戦記」。いいです。原作者がこの物語を書いた時期、その意味を考え、彼女が
 なぜ今、宮崎駿を映画化に指名したのかを考えると感慨深いものがある。それを引き受
 け、自分のものにした宮崎吾朗、たいしたものだと思う。そして、志をこれだけ息子に
 伝えた父駿も見事だと思う。模倣でも継承でもなく、自分の志を持ち貫いたら父の志と
 同じだったというところ、すごくいいと思う。

★皆川ちかさん(ライター)―――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●太陽
     http://taiyo-movie.com/

  イッセー天皇はひょうひょうとしてて、すっとぼけたディレッタントみたいでキュー
 ト。侍従長の佐野史郎が美しいし(この人は燕尾服が似合いすぎる)。終盤に皇后が出
 てきたあたりからラストシーンにかけてが……すごい迫力。これはソクーロフ好きには
 たまりません。天皇が私たちと同じ、悩み苦しむ一個人として共感できるように描いて
 いて、そういえば時期的に天皇が人間宣言をする前後だったのだなあ、と後で気づいた。

 【裏ベスト】
  ●46億年の恋
     http://www.cinemart.co.jp/46/

  なんでもこなす三池崇史監督の初めてのラブストーリーは、ハードな男色もの。さす
 がとしか言いようがありません。男の人になりたい、という気持ちに突き動かされまし
 た。特に遠藤憲一になりたい。

 【封切は終わったけれど…】
  「ハイジ」。不意に癒されてしまったなあ。ハイジになって(エンケンになりたい気
 持ちとハイジになりたい気持ちが違和感なく共存する不思議)アルムのおんじと手作り
 の穴ぼこチーズを売りたい、とすら思ってしまいました。そして白パンを食べるの。ユ
 キちゃんもいるよ。

★みのわあつおさん(ポップカルチャー評論家)――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1)ハッスル&フロウ
     http://www.eiga.com/official/HandF/
  ●2)ファントマ映画祭
     http://www.fantomas.jp/
  ●3)スーパーマン リターンズ
     http://wwws.warnerbros.co.jp/supermanreturns/

  『ハッスル&フロウ』。「宅録」のHOW TOにもなる。スーパーの卵入れが部屋の防
 音になることを、この映画で初めて知った。これから、すぐホノルルへ経つところなの
 で(今年4度目)ホノルルで卵ケースを収集しようと、スーツケースの空きを確保。帰
 国後、自宅の「宅録スタジオ」に利用するつもり。
  『ファントマ映画祭』。ルイ・ド・フュネスって、ずっとフィジュカル・アクション
 のサイト・ギャグが芸風だと思い込んでいたら、実はキャラクター系だったんですね。
 ミレーヌ・ドモンジョは、不滅の「エロ・カワイサ」!
  『スーパーマン リターンズ』。バットマンはいじりようのあるキャラだけど、スー
 パーマンはそうはいかない。コミックス・シリーズは、ロシアの生まれ育ちにしたり、
 刈り上げヘアにしたり、親戚を殺されたりと設定を色々と替えていますが、『リターン
 ズ』も創意工夫で強引に設定を替えて、楽しませてくれる。ただし、これが限度だろう
 ね。スーパーマンのキャラが不変だから、リアリズム志向はムリだし。ファンタジーに
 徹底するしかない。

★宮城正樹さん(映画&音楽の批評・分析家)―――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●紙屋悦子の青春
     http://www.pal-ep.com/kamietsu/

  黒木和雄監督の遺作。長回しを多用した室内劇にも関わらず、スケール大きく戦争の
 悲劇を描いた『ホタル』『男たちの大和』以上に、登場人物たちの感情を強く感じさせ
 る。過去編に入っていきなりの超長回し撮影から向田邦子的ホームドラマのように思わ
 せておいて、本編の全貌を凝縮。抑えた演技の連続が深い悲しみを感じさせ、原田知世
 が波音を聞く微かな希望の光とレクイエム風トランペットを流すエンド・ロールまで僕
 は何度も泣いた!

 【裏ベスト】
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/

  『エアポート』シリーズと違い、観る前からハッピー・エンドが期待できない、全員
 死亡の本当にあった航空パニック映画。しかも、管制塔、指令室、航空機内などの密閉
 空間のメタリックな色調と主流となる近接撮影により、観ていて息苦しさが増幅してく
 る。そう、感情移入すれば、まさに死ぬ気持ちを体感してしまうのだ。ああ、地獄みた
 いでホンマに恐ろしかったよな。生きててよかった。こんな言い方も変だけど「2度と
 観たくない傑作」。

 【封切は終わったけれど…】
  というか、関西以西は公開中、もしくはこれからの封切となるのだけれど『トランス
 アメリカ』と『プルートで朝食を』。去年の邦画『メゾン・ド・ヒミコ』などもそうだ
 が、どちらも親子の絆を描く普遍的な人間ドラマ。前者はアメリカン・ロードムービー・
 タッチ後者は脱色を含めた多彩な画調とポップ音楽でカラフルな作りだが、共に『パリ、
 テキサス』の影響が濃厚。親を探す展開もそうだが、後者の赤色に染まる覗きシーンは
 モロでしょ?

★宮崎祐治さん(イラストレーター)―――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/

  有名俳優は出てこない。管制官役などに本人が出ていて、自分自身を演じる。ビルの
 崩壊も見せない。よく知られていないハイジャック機を選んだ。それでもこれだけヒロ
 イズム溢れる、ドラマチックなハリウッド・エンタテインメント映画として成立させて
 しまう演出の手腕は驚くばかり。暗転して流れるオルゴールと子供の歌に、思わず涙が
 出た。

 【裏ベスト】
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html

  最近はウディ・アレン人気が少々薄まったようだけれど、私の大好きな監督のひとり。
 「僕のニューヨークライフ」なんて、周りに「面白い、面白い」と言いふらして回った
 くらい。舞台をロンドンに移した、ギャグの少ない新作は、皮肉の利いたラストで一気
 に笑える。

★森直人さん(ライター)――――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●マッチポイント
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html
  ●ユナイテッド93
     http://www.united93.jp/
  ●ラフ
     http://www.rough-movie.jp/index.html
  ●サムサッカー ※9月封切
     http://www.sonypictures.jp/movies/thumbsucker/site/top.html
  ●ビースティ・ボーイズ 撮られっぱなし天国
     http://tora-ten.com/pc/index.html

  『スーパーマン リターンズ』など気になる未見作をいくつか残しながらの選出。ウ
 ディ・アレンの“ニュー・クラシック”ぶりはお見事! 『ユナイテッド93』、ポー
 ル・グリーングラスは21世紀のジョン・フランケンハイマーか? 『ラフ』は、あだ
 ち充マンガの映画化として、かなり理想的な出来だったなぁと。

 【裏ベスト】
  ●森のリトル・ギャング
     http://mori-gang.com/

  ドリームワークスのアニメの寓意度の高さはお気に入りです。あと同姓のよしみで
 (笑)。

★山田宏一さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●石井聰亙監督30周年記念「2006年石井映画への旅」

  石井聰亙監督のデビューから30周年を記念して、沖縄本島の北端、北谷町美浜アメ
 リカンビレッジで催された沖縄国際映画祭プレイベント「おきなわシネマ&ミュージッ
 ク・フェスタ2006」の特別企画としてDVD上映されました。映画祭の企画者・ディレ
 クターの小松沢陽一氏の司会による石井監督のトークとともに緊迫した感動的な一夜に
 なりました。東京でも、その他の場所でも、つづいて上映会が催されるものと思われます。
 石井監督自身による自作のモンタージュ、そして『ELECTRIC DRAGON 80000V』
 『シャッフル』。共感にせよ異和感にせよ、安易な反応をあらかじめ拒否するような確
 信犯的な狂騒にみちた映像とサウンドに圧倒されます。映像はあえぎ、走り、サウンド
 はけたたましくざわめき、戦慄する。石井監督が自らのキャリアと作品行為の軌跡をお
 どろくほど率直にさらけだし、問いただした「総括」であり、新しい「映画への旅」を
 予告するすばらしいマニフェストのようにも思えます。

 【裏ベスト】
  ●黒木和雄監督『紙屋悦子の青春』
     http://www.pal-ep.com/kamietsu/
  ●ブライアン・シンガー監督『スーパーマン リターンズ』
     http://wwws.warnerbros.co.jp/supermanreturns/
  ●ウディ・アレン監督『マッチポイント』
     http://www.matchpoint-movie.com/pc/index.html
  などを試写会で見ました。

  葬送曲のようなトランペット演奏によるラストの音楽、子持ちの女性記者に恋をして
 「二度死ぬ」空飛ぶ超人、ジャズよりもオペラに傾斜するヨーロッパ・コンプレックス
 (?)の知性派の行方は……。


 【封切は終わったけれど…】
  『犬猫』(8ミリ版)。紀伊國屋書店よりDVDで発売されます。
  井口奈己監督の劇場用映画第一作『犬猫』のもとになった同名の自主製作8ミリ版。
 おどろくほど新鮮で魅力的です。

★渡部実さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●太陽
     http://taiyo-movie.com/

  ロシアのソクーロフ監督が終戦前後の時期の昭和天皇をドラマとして堂々と描いたこ
 とに驚きました。演出、撮影、そして主演のイッセー尾形の演技など目を見張るものが
 ありました。ドラマの部分で天皇が海洋生物学者としての側面を見せるところがありま
 す。天皇は戦後まで海洋生物学者としての興味を失わなかったと言われています。
 1975年開催の沖縄海洋博覧会で海洋生物の映像記録「マリン・フラワーズ―腔腸動物
 の生活圏(3面マルチ版)」(1975年/製作・構成・編集・岡田桑三。企画・松下電
 器/東京シネマ新社・大広作品)が上映されました。その時、この作品を見た昭和天皇
 は「すぐにもう一度、見たいと希望を述べ、再度見たという」(『岡田桑三 映像の世
 紀 グラフィズム・プロパガンダ・科学映画』川崎賢子、原田健一・共著。平凡社・刊
 より)との記述がありました。ソクーロフ監督の興味は天皇の人間ドラマにとどまらず、
 歴史、生命誌、芸術と科学の関係などにも向けられているようで、そこが面白いもので
 した。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣編集後記┫

◆紙の雑誌、つまり普通の雑誌に「3号雑誌」という言葉がありますよね。売れない、入金
 まで(問屋から入るのは半年後)資金が続かない、といったもろもろの理由で休刊。休刊
 というのは廃刊とほぼ同義語。その目安が3号。その点、メールマガジンは、莫大な印刷
 費や紙代がかからないから「3号雑誌」という言葉は当てはまらないわけですが、それで
 も第四号をお届けできたことは感激に思う次第です。とはいうもののメルマガでも制作費
 ゼロなんてことはあり得ないわけで、現在は1号出すたびに赤字が続いております。さあ
 てどこまで続けられますやら? とりあえず情熱の続く限りでしょうか(笑)? ソクーロ
 フの『太陽』や黒木監督の遺作『紙屋悦子の青春』は予想出来ました。『マッチポイント』
 もウディ・アレンの久々の評価が嬉しいというところ。しかしノーチェックだった『スー
 パーマン リターンズ』と、そして『ユナイテッド93』のトップ獲得たるや…!! 情熱は
 今のところ続行中であります。   (れがあるF)

◆猛暑から一転、梅雨が続き夜など寒いぐらいです。れがある編集部はクーラーがないの
 で、助かるといえば助かりますが…。読者のみなさまが豪雨の被害にあわれておられな
 いことを祈ります。ところで今号より、メール受付け開始します。ご意見、ご感想など
 お待ちしております。どうぞよろしく♪   (れがあるU)

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★ベスト、裏ベスト合わせてイチバン人気の作品は『ユナイテッド93』でした★
★次号は話題作・注目作が満載! 9月封切の映画が続々登場します。お楽しみに!★
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■発行日:2006年7月30日
■発行者:れがある http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest
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