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2006年10月号

〓〓〓〓〓〓試写室だより 封切はこれからだ!〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓第六号〓〓〓

     映画を見るプロが選ぶベスト映画&裏ベスト映画
     ∴・∴・∴2006年9月30日~10月封切り篇∴・∴・∴

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【ベスト】=これぞまぎれもなく、映画を見るプロが選んだ10月の最高作。心して見よ。
【裏ベスト】=出来、不出来は二の次、偏愛あり、ヒイキの引き倒しあり、極私的なケッサク選!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

※今月のベスト1位 ◇カポーティ◇
※今月の裏ベスト1位 ◇トンマッコルへようこそ◇涙そうそう◇ブラック・ダリア◇
※今月の総合ベスト1位 ◇トンマッコルへようこそ◇

※その他の人気作
◆サンキュー・スモーキング◆明日へのチケット◆ホステル◆キャッチボール屋◆
◆エコール◆16ブロック◆スネーク・フライト◆ワールド・トレード・センター◆
◆サラバンド◆チャーミング・ガール◆レディ・イン・ザ・ウォーター 他

◆◇◆2位~5位の作品と執筆者プロフィール、近況、著作はHPに掲載◆◇◆
    http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest

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★秋本鉄次さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●16ブロック
     http://www.sonypictures.jp/movies/16blocks/index.html
  ●サンクチュアリ
     http://www.sanctuary-movie.com/sanctuary/
  ●ブラック・ダリア
     http://www.black-dahlia.jp/
  ●スケバン刑事(デカ)コードネーム=麻宮サキ ※コメントは前号参照
     http://www.sukeban.jp/

  「16ブロック」はオヤジ心が張り裂けそうになるド腐れ刑事もの。イーストウッド
 の「ガントレット」の中年版というか、「ダイ・ハード」の成れの果ての番外編という
 べきか。このブルース・ウィリスはイイね。殺人現場の部屋で留守番しながら物色し、
 安ウイスキーを見つけてそれを拝借してガブ飲みするようないじましくも情けない冒頭
 がすべてを語っている。落ちるところまで落ちた野郎の最後のプライド、意気地に、ボ
 クは安ウイスキーをかっくらって乾杯するのだ。コノヤロウ。「サンクチュアリ」は黒
 沢あすかのド腐れオンナぶりがすごい。「嫌われ松子の一生」のマブダチぶりも忘れら
 れないが、こちらはかの秋田の“畠山鈴香”を連想するような“毒婦”ぶりだもの。「ブ
 ラック・ダリア」も40年代後半の退廃ムードに酔いつつ、堪能した。ここに登場する
 男女も汚泥の中でのたうちまわっている。僕はそういう映画が好きらしい。

 【裏ベスト】
  ●幸福(しあわせ)のスイッチ
     http://www.shiawase-switch.com/
  ●トンマッコルへようこそ
     http://www.youkoso-movie.jp/
  ●キャッチボール屋
     http://bitte942.rsjp.net/ball/

  表と対照的に“裏”は心温まるちょっとイイ話の3本。こっちを“裏”にするあたり
 ボクも歪んでるね。「幸福のスイッチ」はジュリー&樹里のコテコテ関西風父娘ケンカ
 漫才ぶりが面白かった。ジュリーがただのオッサン化していたのが感無量。そこがまた
 イイ味。地方の電気屋さんはホント大変です、と同じ個人事業主として実感しますね。
 「キャッチボール屋」も商売として成りたつのやら、という点では同じかも。東京国際
 映画祭で見てもう1年になるが、あのホンワカなキャッチボールぶりが懐かしい。主演
 の大森南朋クンも軟投型の演技で作品の空気を伝えている。「トンマッコルへようこ
 そ」はテーマをちょっと大上段に構え過ぎ、という気もするし、前半はなんかつまらな
 い終わり方するんじゃないか、という予感もあったが、後半の兵士たちの義勇的行為に
 は納得した。韓国映画はますます玉石混淆の度が強くなってきている。選球眼を良くし
 て見ないとね。

 【封切りは終わったけれど…】
  とっくに見ていたのに9月封切り作ということを失念してて書き損ねた「フラガー
 ル」はもちろん衆目の一致するところの傑作です。正攻法ド真ん中の演出ながら、見事
 なストライクで分かっちゃいるけど泣けちゃうってヤツ。こういう映画でキチンと感動
 させるのが一番難しい仕事かも知れない。個人的にはごひいき松雪泰子の“何サマ”オー
 ラと、ツンとしたノーズ美に酔いしれた。あのキャラがあればこそこの映画の成功があ
 る。風呂好きとしては“ハワイアンズ”に行きたくなりますなあ。9月30日封切りの「レ
 ディ・イン・ザ・ウォーター」はラース・フォン・トリアーと並んでボクの“洋画2大
 天敵”M・ナイト・シャマランの相変わらずのハッタリ映画でウンザリ。今回も、「コ
 クーン」の出来損ないみたいな作品で退屈だった。あ~あ、見なきゃよかった。

★安藤智恵子さん(ライター)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●なし
  『不都合な真実』を、と思っていたが、封切日が延びたので今回はパス。

 【裏ベスト】
  ●トンマッコルへようこそ
     http://www.youkoso-movie.jp/
  ●セレブの種(先月に引き続き)※9月封切
     http://www.celeb-tane.com/
  ●マーダーボール(先月に引き続き)
     http://www.klockworx.com/murderball/

  脚本が“韓国の三谷幸喜”と呼ばれているとかいないとか。演技過剰と間延びした感じ
 は気になるが着眼点はいいと思う。役者の顔つきが皆イイ。ファンタジック・コメディ
 でありながら、戦争映画としてもきちんと見せてくれた。

 【封切りは終わったけれど…】
  ボブ・マーリーの息子が主演した『ONE LOVE』のジャマイカ・ロケは「ずるい」
 と言いたくなるほど画が美しい。何でもない道端に男女がいるだけで絵になるなんて。
 レゲエ・ファン、ゴスペル・ファンも必見! 『太陽』は、すっとぼけたコメディで面
 白かった。イッセー尾形と桃井かおりの、相づちだけで成り立っているような不思議な
 会話は、まるで自分の祖父母の会話にそっくりでした。

★稲垣都々世さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●サンキュー・スモーキング
     http://www.foxjapan.com/movies/thankyouforsmoking/
  ●カポーティ
     http://www.sonypictures.jp/movies/capote/index.html
 
  「サンキュー・スモーキング」には大笑いさせてもらった。すばらしいコメディのセ
 ンス。この監督はお父さんよりずっと才能がある。(もうタバコはやめたが)税金の高
 さは異常だと思うし、ヒステリックな嫌煙運動は気色悪いし、分別のある大人が他人に
 迷惑をかけずに吸うのを非難することはない。しかし、もしドクロ・マークのついたタ
 バコが発売されたら、買ってしまうな。最高にブラックで秀逸な販売戦略だと思う。

 【裏ベスト】
  ●サラバンド(先月に引き続き)
     http://www.saraband-movie.com
  ●明日へのチケット
     http://www.cqn.co.jp/ticket/
  ●ダニエラという女 ※12月封切
     ※9/26現在公式サイトなし

  「サラバンド」は先回も書いたが、意地悪なベルイマンじいさんは、心から好きにな
 れるタイプではない。「明日へのチケット」はストーリーが少し甘いとはいえ、ケン・
 ローチのやさしいまなざしはいつだって大好きだ。3作オムニバスでなくローチの作品
 1本だけなら、素直に【ベスト】に入れただろう。「ダニエラという女」に限らず、お
 バカな男が好きなブリエの映画は、好きとはいえなくとも惹かれてしまうことにようや
 く気づいた。

★宇田川幸洋さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●百年恋歌
     http://www.prenomh.com/contents/coming/three_times/index.html
 
  三色パンみたいにホウ・シャオシエン(侯孝賢)の三つの味がたのしめる。「煙が目
 にしみる」「星は何でも知っている」がながれる'60年代は、お手のものの抒情に酔い、
 サイレント仕上げの'10年代の『フラワーズ・オブ・シャンハイ』的な美しさに陶酔、
 最後の現代篇も、現代をえがくとつかみどころがなくなるこの人が、何かをつかみかけ
 ていることを感じさせる(2度目に見て、そう感じた)。

 【裏ベスト】
  ●エコール
     http://ecole-movie.jp/

  とざされた環境の寄宿舎に幼女・少女ばかりがくらしている。川で水浴びしたり、バ
 レエのレッスンをうけたり、謎めいた日々をおくっている。ずいぶん思いきった内容の
 耽美派映画だ。女性監督の視線は幼/少女のひざの裏がわにむけられている。
  原作ヴェデキントって、むかし古本屋の安売り本のなかによくあった戦前の世界文学
 全集の背表紙でよく見かけた名前だ。イバニエズとかラーゲルレーヴとか…。原作本が
 出るらしいので読んでみたい。

 【封切は終ったけれど…】
  劇場公開ではないけれど、9月のアジアフォーカス・福岡映画祭で上映のタイ映画
 『親友』は、さわやかな青春映画。英語題『Dear Dakanda』のダーカンダーという名
 のヒロイン役の女優がとてもかわいい。カーリー・サイモンみたいに口が大きくて(あ
 んなにくちびるが厚くないけど)目も大きく、ハツラツとしている。まだ名前をおぼえ
 ていないのだが、これ、どこかで買わないかな。
  またも「前回のミス」をひとつ。『靴に恋する人魚』の監督ロビン・リーの漢字の名
 前を「李藝嬋」とやってしまったが、「李芸嬋」が正しい。英文表記を見たら「Robin
 Lee Yun-Chan」とあったので、「芸」が「藝」の日本式略字(当用漢字になってい
 る)ではなくて、もともとの「芸」という字であることがわかった。日本のよみかたで
 は「げい」でなく「うん」とよむほう。配給会社を信じなくて、わるかった。

★内海陽子さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●トンマッコルへようこそ
     http://www.youkoso-movie.jp/
  ●幸福のスイッチ
     http://www.shiawase-switch.com/
  ●16ブロック
     http://www.sonypictures.jp/movies/16blocks/index.html
  ●上海の伯爵夫人
     http://www.wisepolicy.com/thewhitecountess/
 
  「トンマッコルへようこそ」の終盤の勇壮な戦いに深く感情移入。「南北連合軍です
 よね!」と叫ぶ若い兵士の笑顔も完璧。メルヘン・タッチでなければ描けない思いがに
 じむ。家族間の重大な問題をひょうきんに描く「幸福(しあわせ)のスイッチ」。上野
 樹里が本物の活力を感じさせる。爺くさいブルース・ウィリスが久々に魅せる「16ブ
 ロック」。粋なことこのうえない締めくくりに乾杯! 戦火による非劇がすべて男女の
 恋の背景と化す「上海の伯爵夫人」。二人の豊かなためらいは極上の酒。

 【裏ベスト】
  ●地下鉄(メトロ)に乗って
     http://www.metro-movie.jp/

  メトロのトンネル内を疾走する感覚で描かれる主人公のタイムスリップそのものが快
 感を呼ぶ。レトロが似合う堤真一にも好感が持てる。それだけに、彼の恋人の心情の描
 き込み不足に不満がつのる。いきなり女の情念のクライマックスを見せられても……。

 【封切は中止になったけれど…】
  『アメリカン・ドリームズ』。ヒュー・グラントの上機嫌な不機嫌演技が最高の風刺
 快作。ベテランが演じる米国大統領夫妻も補佐官も見ごたえ満点。なぜ封切が中止に
 なったかは、11月発売のDVDでご覧になればわかります。

★馬場英美さん(ライター&エディター)―――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●カポーティ
     http://www.sonypictures.jp/movies/capote/index.html.
  ●サンキュー・スモーキング
     http://www.foxjapan.com/movies/thankyouforsmoking/
  ●ストロベリーショートケークス ※9月封切
     http://www.strawberryshortcakes.net/
 
  「カポーティ」はフィリップ・シーモア・ホフマンの巧さにただただ脱帽。「M:i:
 III」もよかったし、やっぱり彼には“ドS”な役が似合う。「サンキュー・スモーキン
 グ」は喫煙者にはうれしい1本。最後にツケが回ってくるとわかっていても、主人公
 ニック(煙草業界の敏腕PRマン)が良識ぶった人たちをやり込めていく姿には胸がすく
 思いがした。彼の詭弁と精神的な図々しさはアッパレです。「ストロベリーショート」
 は原作も大好きな作品。どの女性に感情移入するかで、その人の人間性や生き方が出る
 と思うけど、それぞれの痛みがリアルに伝わってきて、これまでにないほどの共感を覚
 えた。

 【裏ベスト】
  ●セレブの種 ※9月封切
     http://www.celeb-tane.com/
  ●レディ・イン・ザ・ウォーター
     http://wwws.warnerbros.co.jp/ladyinthewater/
  ●涙(なだ)そうそう
     http://www.nada-so.jp/

  「セレブの種」は“種付け男”の悲哀にさりげなくアメリカ社会の風刺を盛り込み、喜
 劇と社会派映画の2つの味わいが楽しめる。「レディ・イン・ザ・ウォーター」は映画
 的にどうこうではなく、シャマラン節をここまで貫けるのは、ある意味、才能だと思
 う。今回はちょっとでしゃばりすぎだけど。「涙そうそう」は妻夫木聡と長澤まさみの
 さわやかな笑顔に一票。あんなお兄ちゃんが欲しい!

★浦崎浩實さん(激評家/映画評・劇評)―――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●オイ ビジクレッタ
     http://www.espace-sarou.co.jp/oi/
  ●明日へのチケット
     http://www.cqn.co.jp/ticket/
  ●キャッチボール屋
     http://bitte942.rsjp.net/ball/

  今月、何が何でもこの3作を見てもらおうじゃないですか! 前者2本は長距離の旅
 で、「キャッチボール屋」もいうなれば公園内と、ひいては自分の内部の“超”距離を旅
 する物語。車窓の風景は楽しめないが、車中の、路上の、園内の人間たちから世界の広
 がりが垣間見え、鑑賞後、年内のあなたの幸福感がこの3作で持続されることを(弱小
 の批評家ながら)メンツにかけ保証申し上げます。「サラバンド」「セレブの種」もお
 見逃しなく。

 【裏ベスト】
  ●ヘイヴン~堕ちた楽園
     http://www.haven.jp/
  ●涙そうそう
     http://www.nada-so.jp/

  この2本は“島”で共通し、後者には島ゆえの隔世感、孤立感、すなわち楽園感は乏し
 いものの、イメージで補っていくと、前者のゆるゆるの展開さえも俄然、光輝を帯びて
 くる。夏期休暇まだの方、スクリーンなら間に合います! 評判作「チャーミング・
 ガール」はこれから見ます。

 【封切りは終わったけれど…】
  OV作品の行定勲・脚本監督「ユビサキから世界へ」(9月3日リリース)は今年の
 秀作に数えていい。授業中の女子高生の脳髄に、ランボーの詩句が天啓のごとく降りか
 かる、「見えた、何が? 永遠が!」。彼女の指先から鉛筆がころころ転がり、見回せ
 ば教室内の倦んだ顔また顔。詩句はこのあと「海と溶け合う太陽が!」と壮大な展開に
 なるはずだが、本作は逆に、狭い教室に対抗する“永遠”をユーモラスに(批評的に)転
 がしていくのだ。

★江戸木純さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1位)ホステル
     http://www.hostelfilm.com/index.html
  ●2位)スネーク・フライト
     http://www.movie-eye.com/snake/
  ●3位)サラバンド
     http://www.saraband-movie.com
  ●4位)サンキュー・スモーキング
     http://www.foxjapan.com/movies/thankyouforsmoking/
  ●5位)トンマッコルへようこそ
     http://www.youkoso-movie.jp/
  ●6位)幸福のスイッチ
     http://www.shiawase-switch.com/
  ●カポーティ ※コメントは前号参照
     http://www.sonypictures.jp/movies/capote/index.html

  今月は最近にない大豊作。さらに映画祭までいろいろあるから映画ファンは忙しい。
 『ホステル』は、残虐さばかりが話題となっているが実はアメリカ製ホラー映画の伝統
 を踏まえた見事な脚本と演出で過剰な残虐さだけを売りにした諸作とは一線を画す大傑
 作。『スネーク・フライト』は、演出は雑なのだが、その大胆な設定と強引な展開で徹
 底的に楽しませる快作。蛇嫌いには耐えられない恐怖シーンの連続だが、蛇好きには映
 画史上屈指のご馳走。ベルイマン85歳のときの新作『サラバンド』は80余年の年輪を
 経て、衰えるどころかさらに鋭利に描かれる人間描写が圧倒的な神々しいまでの傑作。
 『サンキュー・スモーキング』は物事の本質や、語り手の本心とは無縁の言葉で殴りあ
 うアメリカ式討論の醜悪なる美学を、毒入の爆笑にまで昇華させた快作。『トンマッコ
 ル~』は南北分断を軽妙に風刺した痛快ファンタジー。最近韓国映画は食傷気味なのだ
 が、芸達者な役者たちの演技と舞台劇を見事に映像化したセンスには素直に脱帽せざる
 をえない。『幸福のスイッチ』は、女性監督らしい繊細さによる丁寧な作りに好感が持
 てる。過剰量産気味の上野樹里主演作では断トツの出来。父親役の沢田研二もいい味を
 出している。

 【裏ベスト】
  ●1位)ブラック・ダリア
     http://www.black-dahlia.jp/
  ●2位)ザ・センチネル 陰謀の星条旗
     http://movies.foxjapan.com/sentinel/index.html
  ●3位)ドラゴン・スクワッド
     http://www.cinemart.co.jp/d-squad/
  ●レディ・イン・ザ・ウォーター ※コメントは前号参照
     http://wwws.warnerbros.co.jp/ladyinthewater/
  ●地獄の変異 ※コメントは前号参照
     http://www.jigoku-movie.jp/

  『ブラック・ダリア』はデ・パルマの映像狂気が久々にいい意味で爆発した怪作。登
 場人物全員が狂っているのが素晴らしい。ベストにいれてもいいがやっぱり一般受けは
 難しいだろう。『ザ・センチネル~』は『24』あたりの緊張感に比べるとだいぶ緩い
 が、昔懐かしいハリウッド製アクション・サスペンスの匂いが嬉しい。『ドラゴン・ス
 クワッド』は凝り過ぎの映像と多すぎる登場人物でまったくまとまりのない作品だが、
 マギーQの女スナイパーぶりと、やはり最後に魅せるサモ・ハンの風格に一票。

 【封切りは終わったけれど…】
  『フラガール』。日本映画離れした完成度と骨のある内容の噂に違わぬ大傑作でし
 た。蒼井優の演技力と存在感は他の同世代の若手女優たちを大きく引き離している。
  『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ<完全版>』。久々にDVDで見
 て、あまりの完成度に放心状態に陥った。公開当時は無残に切り刻まれていたものの、
 これが遺作ならレオーネも本望でしょう。

★大森さわこさん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●カポーティ(先月に引き続き)
     http://www.sonypictures.jp/movies/capote/index.html
  ●レディ・イン・ザ・ウォーター
     http://wwws.warnerbros.co.jp/ladyinthewater/

  「カポーティ」は先月も入れたんですが、集計結果に影響が出るといけないので、今
 月も入れておきます(リストにあったので)。
  後者はシャマランの最新作。彼のベストとは思いませんが、主演のポール・ジアマッ
 ティはうまい男優ですね(彼の「サイドウェイ」は傑作)。シャマランは、いつも、地
 味な演技派をうまく使うので、「えー!」と思える話も、意外に現実的に感じられる。
 今回の映画も含め、ずうっと<喪失と再生>にこだわっている人ですね。
  ベストに入れるほどでもなく、裏に入れるいかがわしさも足りないが、ちょい気に
 なった小品もあり。上野樹里と沢田研二主演の「幸福のスイッチ」は地方の電気屋一家
 を感じのいいユーモアで見せ、意外に“拾い物”。それと、ずうっと気になる男優のひと
 り、大森南朋の初主演作「キャッチボール屋」は、そのボーとした役どころに愛すべき
 味があった。
  ジャ・ジャンクー監督の新作「三峡好人」がヴェネチア映画祭で金獅子賞授賞と聞
 き、うれしいです。昨年の「世界」も良い映画で、個人的にはベストテンの1本(で
 も、興行はジミでしたね……)。この最新作、日本でも話題になるといいですね。
  ますむらひろしの「アタゴオル物語」、かつて愛読していました。映画版(「アタゴ
 オルは猫の森」)もぜひ見てみたい。

★加藤久徳さん(映画ライター)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●エコール
     http://ecole-movie.jp/
  ●カポーティ
     http://www.sonypictures.jp/movies/capote/index.html
  ●旅の贈りもの 0:00発
     http://www.tabi-000.jp/
  ●明日へのチケット
     http://www.cqn.co.jp/ticket/
  ●サラバンド ※コメントは前号参照
     http://www.saraband-movie.com
 
  『カポーティ』は今年のベスト10にたぶん入る佳編であり、話題作。映画だけを見て
 も面白いのだが、編中に登場するカポーティの『冷血』の原作を読んでおくのもいい。
 もう一つ、もし(ビデオやDVDで)映画化された『冷血』(67)を先に見ておくのが
 可能なら完璧。それがすんだら次ぎに、例の韓国製怪獣映画『グエムル』を見られた
 ら、もう言うことはない。なぜか!
  先月、このアンケート欄の同人、増當氏がふれているけど、『グエムル』のオープン
 グに登場するアメリカ俳優スコット・ウィルソンは、映画『冷血』で、犯人ディック・
 ヒコックを演じて売り出した人物である。彼は東映映画『プライド』で、連合国側検察
 官を力演した過去もあり、人を窮地に追い込む悪魔的な役柄が似合う。『グエムル』で
 見せる残忍な笑顔は、その後に続く恐怖の序曲として、これ以上ない不気味なものだっ
 た。映画『冷血』が間にあわない人は、『グエムル』の出だし5分だけ見て『カポー
 ティ』を見るべし(ホント)。もう『グエムル』を見てしまった人は、気持ちに任せます。

 【裏ベスト】
  ●1位)キャッチボール屋
     http://bitte942.rsjp.net/ball/
  ●2位)13の月
     http://cinemaparadise.co.jp/jusannotsuki/
  ●3位)7セカンズ
     http://blog.excite.co.jp/wesley-snipes/

★河原晶子さん(映画・音楽評論家)―――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●カポーティ
     http://www.sonypictures.jp/movies/capote/index.html
  ●明日へのチケット
     http://www.cqn.co.jp/ticket/
  ●サラバンド(先月に引き続き)
     http://www.saraband-movie.com
  ●薬指の標本 ※9月23日封切
     http://www.kusuriyubi-movie.com/
 
  「カポーティ」は<ある種>の作家と犯罪者との底辺でつながるアウトサイダーの孤
 独を描いたユニークな作品です。
  「明日へのチケット」、エルマンノ・オルミ、キアロスタミ、ケン・ローチという3
 人の巨匠が語る“ヨーロッパ連合”考察。オルミ篇のエレガンスが好きです。

 【裏ベスト】
  ●クリムト
     http://www.klimt-movie.com/
  ●エコール
     http://ecole-movie.jp/
  ●悪魔とダニエル・ジョンストン
     http://www.akuma-daniel.com/

  「クリムト」は画家クリムトの映画ではなくて、ラウル・ルイス監督自身の妄想の映
 像化です。「見出された時」では、彼とプルーストの相性はよかったのですが……。
  「エコール」はギャスパー・ノエの伴侶ルシール・アザリロヴィックの、女性が少女
 から女に脱皮するまでの妄想の物語。原作がヴェデキントで、ダリオ・アルジェントの
 「サスペリア」が同じ原作の映画化と知ってビックリでした。
  「悪魔とダニエル・ジョンストン」、天衣無縫な無垢さが痛々しいまでに愛らしい
 ミュージシャンのドキュメントです。

★黒田邦雄さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●上海の伯爵夫人
     http://www.wisepolicy.com/thewhitecountess/

  マーチャントの急死によって、マーチャント・アイヴォリーのコラボレーションが幕
 を閉じた。その最後の作品ということで、「上海の伯爵夫人」は私にとって鎮魂歌以外
 の何ものでもない。本当に長い間、美しい映画を楽しませてもらいました。マーチャン
 トを失ったアイヴォリーに、映画を撮る意欲は残っているのだろうか。とりあえず、今
 月のベストに選んで感謝の気持を表します。

 【裏ベスト】
  ●16ブロック
     http://www.sonypictures.jp/movies/16blocks/index.html

  「上海の伯爵夫人」がなかったらベストでした。ブルース・ウィリスがこんなに老け
 ちゃって…と最初は唖然としたが、話が佳境に入ってくるとアレ不思議、どんどんいつ
 もの生気をみなぎらせて…。これはメイクの勝利なのか演技の勝利なのか、ともかく恐
 れ入りました。ウィリスがここまで渋くなるとは思わなかったが、シンプル・タフガイ
 からの脱皮は見事に成功したようだ。

 【封切りは終わったけれど…】
  DVD「小説吉田学校」。1983年度公開の森谷司郎監督作品。公開時に観た時より
 ずっと面白かった。というのも、小泉総理がやってのけた例の反対派追い出しを、吉田
 茂がとっくにやっていたことがわかるからである。歴史に残る2人の総理が、同じ手を
 使って政権固めをやっていた! 余り高い評価を得られなかった作品だが、吉田茂を演
 じる森繁久弥の名演技は必見だし、脚本も秀逸。

★佐々木淳さん(エディター&ライター)――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●涙そうそう
     http://www.nada-so.jp/
  ●ブラック・ダリア
     http://www.black-dahlia.jp/

  あだちマンガの独特な“ニュアンスを伝えて寸止めする”世界を映像に置き換えること
 に腐心した『ラフ』もかなり健闘していたと思いつつも、あの演出は長澤まさみには全
 然合わないと思ったクチとしては、ちょっとグズグズした口調と長い手足ののびのびし
 た仕草のギャップが醸し出す“まさみイズム”を100%フィルムに焼き付けた!と喝采を
 送りたい『涙そうそう』。ことに長澤が劇中で唯一にーにー(兄)を怒るシーンが素晴
 しく、土井監督というのは女優の新たな表情を引き出すのが上手いなあと(前作に続
 き)感心。もっとも肝心のストーリーには不満もあるけれども。
  『殺しのドレス』以降の流麗な(でも、かなりいかがわしい)スタイリッシュさをか
 なぐり捨て、持てるヴィジュアル・センスの全てをノワール世界の創出にささげたかの
 ようなデ・パルマ。が、そう油断させておいて……見終わったあとに感じるのは、初期
 作品のような泥臭く、かつ純度の高いデ・パルマ節。ひたすら酔った。なぜかバーナー
 ド・ハーマン調のマーク・アイシャムの音楽、久々のコンビ復活、撮影ヴィルモス・ジ
 グモンドの力も大きいはず。

 【封切りは終わったけれど…】
  蒼井優の魅力というのが、これまではピンとこなかったのですが、『フラガール』で
 とうとうKOされてしまいました! 中盤の相次ぐ苦境をグッと歯をくいしばって耐え
 つつ、クライマックスの舞台で弾ける「踊る菩薩」のような表情のなんと素晴しいこと! 

★塩田時敏さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●エコール
     http://ecole-movie.jp/
  ●チャーミング・ガール
     http://www.charming-girl.jp/
  ●虹の女神
     http://rainbowsong.jp/start.html
  ●ホステル
     http://www.hostelfilm.com/index.html

  秋本鉄次兄ィ同様、少女趣味やロリコン趣味はさらさら無いが、それらとはまったく
 無縁に「エコール」の美と恐怖は筆舌に尽しがたい。元ネタが「サスペリア」と同じ、
 というのも驚きだが、演出のサジ加減ひとつでこうも変ってしまうのが映画のダイゴ味
 だ。これを見て、ギャスパー・ノエが泣いた、というエピソードも捨て難い。二度観た
 偏愛の「ホステル」は“裏”かもしれないが、皆川ちかさんが表にしようよ、と言うので
 表にします。

 【裏ベスト】
  ●トンマッコルへようこそ
     http://www.youkoso-movie.jp/

  「トンマッコルへようこそ」は、まさにスタジオ・ジブリ実写版の世界。特に巨大イ
 ノシシ退治場面など圧観。でも、そもそもジブリの世界観てぇ奴が僕はニガテで、宮崎
 アニメも正直どこがいいのかサッパリ分らん。「トンマッコル」は実写なので、その分
 は楽しめた。作品の力量も認められるので、本来“表”かもしれないが、敢えて裏に。
 「ダニエラという女」と試写の無い「デビルズ・リジェクト」を未見だが、観てたらラ
 ンク・イン当確!?

★品田雄吉さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●カポーティ
     http://www.sonypictures.jp/movies/capote/index.html
  ●サンキュー・スモーキング
     http://www.foxjapan.com/movies/thankyouforsmoking/
  ●ワールド・トレード・センター
     http://www.wtc-movie.jp/top.html
  ●サラバンド ※コメントは前号参照
     http://www.saraband-movie.com

  「カポーティ」はフィリップ・シーモア・ホフマンの演技がすごい。「サンキュー・
 スモーキング」はアメリカ的な皮肉が面白い。「ワールド・トレード・センター」はオ
 リヴァー・ストーンらしくない(?)感動作。ニコラス・ケイジが年を取ったのに驚いた。

 【裏ベスト】
  ●16ブロック
     http://www.sonypictures.jp/movies/16blocks/index.html
  ●薬指の標本 ※9月23日封切
     http://www.kusuriyubi-movie.com/
  ●ブラック・ダリア
     http://www.black-dahlia.jp/

  「16ブロック」はシンプルな物語構成が面白い。ケーキ作りの話がちょっとくどいけ
 れども。「薬指の標本」は主演の女優のスラヴ的な魅力がなかなかのものでした。風景
 もよかったです。「ブラック・ダリア」は昔、原作を読んで、マック・セネットの〈ハ
 リウッドランド〉という宅地売り出しの話を面白いと思った。宅地売出しは失敗。さら
 にHOLLYWOODLANDの最後の〈D〉に紐を掛けて、首を吊って死んだ人が出、また
 HOLLYWOODLANDはアルファベットの文字が13で不吉だというのでLANDの部分を
 とって、現在お馴染みの〈HOLLYWOOD〉が残った――というのだ。原作にくらべて、
 ブライアン・デパルマの演出はシャープな苦さが不足していると感じました。

 【封切りは終わったけれど…】
  「フラガール」を見て、気持ちよく感動しました。展開も人物描写もすべて型どおりで
 すが、その〈型どおり〉さが、かえってドラマを力強くしていると思いました。それに
 蒼井優のダンスがいい。彼女は「花とアリス」のラストで見せたバレエも素晴らしかっ
 た。ひとつ疑問を感じたので、書いておきます。それは、椰子の木が枯れかかっている
 というので、石油ストーブを集めるエピソードです。なぜ、ただで使える石炭を燃やそ
 うとしないでしょうか? 灯油を買うにはお金が必要ですが、石炭はただで調達できる
 はずなのに。この映画のプレス資料の「ストーリー」欄には、「炭鉱のまちの彼らが
 使っているのは石炭ではなく、石油ストーブ、そこにも抗えない時代の波は明白に表れ
 ているのだ」と書いてありましたが、映画の中ではそのように理解させる描写はありま
 せんでした。炭鉱の人たちが、なぜ自分たちが掘り出している石炭を使おうとせず、お
 金のかかる灯油を使って、自らの将来をいっそう暗いものにしてしまうのかについて、
 作品の中で何の指摘もなかったのは残念です。私のように感じたものが少数派であれば
 いいと思いますが。石油ストーブを集める富司純子のメリハリの利いた演技は立派でした。

★ジャンクハンター吉田さん(編集ライター)―――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1位)ホステル
     http://www.hostelfilm.com/index.html
  ●2位)オトシモノ
     http://www.otoshimono.jp/

  1位は現在続編を鋭意撮影中のイーライ・ロス監督の長編第二作目。前作『キャビ
 ン・フィーバー』も大傑作だったが『ホステル』は人体部位欠損の痛肌肉描写が満載で
 観ているだけで血沸き肉踊る。渡航先において見知らぬ女性とのセックス遊戯に黄色信
 号を灯してくれたホラー映画である。2位は沢尻にばかり注目が集まるが、映画人とし
 ては古澤健監督にスポットを当てたい。クライマックスのゾンビケイブからの脱出は最
 高の名シーン!

 【裏ベスト】
  ●1位)地獄の変異
     http://www.jigoku-movie.jp/
  ●2位)バタリアン5
     http://www.batarian5.jp/

  1位は劇場公開されるタイミングがモンスター映画の温度計が上昇時期というのも良
 し。さらに劇場予告編が80年代初頭に見られた川口浩探検隊のノリな作りに大ウケ!
 地下の洞窟にミュータントがいたっていうヒネリもない話なんだけど、予告では大袈裟
 なのがこれまたイイ! ここ10年ほどでベストワンの予告編。2位はパート4からの
 直接的続編なので観てないと苦しいかも。完成度高いパート1と3に近づけなかったの
 は残念で口惜しい。

 【封切りは終わったけれど】
  『LOFT ロフト』。劇場初日にテアトル新宿へ足を運んだのだが、黒沢清監督の作
 品を初めて触れる人たちが多かった。というのも、「この映画って良くわかんない」っ
 てな会話をしながら劇場をあとにするカップルが大変目立っていた……。しかし、映画
 というのは説明的にしては鑑賞後「面白かったね」で終わってしまう。黒沢監督のよう
 に常に観る側を考えさせる挑戦的な作りは、正しい方法だと思う。立て続けに2回観た
 くなった作品。

★高橋諭治さん(映画ライター)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●チャーミング・ガール
     http://www.charming-girl.jp/
  ●ホステル
     http://www.hostelfilm.com/index.html
  ●明日へのチケット
     http://www.cqn.co.jp/ticket/
  ●サンキュー・スモーキング
     http://www.foxjapan.com/movies/thankyouforsmoking/
  ●カポーティ ※コメントは前号参照
     http://www.sonypictures.jp/movies/capote/index.html
  ●悪魔とダニエル・ジョンストン ※コメントは前号参照
     http://www.akuma-daniel.com/

  『チャーミング・ガール』は孤独な女性の日常を繊細に描いた韓国映画だが、ヒロイ
 ンが哀れみを誘う悲しげな存在として描かれていないところがいい。まったく予想の出
 来ないタイミングで飛び出す恋心の告白など、唐突すぎるヒロインの言動にハラハラさ
 せられた。イーライ・ロス監督の『ホステル』は病的な拷問映画かと思いきや、前作
 『キャビン・フィーバー』と同様、巧みな脚本に裏打ちされたバイオレンスもの。この
 映画や『スネーク・フライト』が一週のみとはいえ興収1位になったりするアメリカっ
 て、やっぱり不思議な国です。

 【裏ベスト】
  ●ブラック・ダリア
     http://www.black-dahlia.jp/
  ●スネーク・フライト
     http://www.movie-eye.com/snake/

  今月の【裏ベスト】はこの2本で決まりでしょう! 『ブラック・ダリア』は撮影が
 ヴィルモス・ジグモンド、美術がダンテ・フェレッティということで堂々たる映像美な
 のだが、明らかに何かが“壊れている”怪作。ヒラリー・スワンクは完全にミスキャスト
 では? あの手この手のおバカな工夫がなされた『スネーク・フライト』には大いに
 笑ったが、ハナから笑いに走っているところがちょっと不満でもある。平然とした顔で
 毒蛇をスタンガンで撃退するサミュエル・L・ジャクソンに注目。

 【封切りは終わったけれど…】
  先月号の〆切後、『フラガール』の最終試写に滑り込み。田舎町のハワイアン奮闘記
 を堪能しました。とってつけたようなエピソードのない見事な脚本は、昨今の日本映画
 界では貴重かも。山本秀夫撮影による鈍い輝きを放つ映像も秀逸。

★高村英次さん(映画ライター)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●スネーク・フライト
     http://www.movie-eye.com/snake/
  ●ワールド・トレード・センター
     http://www.wtc-movie.jp/top.html

  手垢のついたパニック物にまだこんな手があったとは! 上空1万メートルを飛ぶ
 ジェット機内に毒蛇の大群が放たれ、乗客大パニック。加えてに乱気流、パイロット死
 亡で阿鼻叫喚の『スネーク・フライト』はもんどりうつ面白さ。おぞましきニョロニョ
 ロ攻撃に虫唾が走るが、もしも一緒に喜んじゃう自分がいるとしたら、それはこのスリ
 ラーが優れているせい。ただし蛇嫌いは敬遠した方がいいかも。良識派には9.11秘話
 の『ワールド・トレード・センター』をどうぞ。

 【裏ベスト】
  ●天使の卵
     http://www.tentama.jp/

  妹の沢尻エリカと付き合う浪人生の市原隼人が、彼女の姉で女医の小西真奈美に惚れ
 て、カノジョに隠して姉と関係する…。姉妹と青年の三角関係と聞けば映画ファンはト
 リュフォーの『恋のエチュード』を想起するが、映画の前半、室内に満ちるソフトな自
 然光や舞い上がるようなキャメラの動きはまさに初期のヌーヴェルヴァーグの瑞々しさ
 だ。後半、脚本の不備からドラマは萎んでしまうが、冨樫森監督の繊細さ、優しさは◎。

 【封切りは終わったけれど…】
  埋もれた名監督に千葉泰樹がいる。手堅い演出で、東宝娯楽映画(プログラム・ピク
 チュア)を支えたが、この人に『鬼火』という中篇がある。ある男が病気の亭主を持っ
 た薄幸な女に「金を貸すから一晩付き合え」と身体を要求。だが女は来ない。翌日、女
 の家に行った男は女の首吊り死体を見つける、というシンプルな話。しかし自殺を知っ
 て、恐れ入って逃げ去る男(加東大介)の「勘弁してくれ~」という声や顔が真に迫っ
 ているせいか、人間の業の深さが強烈に心に残る。この陰鬱極まるエンディングはホ
 ラー映画よりもずっと怖い。

★滝本誠さん(評論家)―――――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ブラック・ダリア
     http://www.black-dahlia.jp/

  オーディション場面でのパルマの声が堂々としていやらしい。最高ではないか。

 【裏ベスト】
  ●エコール
     http://ecole-movie.jp/

  なんか脳髄を動揺させる少女映画。

★暉峻創三さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●チャーミング・ガール
     http://www.charming-girl.jp/
  ●トンマッコルへようこそ
     http://www.youkoso-movie.jp/

  まったく対照的な作りの韓国映画2本が並んだ。作為を排したアプローチでごく少人
 数の主人公を追う『チャーミング・ガール』に対し、劇的なまでに作為的なアプローチ
 で多人数の主人公たちを追う『トンマッコルへようこそ』。そしてどちらの作品とも、
 それぞれのアプローチの最上の結晶を見せてくれた。

★西脇英夫さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1位)ワールド・トレード・センター
     http://www.wtc-movie.jp/top.html
  ●2位)16ブロック
     http://www.sonypictures.jp/movies/16blocks/index.html
  ●3位)トンマッコルへようこそ
     http://www.youkoso-movie.jp/

  1)は、オリーバー・ストーン作品にしては、あまりにもストレートで、けれん味の
 ないところがやや物足りないが、誠実にていねいに作っているので、文句はない。セン
 ターが破壊される前半のクライマックスの描写が、これみよがしでなく、サッと処理し
 ているのが知的で、好感が持てた。2)は、若き日の黒澤明がやりそうな、限られた時
 間と空間の中での脱出劇の佳作。老いぼれたブルース・ウイリスもいいが、同行する黒
 人ラッパーの演技が抜群。3)は、韓国映画の巾の広さと、人間描写の巧さを見せつけ
 る上質な作品。物語の目のつけどころがいい。観てよかった。

 【裏ベスト】
  ●1位)スネーク・フライト
     http://www.movie-eye.com/snake/
  ●2位)カオス ※晩秋公開
     http://www.chaos-movie.jp/
  ●3位)ホステル
     http://www.hostelfilm.com/index.html

  1)は、「ユナイテッド93」の対極にある、おバカ航空パニック物の怪作。よくぞ
 ここまでしつこく蛇をからませたものだと感心させられる。それにしても、サミュエ
 ル・L・ジャクソンの主演とは驚き。2)は、またもウェズリー・スナイプス出演のお
 手軽サスペンス・アクション。ただし主演は『トランスポーター』のこわもてスター、
 ジェイスン・ステイサム。話も凝っていて、ラストまで先の見えない展開が興味深い。
 3)はクエンティン・タランティーノ製作のスプラッター・ホラー。圧倒的な描写力
 で、残酷極まりないシーンが展開されるが、観後感は意外に爽快。

★野村正昭さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●スネーク・フライト
     http://www.movie-eye.com/snake/

  これ裏ベストにしようかと一瞬悩んだけれど、まあ、いいか。高度3万フィートの上
 空で、時限ロック式の檻から一斉に這い出してきた数千匹の毒蛇が乗客たちに襲いかか
 るという発想がまず秀逸。前作「セルラー」も好調だったデイヴィッド・エリス監督
 が、あの手この手をこれでもかとばかりに繰り出して観客を全く飽きさせない107分
 だった。毒蛇に襲われる順番もエンターテイメントの王道をちゃんと踏まえていてナッ
 トクの快作だ。

 【裏ベスト】
  ●トンマッコルへようこそ
     http://www.youkoso-movie.jp/

  ヒロインが妖精というよりは演技過剰の久本雅美みたいに見えたり、久石譲の音楽
 も、それに輪をかけて過剰だったり、ラストも南北統一“独立愚連隊”がアメリカに一矢
 報いるという構造が見え透いて困ったりと、いろいろと難点が多いのは百も承知で、そ
 れでも何となく憎めないというか、その人懐っこさゆえに裏ベストに推します。これ、
 もう一寸出来が良かったらベストに推すところですが惜しいなあ。

★増當竜也さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●スケバン刑事(デカ)コードネーム=麻宮サキ
     http://www.sukeban.jp/
  ●トンマッコルへようこそ
     http://www.youkoso-movie.jp/

  両作品ともベストというよりは、やや裏ベスト的な意味合いが強いです。『スケバ
 ン』はTVシリーズのファンには嬉しいプログラムピクチュアでした。深作健太も1作
 ずつ上手くなっています。実は小生、あややのファンではなく(彼女のパチンコもぼろ
 負けしたし…)、敵方の女の子の方に眼がいきがちでしたが(石川梨華がヨーヨーを見
 事に使いこなしているのには驚いた)、バトルスーツ姿のあややも健闘。抑えた演技の
 竹内力も実に渋くていいです。『トンマッコル』は前半のファンタジック性が素敵だっ
 たのに、後半リアルな戦争映画に転じてしまったことで、正直白けました。意外とメッ
 セージの強い作品です。大体あんな村実際にあるわけないんだから、徹底的にファンタ
 ジーにすればよかったのに。

 【裏ベスト】
  ●夜のピクニック
     http://www.yorupic.com/
  ●天使の卵
     http://www.tentama.jp/

  裏というよりも、観ていて悔しかった映画を2作。『夜のピクニック』は少年少女た
 ちの躍動感が素晴らしい(特に多部未華子の存在感は圧倒的で、彼女を観るだけで入場
 料の価値はあるでしょう)のに、脚本と演出が余計な作為的ドラマを詰め込むことで、
 そうした長所を阻害しています。ただ夜中にガキどもが歩くだけのお話ということで不
 安だったのでしょうが、もっと少年少女たちを信じるべきでした。『天使の卵』は、初
 めて冨樫森監督作品で裏切られました。とにかくお話がひどすぎる(原作そのものの責
 任?)。ただ演出もこうした現代のメロメロドラマにそぐわず古色蒼然としており、京
 都で撮った意味も伝わらないし、キャストも魅力なし。無念。

 【封切りは終わったけれど…】
  『太陽』ようやく観ました。さすがにすごい! ただ、繊細な音響にも気を配ったこ
 の作品を、地下鉄サラウンド方式(!?)の銀座シネパトスで観たのは大失敗でした。拡
 大公開になるんだったら、もう少し待てばよかった!『劇場版轟轟戦隊ボーケンジャー 
 THE MOVIE 最強のプレシャス』はお子様映画とあなどるなかれ。何も考えずにただ
 ただ気持ちよく楽しめる、ファミリー・エンタメの鑑のような快作でした。DVDが出
 たらぜひご家族で! 一足先に観た正月映画、山田洋次監督の時代劇第三弾『武士の一
 分』と今敏監督のアニメ『パプリカ』、早々にプッシュしておきます。

★まつかわゆまさん(シネマアナリスト)――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●明日へのチケット
     http://www.cqn.co.jp/ticket/
  ●トンマッコルへようこそ
     http://www.youkoso-movie.jp/
  ●レディ・イン・ザ・ウォーター
     http://wwws.warnerbros.co.jp/ladyinthewater/

  「今」と対するという点を、映画から時代を分析する私は評価したい。ヨーロッパ・
 アジア・アメリカ(といっても異邦人だからできるのかもしれないが)が、人の善なる
 心を信ずることが「御伽噺」と呼ばれてしまう「今」に立ち向かう。「御伽噺」と思わ
 れてきた事を一つずつ現実にしてきたのが人間の英知、知恵ではなかったか。そしてそ
 のためにまずしなくてはいけないことは「御伽噺」を「信ずる」ことなのだ。

 【裏ベスト】
  ●サンキュー・スモーキング
     http://www.foxjapan.com/movies/thankyouforsmoking/
  ●セレブの種 ※9月封切
     http://www.celeb-tane.com/
  ●40歳の童貞男 ※10月26日よりDVDリリース
     http://www.eiga.com/official/40DT/
  ● 涙そうそう
     http://www.nada-so.jp/
  ● ナオミ・ワッツ プレイズ エリー・パーカー ※11月封切
     http://www.glassymovie.jp/naomi/
  ●16ブロック
     http://www.sonypictures.jp/movies/16blocks/index.html
  ●カポーティ
     http://www.sonypictures.jp/movies/capote/index.html

  キャサリン・キーナー、素敵です。ナオミ・ワッツ、根性です。シーモア・ホフマ
 ン、よかったね,です。沖縄行きたいなぁ。スパイクがんばれ。職人技の勝利。皮肉な
 ブラックコメディも好きなので。作品と結び付けてみてください。

★皆川ちかさん(ライター)―――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ホステル
     http://www.hostelfilm.com/index.html
  ●ストロベリーショートケイクス ※9月封切
     http://www.strawberryshortcakes.net/

  英語も出来ないのに外国旅行をする日本人女性が、東欧で拷問ビジネスの餌食に! 
 海外童貞の上に日本語すらも危うい私にとっては、怖さ倍増の「ホステル」。まっとう
 な教訓も多く含まれていて、ホラー映画の中でも特にモラルの強い方に入ると思う。素
 晴らしい原作が素晴らしい監督と演者によって、さらに素晴らしい映画になった「スト
 ロベリーショートケイクス」。くさいけれど、敢えて口に出そう「神さまなんていらな
 いよ」。

 【裏ベスト】
  ●スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ
     http://www.sukeban.jp/

  オールバックに鉄面皮のあやや=4代目サキはかわいいなあ。頭突き、噛み付き、金
 蹴りと、アクションは暴力的。太ももにはヨーヨー・ホルスターと、ことごとくポイン
 トを押さえてます。漫画的な深作健太演出は、この手のアナーキーなアクション映画に
 よく合います。

 【封切りは終わったけれど…】
  「ハイテンション」:タイトル通り、全編通してテンションが高いフレンチ・ホ
 ラー。さらに終盤でホラーから捩れたラブ・ストーリーにシフトチェンジして、フィル
 ム・ノワールに血を加えた感じ。外見は冴えないおっさんの殺人者を演じるのは、なん
 と「カノン」のフィリップ・ナオン! ナオン! フランス人のおっさんであなた以上
 に労働の匂いを醸す人はいない! 監督の名はアレクサンドル・アジャ! アジャ!

★みのわあつおさん(ポップ・カルチャー評論家)――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ブラック・ダリア
     http://www.black-dahlia.jp/
  ●マーダーボール
     http://www.klockworx.com/murderball/
  ●サンキュー・スモーキング
     http://www.foxjapan.com/movies/thankyouforsmoking/

  『ブラック・ダリア』がずば抜けているよね。自分の作品の映画化には、こだわりの
 ないエルモアがネタとあって、デ・パーマが自分の持てる要素の全てをぶち込んだ傑作。
 『ボディ・ダブル』『アンタッチャブル』『レイジング・ケイン』などを彷彿させる、
 いい意味での「オレ様」映画。『マーダーボール』は、車椅子版の『ロンゲスト・ヤー
 ド』。『最‘新’絶叫計画』の車椅子チェイスはひんしゅくを買ったが、こっちが許される
 のはなぜ? 『サンキュー・スモーキング』は、久々に企業物としてはツッコミの鋭いブ
 ラックユーモア。

 【封切りは終わったけれど…】
  『セプテンバー・テープ』は、志しの低さと狡猾さとエゲつなさ、技術の稚拙さなど
 から近年稀にみる愚作。プロモーション担当は、「“9.11映画”では最低」と言ってい
 るということだから、配給会社は大目に見るとして、こういう愚作を作った製作会社は
 断罪されるべき。

★宮城正樹さん(映画&音楽の批評・分析家)―――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1位)トンマッコルへようこそ
     http://www.youkoso-movie.jp/
  ●2位)カポーティ
     http://www.sonypictures.jp/movies/capote/index.html

  1位は重い『JSA』+癒しの『阿弥陀堂だより』÷戦争風刺劇『まぼろしの市街戦』
 =苦渋の『ポセイドン』とは違う「笑って自己犠牲」へと着地する痛快韓流ヒーロー映
 画。『グエムル』と同じくスローの使い方が巧妙だ。コミカルな猪狩りシーンをコメ
 ディに似合うクイックではなくスローで撮り、ファンタジー色を出すため天使的な役の
 カン・へジョンの幻想シーンで常用。ラスト近くの15秒演技だけで傑作になった『カ
 ポーティ』を凌駕した。

 【裏ベスト】
  ●ブラック・ダリア
     http://www.black-dahlia.jp/
  ●ワールド・トレード・センター
     http://www.wtc-movie.jp/top.html
  ●涙そうそう
     http://www.nada-so.jp/

  「スロー命」デ・パルマ監督の『ブラック…』はスロー控えめ。殺人設定にネチッこ
 くヒッチコック・モードはあるが、全編セピアのフィルターを施し僕の好きなけだるい
 悪女系『白いドレスの女』風にも。オリバー・ストーン監督の新作は『ユナイテッド
 93』の続編的な二次災害パニック。前作で気分が悪くなった僕には「ちょっと回復し
 たかもね」な出来。歌を映画化した『涙…』は同じ兄妹もの&歌原作映画『昭和枯れす
 すき』『妹』より上。

 【封切りは終わったけれど…】
  日本の映画館のルーツとなる場所、大阪なんば・高島屋前に9月22日「TOHOシネ
 マズなんば」がオープン。映画興行発祥を記念する碑文もあるが、1897年に上映され
 た映画はフランスのリュミエール兄弟が製作。その兄弟を冒頭で引用する『八十日間世
 界一周』にDVDで再会。50年代ハリウッド映画らしいアトラクション・ムービーで3
 時間の途中に休憩タイムも。オスカー作品賞受賞の映画より旅行のCMほかで今に残る
 サントラの方が有名。

★宮崎祐治さん(イラストレーター)―――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●16ブロック
     http://www.sonypictures.jp/movies/16blocks/index.html

  酔いどれ刑事ブルース・ウィリスが証人を16区画護送するだけの仕事が、大変なこ
 とになっていく。90分そこそこの時間軸のなかに「天国と地獄」ばりのアイデアを詰
 め込めるだけ詰め込んだ面白さ。こういう洒落たアクション映画が少なくなっているか
 ら、これは貴重ともいえる。

 【裏ベスト】
  ●キャッチボール屋
     http://bitte942.rsjp.net/ball/

  どこの公園なのだろう。10分百円なら訪ねて行って、大森南朋とキャッチボールを
 のんびりとやりたいと思った。時間の流れ方、公園にやって来る人々のキャラクター造
 りが魅力的な佳作。因縁の対決も山口百恵の歌も、のんびりと終わっていくのがいい。

★森直人さん(ライター)――――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●悪魔とダニエル・ジョンストン
     http://www.akuma-daniel.com/
  ●涙そうそう
     http://www.nada-so.jp/
  ●ブラック・ダリア
     http://www.black-dahlia.jp/
  ●木更津キャッツアイ ワールドシリーズ
     http://www.tbs.co.jp/catseye/
  ●サンキュー・スモーキング
     http://www.foxjapan.com/movies/thankyouforsmoking/
  ●ストロベリーショートケイクス ※9月封切
     http://www.strawberryshortcakes.net/
  ●サラバンド ※コメントは前号参照
     http://www.saraband-movie.com

  『涙そうそう』は、『みゆき』ですよ! その意味でも『ラフ』を超えました。『ブ
 ラック・ダリア』は、ベネチア映画祭での評判が悪かったのが不可解なほどの傑作。

 【裏ベスト】
  ●レディ・イン・ザ・ウォーター
     http://wwws.warnerbros.co.jp/ladyinthewater/

  今年、最も変な映画のひとつ。

 【封切りは終わったけれど…】
  『フラガール』のパンフレットで監督インタビューをやりましたので、よろしくお願
 いします。

★山田宏一さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ブラック・ダリア
     http://www.black-dahlia.jp/

  思いがけなくも(などと言っては失礼かもしれませんが)、うれしくもブライアン・
 デ・パルマ監督の傑作です。もしかしたら最高傑作かもしれない。『ファム・ファター
 ル』(2002)の監督ならではの、 映画ファンの琴線にふれる映画的引用の数々、1940
 年代のフィルム・ノワールの犯罪的美女、男の運命を狂わすファム・ファタールをこの
 うえなくエロチックによみがえらせた擬古調ハードボイルド・メロドラマ。『ブルー・
 ダリア(青い戦慄)』(1946)のヴェロニカ・レイク、『郵便配達は二度ベルを鳴ら
 す』(1946)のラナ・ターナーの官能的記憶に取り憑かれたような原作(ジェイムズ・
 エルロイ)のL.A.コンフィデンシャルものの映画化としても快作と言えそうです。『三
 つ数えろ』(1946)の殺人現場になるラヴァーン・テラスにもちょっと目くばせと
 いったお遊びも。ドイツ表現主義映画の怪奇性をハリウッドにもたらしたパウル・レニ
 監督の『笑ふ男』(1928)の引用にもおどろかされます。男優はアラン・ラッドほど
 美しくもなくハンフリー・ボガートほどタフでもないのですが、女優のほうはスカー
 レット・ヨハンソンもヒラリー・スワンクも文句なしのすばらしさです。

 【裏ベスト】
  ●私の老年前夜

  これは、じつは、一册の本(俳優・長塚京三のエッセイ集、筑摩書房刊)なのですが、
 その目次を見るとほとんどが映画の題名で、どれも忘れがたいものばかり、それだけで
 うれしくなりました。『かくも長き不在』や『禁じられた遊び』や『ポケット一杯の幸
 福』ぐらいは映画ファンなら誰もが見て知っているでしょうが、『必殺の一弾』『野郎!
 拳銃で来い』『夕陽の群盗』となると、どれも西部劇で、それをグレン・フォード、
 オーディー・マーフィー、ジェフ・ブリッジスの名に、さらにラッセル・ラウズ監督、
 ジョージ・マーシャル監督、ロバート・ベントン監督に結びつけたりする人がいたら、
 もう、朝まで映画について語り明かすことになるでしょう。『シェーン』の主題曲だっ
 た「遥かなる山の呼び声」という題のエッセイもあります。「名誉と栄光のためでなく」
 や「さあお前と勝負だ」は文学的出典があるとしても、同名の戦争映画やフェルナンデ
 ルが出たフランス映画『陽気なドン・カミロ』のせりふを思い出させます。そもそも、
 本の題名からして、いろいろと……

 【封切りは終わったけれど…】
  封切の前後を問わず、評判のわりにはパッとした作品に出合えず(『ブラック・ダリ
 ア』は群を抜いたおもしろさです)、新文芸坐やフィルム・センターやDVDで、昔の
 映画を見ています。

★渡部実さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●夜のピクニック
     http://www.yorupic.com/
  ●サラバンド ※コメントは前号参照
     http://www.saraband-movie.com

  高校生たちのナイーブな気持ちがよく出ている佳作だと思いました。一つのロード
 ムーヴィーですが、彼等がピクニックを進めていくごとに、ある秘密が見えてくる。そ
 こが何とも魅力的です。多部未華子さんは控えめな存在が逆に彼女自身を際立たせてい
 るように見えます。ちょうど「Love Letter」(95年/岩井俊二監督)を思い出しました。

 【封切りは終わったけれど…】
  『マッチポイント』は見応え充分のサスペンス映画でした。何よりも大人の映画とい
 う感じがします。ヒロインのスカーレット・ヨハンソンも魅力的。また、イギリスのロ
 ケーションも雰囲気があってよろしい。案外、この映画は監督名を隠して公開したら面
 白かったかもしれません。ウディ・アレンはそのくらいのユーモアを持っている人だと
 思いました。

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┣編集後記┫

◆今号も気になる人気作品、ありますでしょう? 『スネーク・フライト』? ああ『セル
ラー』の監督さんかあ、納得。『16ブロック』、これはマトモに面白そう。 そして『ホ
ステル』? 「アメリカ製ホラー映画の伝統を踏まえた見事な脚本と演出で過剰な残虐さ
だけを売りにした諸作とは一線を画す大傑作」(江戸木さん)を筆頭に、「渡航先におい
て見知らぬ女性とのセックス遊戯に黄色信号を灯してくれた」(ジャンクハンター吉田さ
ん)、「巧みな脚本に裏打ちされた」(高橋さん)、「観後感は意外に爽快」(西脇さ
ん)と続き「まっとうな教訓も多く含まれていて、ホラー映画の中でも特にモラルの強い
方に入ると思う」(皆川さん)だそうですよ、実は真面目な映画なのかあ? こんな感じ
で、多彩な推薦作の中から自分で気になるのを、見つけてやっていただければ幸いに存じ
ます。あと、このメルマガでは集計はあくまでもお遊びなので、厳密なルールを定めず、
ただただタイトルが言及された数だけで【表】&【裏】のベストワン(メルマガ上)と2
位~5位(ホームページ上)を発表してます。もうひとつの項目である【封切りは終わっ
たけれど…】では、いつも作品がバラバラに挙がるのが常ですが、今号では珍しく『フラ
ガール』の名が連呼されました。これってスゴイですよね!   (れがあるF)

◆おかげさまで第6号を発行することができました。読者のみなさまからも、励ましのお
言葉や好意的なご感想をいただき、感謝です。カード決済だけでなく郵便振替も利用でき
るようになったので、少しでも読者層が広がってくれれば…と願っています。ところで、
スリラーが好きで喫煙者の私としては『ブラック・ダリア』と『サンキュー・スモーキン
グ』は絶対に見逃せません。クリント・イーストウッドの『父親たちの星条旗』も見たい
なあ! 10月は忙しくなりそうです。   (れがあるU)

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■発行日:2006年9月30日
■発行者:れがある http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest
■定 価:315円(税込)
■このメールマガジンに掲載された文章の転載・転送は禁止されています
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