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2006年年間ベスト3+2007年2月号

〓〓〓試写室だより 封切はこれからだ!〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓第十号〓〓〓

     映画を見るプロが選ぶ、表ベスト映画&裏ベスト映画
   ∴・∴・∴2006年年間ベスト3+2007年2月封切り篇∴・∴・∴

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【2006年の表ベスト3】2006年の最高作3本とそのコメント。
【2006年の裏ベスト3】2006年の極私的なケッサク3本!
【2月のベスト】これぞ映画を見るプロが選んだ2月の最高作。心して見よ。
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◆2006年度【表ベスト10】◆
1位 ブロークバック・マウンテン(15点)
2位 硫黄島からの手紙(13点)
3位 父親たちの星条旗(7点)
3位 メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬(7点)
5位 雪に願うこと(6点)
6位 楽日(5点)
6位 うつせみ(5点)
6位 007/カジノ・ロワイヤル(5点)
6位 ヨコハマメリー(5点)
10位 太陽の傷(4.5点)

◆2006年度【裏ベスト5】◆
1位 007/カジノ・ロワイヤル(9点)
2位 太陽(7点)
3位 ナチョ・リブレ 覆面の神様(6点)
4位 グエムル -漢江の怪物-(5点)
4位 ボクの大事なコレクション(5点)

◆2006年度【総合(表&裏)ベスト5】◆
1位 ブロークバック・マウンテン(15点)
2位 007/カジノ・ロワイヤル(14点)
3位 硫黄島からの手紙(13点)
4位 太陽(10点)
5位 父親たちの星条旗(7点)
5位 メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬(7点)

※1位=3点、2位=2点、3位=1点で集計。
順位不同の場合はすべて2点。2位が2作品の場合は各1.5点とする。

◆2月の封切映画INDEX(得票順/カッコ内は選者/日付は封切り予定日)◆
【表ベスト】
1位 ドリームガールズ(馬場、江戸木、大森、加藤、黒田、高崎、高村、田中、西脇、
   まつかわ、みのわ、宮城、宮崎、森)2月17日
   http://www.dreamgirls-movie.jp/top.html
2位 世界最速のインディアン(安藤、稲垣、内海、浦崎、江戸木、加藤、塩田、野村、
   宮城、山田)2月3日
   http://www.sonypictures.jp/movies/theworldsfastestindian/index.html
3位 孔雀 ―我が家の風景―(宇田川、高崎、暉峻、西脇、皆川、宮崎)早春
   http://www.eiga.com/official/kujaku/
4位 ピンチクリフ・グランプリ(宇田川、吉田、増當、皆川、森)2月3日
   http://www.pinchcliffe.com/
4位 華麗なる恋の舞台で(内海、浦崎、江戸木、まつかわ、みのわ)2月10日
   http://www.alcine-terran.com/kareinaru/
6位 あなたになら言える秘密のこと(浦崎、大森、高橋、まつかわ)2月10日
   http://www.himitsunokoto.jp/
6位 不機嫌な男たち(塩田、高崎、暉峻、西脇)2月17日
   http://www.kaf-s.com/lineup/fukigen/index.html
6位 善き人のためのソナタ(えい、江戸木、河原、高橋)2月10日
   http://www.yokihito.com/
9位 Gガール 破壊的な彼女(秋本、内海、みのわ)2月10日
   http://movies.foxjapan.com/Ggirl/index.html
9位 DOA デッド・オア・アライブ(秋本、吉田、みのわ)2月10日
   http://www.doa-movie.jp/
9位 さくらん(秋本、塩田、森)2月24日
   http://www.sakuran-themovie.com/
9位 墨攻(安藤、高村、増當)2月3日
   http://www.bokkou.jp/
13位 エクステ(えい、塩田)2月17日
   http://www.exte-movie.jp/
13位 叫[さけび](大森、高橋)2月24日
   http://sakebi.jp/index.html
13位 フリージア(野村、皆川)2月3日
   http://www.freesia-movie.com/
13位 カインの末裔(加藤、森)陽春
   http://www.cains.jp/
17位
●キャプテントキオ(安藤)2月17日 http://www.captain-tokio.com/
●モーツァルトとクジラ(稲垣)2月10日 http://www.mozart-kujira.jp/
●聴かれた女(宇田川)2月10日 http://www.kikaretaonna.com/
●守護神(江戸木)2月10日 http://www.movies.co.jp/guardian/
●スターフィッシュホテル(吉田)2月3日 http://www.starfishhotel.jp/
●松ヶ根乱射事件(高橋)2月24日 http://www.matsugane.jp/
●素敵な夜、ボクにください(野村)2月24日 http://www.sutekinayoru.com/
●バブルへGO!! タイムマシンはドラム式(宮城)2月10日
 http://www.go-bubble.com/
●ピクシーズ ラウド・クァイエット・ラウド(森)2月3日
 http://www.baustheater.com/pixies.htm
●幽閉者・テロリスト(松島)2月3日 http://www.prisoner-m.com/
○魂萌え!(まつかわ) http://www.tamamoe.com/
※○印は1月公開のため集計外
※『華麗なる恋の舞台で』の内海さん、浦崎さん、まつかわさん、みのわさん、『幽閉
 者・テロリスト』の松島さん、『善き人のためのソナタ』の河原さんの各コメントは、
 第九号に掲載。
※【2月/裏ベスト】と【封切は終わったけれど…】はお休みいたします。
ただし、幾つかいただいたご回答があり、それらはすべて掲載いたしました。

◆◇◆執筆者プロフィール、近況、著作はHPに掲載◆◇◆
   http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest

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★秋本鉄次さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬
  2位)寝ずの番
  3位)雪に願うこと

  邦画、洋画のベテラン俳優初監督作でワンツーを決めた。ともに自分の得意技で勝負
 し、その役者キャリアの年輪を刻み込む。奇しくも“死体いじり(それも亡き大切な人
 に愛惜をこめてのもの)”が共通項。国境の南と浪花のド真ん中の時空を結んで、ト
 ミー・リー・ジョーンズとマキノ(津川)雅彦の無意識のコラボに胸をときめかせた。
 「雪に願うこと」は、映画、落語とともに好きな競馬の世界、それも存続が危ないばん
 えい競馬が題材だけに思い入れたっぷり。賄いのおばさん=キョンキョンもイイなあ。
 
 【2006年の裏ベスト】
  1位)サンクチュアリ
  2位)16ブロック
  3位)マッチポイント

  “裏”にふさわしく三面記事っぽい3本にまとめてみた。06年、本当は中谷美紀よ
 り、松雪泰子よりわが女優賞の黒沢あすか嬢。「嫌われ松子」の助演もイイが、やっぱ
 「サンクチュアリ」の主演女優ぶりが際立った。世相を反映するかのような毒婦ぶりに
 参った。ウディ・アレン翁の「マッチポイント」もまさに三面記事的。それにしてもス
 カ・ジョ(スカーレット・ジョハンソン)の魔性はスゴイ。最近のキャメロン・ディア
 ス離婚の遠因も彼女とか。アレン翁も気をつけて、相当ハマってるみたいだから。
 「16ブロック」も一見ケチな刑事の話だが、あのウィリスはオヤジ心を泣かす。

 【2月のベスト】
  ●Gガール 破滅的な彼女
  ●DOA デッド・オア・アライブ
  ●さくらん
  コメントは前号参照。

  ※最初にお詫びを。前号でうっかり2月の作品を選んでしまい、皆様にご迷惑をおか
 け致しました。そろそろ脳軟化症か、と反省しております。で、出し遅れの証文のよう
 な1月作品のコメントをご笑納くださいませ。

 【1月の表ベスト】
  ●魂萌え!
  ●子宮の記憶
  ●愛の流刑地
 【1月の裏ベスト】
  ●刺青 堕ちた女郎蜘蛛
  ●ラッキーナンバー7
  ●不都合な真実
  ●それでもボクはやってない

  “女優で映画を見る”者としては、1月の邦画女優は充実一途。「愛の流刑地」は賛否
 両論のようだが、僕は“寺島効果”で支持する。冒頭からかなり気合の入った濡れ場だ
 し、彼女で結果オーライ。だんだんキレイになる、という劇中の言葉も妙にリアリ
 ティーがあって納得する。これが単なる美人女優だったら逆にうそくさいかも。テレビ
 版では高岡早紀が冬香を演じるそうだが、見比べてみたいね、とはオヤジの独り言。
 「子宮の記憶」は取材もあって2度見てしまったが、松雪泰子と柄本佑のやりとりの緊
 張感が素晴らしい。それとわが松雪様のノーズ美に見ほれる映画でもある。日本三景に
 も勝るその究極のノーズ美、『松雪や ああ松雪や 松雪や』と芭蕉なら詠んだだろ
 う。「魂萌え!」は早くも風吹ジュンを本年の主演女優賞に内定させたいほど。ヒロイ
 ンのプチ冒険を僕は無条件に受け入れたい。ちなみに“愛ルケ”“子宮”の両方で、奇しく
 もバーのママ役で助演している余貴美子さんを早くも今年の助演女優賞に内々定。我な
 がらせっかちだが、旗色鮮明をすぐ打ち出したい性格なのでスンマヘン。2006年の裏
 ベストの「刺青」も川島令美は有望株。ええ肌しとるのお、と「徳川いれずみ師 責め
 地獄」の小池朝雄の気分で品定めしました。映画も瀬々敬久監督、「サンクチュアリ」
 に続いて、絶好調。「ラッキーナンバー7」はぜいたくな俳優の使い方、だまされる快
 感が味わえる。こういうアメリカ映画が少なくなった現在貴重だ。「不都合な真実」
 「それボク」は社会派の良作だが、前者はなぜゴアは次期大統領選に打って出ないの
 か、への言及が不足し、後者は主人公があまりにイノセントなのが気になった。要する
 に両作ともにオーソドックスすぎるのが物足りないのだ。

★安藤智恵子さん(ライター)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)太陽
  2位)リバティーン
  3位)奇跡の夏

  もう文句なしにコレ! という作品はなかったように思います。でも『太陽』のイッ
 セー尾形はちょっと忘れられないですね。『父親たちの星条旗』入れようか悩んだ末に
 はずしました。理由はイーストウッドが出演していないから。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)THE WINDS OF GOD
  2位)CHAOS カオス
  3位)スパイモンキー

  よくできた映画かどうかは別に、志の高さに敬意を表して『THE WINDS OF
 GOD』を。今井雅之、好きだし。『スパイモンキー』はビデオで見ましたが、お茶で
 も飲みながらテレビで見るのにピッタリの軽快な活劇でした。やっぱスパイ映画はこう
 でなくっちゃ!

 【2月のベスト】
  ●世界最速のインディアン
  ●墨攻
  ●キャプテントキオ

  人情とユーモア、スピードとスケール感。地味な脇役にまで行き届いたキャラクター
 設定とそれを表現する演技力。『世界最速のインディアン』は、経済格差だの高齢化だ
 の細かいこと言わずアバウトに行こうや、なんとかなるさ…と思わせてくれて爽快だ。
 『墨攻』に出ている台湾のウー・チーロンという俳優が、若い頃のジャッキー・チェン
 にちょっと似ていて、かわいかった。本来は“裏”なんですが『キャプテントキオ』。
 ウエンツ瑛士の白ブリーフ、ごちそうさまでした!

★稲垣都々世さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)父親たちの星条旗
  2位)麦の穂をゆらす風
  3位)僕の大事なコレクション

  子供のころから戦争ものが嫌いなのに、こんな作品が並んでしまったのは、今どきの
 世界が映画に反映されていて、作り手の思いが真摯だからだ。とくにイーストウッド
 の、平明さと誠実さが示す成熟した知性に深く胸を打たれた。尊敬するケン・ローチ
 は、実はイギリス国内もののほうがずっと好きだが、いつも変わらぬ政治意識に感動す
 る。もっと自然に、心に響いてきたのが「僕の大事なコレクション」。喪失の痛みが身
 にしみた。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)007/カジノ・ロワイヤル
  2位)インサイド・マン
  3位)太陽

  「007」はダニエル・クレイグではなく、新ボンドのキャラに恋をした。30余年ぶり
 に原作を読み、拷問シーンを封印していた自分に驚いた。脚本をもう少し滑らかにまと
 め、アクション・シーンを少々カットして、全体を20分切れば完璧だ。見る前はボン
 ドに合っていると思ったクライブ・オーウェンは、結果的に「インサイド・マン」に
 なってよかった。日本の天皇をとってしまったソクーロフには複雑な思いがあるが、面
 白さは否定できない。

 【2月の表ベスト】
  ●世界最速のインディアン
  ●モーツァルトとクジラ

  公開作品も少ないようだが、見ているのはほんの数本。この2本くらいしかオススメ
 できる作品はなかった。「世界~」はアンソニー・ホプキンスの“良い人”演技に驚き、
 見終わった後しばし自分も“良い人”になれたような……。寛容は、人の心をも変えられ
 る。いや、実は主人公を取り巻く人々の視線に不穏なものを感じとったことを思い出
 し、“人間不信”を反省した。「イカとクジラ」のクジラは個人的体験に基づいていて
 「?」だったが、こちらのクジラは納得。ハートネットの眠そうな目が好きだ。

 【2月の裏ベスト】
  ●墨攻
  ●Gガール 破壊的な彼女

  【裏】もムリヤリ。「墨攻」は物語とテーマが面白いので挙げたが、デジタル処理に
 よる映像が映画の風格を削いでしまって残念。「Gガール」は、後天的な“スーパー
 ガール”は、スーパーマンと違って“良い人”とは限らないという発想だけが面白かっ
 た。アイバン・ライトマン監督には、息子を見習ってほしい。

★宇田川幸洋さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  ●三年身籠る
  ●猫目小僧
  ●楽日

  日経新聞の去年の暮れの「今年の収穫」にえらんだ3本と同じ。どれも自分にとって
 ここちのよい映画。普通にいう「元気が出る映画」とは意味がちがうが、たとえば、去
 年ある国際映画祭で、映画祭で毎日映画を見ていると、だんだん疲れがたまってくるも
 ので、その日もだいぶ調子がわるかったのだが、3度目か4度目になる『三年身籠る』
 を見たら、体調が回復したことがあった。また、自分にとってかなりつまらない『イン
 サイド・マン』を見て、調子がわるくなったとき、2度目の『猫目小僧』にすくわれた
 こともあった。としをとったせいか、映画が直接的にからだにひびいてくるようだ。

 【2006年の裏ベスト】
  ●雨の町
  ●親友
  ●七人のマッハ!!!!!!!

  『雨の町』は、すごくいいというほどではないホラーだが、妙にこころにのこるとこ
 ろがある。劇場売りパンフに原稿をかくために2度見たから記憶にのこっているという
 こともあるかも知れないが、和田聰宏と真木よう子のその後の人生が、なんだか気に
 なって、それがこころにひっかかっているのだ。真木よう子は『ゆれる』に通じる役柄
 だが、こっちもとてもいいのだ。
  『親友』は、アジアフォーカス福岡映画祭で上映されたタイの青春映画。バンコク
 国際映画祭で“Dear Dakanda”として見ていたのだが、この日本語題名とむすびつか
 ず、東京の試写でもう1回見てしまった。ヒロインのダーカンダー役の女の子シラパ
 ン・ワッタナジンダーがとてもかわいい。同じ監督コムグリット・ドゥリーウィモン
 の、まんがを映画化したコメディー『ヌーヒン』が東京国際映画祭で上映され、これも
 おもしろかった。’70~’80年代の香港映画みたいな元気があって。

 【2月の表ベスト】
  ●聴かれた女
  ●孔雀 ―我が家の風景―
  ●ピンチクリフ・グランプリ

  『聴かれた女』は、ひさびさの山本政志監督作品。壁のうすいアパートでおこるエロ
 チック・サスペンス。うまい映画である。低予算のビデオ作品だが、そのおもしろさに
 身をひきこまれる。主演、蒼井そらのヌードもバッチリだし、演技もイケている。
  『孔雀』は、’70年代の中国を背景にした5人家族のはなしだが、ノスタルジックで
 もなく、清らかに美しくもないところがすばらしい。家族全員、みんなヘンなところが
 あって、身をもちくずしたり、まっすぐな人生とはほど遠い行きかたになっていくが、
 まあ、なんとかなるようになるしかないのである。名キャメラマン、クー・チャンウェ
 イ(顧長衛)の初監督作だけに、撮影はもちろん傑出している。彼がこれまでにキャメ
 ラを担当した監督のだれかと似ているとすれば、それはチャン・イーモウ(張芸謀)で
 もチェン・カイコー(陳凱歌)でもなく、ロバート・アルトマンではないのか。『君よ
 憤怒の河を渉れ』(’76)を見ているシーンを見せた、はじめての中国映画。
  『ピンチクリフ・グランプリ』は、とにかくたのしい。

 【2月の裏ベスト】
  ●幽閉者・テロリスト ※第九号参照

  先月にもあげたが、封切がズレこんだので。またあげておきます。

★内海陽子さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)硫黄島からの手紙
  2位)トンマッコルへようこそ
  3位)トランスアメリカ

  クリント・イーストウッドの名がクレジットされたとたんに涙が止まらなくなる「硫
 黄島からの手紙」。日本人俳優の好演をみごと映像にとどめた度量に感動。厭世観にと
 らわれた韓国軍将校(シン・ハギュン)が重大な戦いをリードする「トンマッコルへよ
 うこそ」。最期の晴れやかな表情に救われる。行き場を失いかけていた女心が、ようや
 く自分の居場所と母性を獲得する「トランスアメリカ」。フェリシティ・ハフマンの
 ユーモアと柔軟性は崇高だ。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)ナチョ・リブレ 覆面の神様
  2位)笑う大天使(ミカエル)
  3位)キンキーブーツ

  メキシコ、プロレス、貧しさをたたき台にして、ジャック・ブラックがダンディーな
 快進撃を見せる「ナチョ・リブレ」。お嬢様も似合う庶民性を武器に、上野樹里がコメ
 ディエンヌとしての将来性を高らかに宣言する「笑う大天使」。ワイルドなブーツに象
 徴される猥雑なたくましさと、見栄と伝統に縛られる弱腰な精神が折り合い、壮快さを
 生み出す「キンキーブーツ」。ベストのポイントが「美しさ」なら、裏ベストのポイン
 トは「愛らしさ」である。

 【2月の表ベスト】
  ●Gガール 破壊的な彼女
  ●世界最速のインディアン

  超人的パワーで世界征服も可能なのに恋には盲目。「Gガール」のユマ・サーマン
 が、振られた腹いせに鮫を窓からぶち込むシーンのナンセンスに初笑い。年を重ねてコ
 メディエンヌに成長する美女の姿は女の理想。オタク的パワーもここまでくれば高級
 品。「世界最速のインディアン」のアンソニー・ホプキンスは、少年のまま年取った男
 の一念を軽やかに演じて魅了する。名怪優のイメージを一新、さらなる進化を宣言した
 かのようなホプキンスに脱帽。

 【2月の裏ベスト】
  ●さくらん
  ●エクステ

  違和感十分のきらびやかな遊女姿にも慣れてしまえば、言うに言われぬ忍ぶ恋が浮き
 上がる。「さくらん」の安藤政信は久しぶりにやるせない男ぶりを見せる。けれんみ十
 分の演出の中にある“地味”に注目したい。到底美しい髪には見えないCGの“髪々”に目
 をつぶれば、「エクステ」は久々の和製ホラーの快作。大はしゃぎの大杉漣がコミカル
 過ぎるのは計算のうちだろうか、計算のほかだろうか。わたしにはその異様なフェティ
 シズムも愛らしいが。
   
 【封切は終わったけれど…】
  前号で、「魂萌え!」をベスト作品に挙げるのを失念してしまいました。関係各位に
 深くお詫び申し上げます。女優、風吹ジュンのあまりに可憐な59歳ぶりに嫉妬したせ
 いかもしれません。劇中で映画館の受付嬢が、彼女にシニアではないかと問うのはまこ
 とに失礼だと思います。

★馬場英美さん(ライター、エディター)―――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)フラガール
  2位)プロデューサーズ
  3位)プラダを着た悪魔

  改めて振り返ってみると、いかに観なかった、観られなかった作品が多いことか。そ
 の中で、「フラガール」は、私の中の“蒼井優”熱を上昇させた1本。「プロデューサー
 ズ」は、ネイサン・レインの芸達者ぶりを含め、文句なく楽しい。「プラダを着た悪
 魔」は、「Sex and the CITY」好きにはたまらないテンポの良さでランクイン。結
 局、映画的ではなく、いかに楽しく、幸せな気分にひたれるかが重要ってこと!? 甘い
 セレクトです…。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)かもめ食堂

  何が起こるわけでもなく、女優3人の雰囲気だけでもっている映画。それでいて、な
 んとなく幸せな気分になれるのが不思議。

 【2月のベスト】
  ●ドリームガールズ

  とにかくジェニファー・ハドソンの歌声がすごい。ビヨンセが霞んでしまうほどの存
 在感で、久々に心が震えた。エディ・マーフィも絶妙のうさん臭さで、復活の意味も込
 めて(!)、ぜひアカデミー賞を獲って欲しい。

★浦崎浩實さん(激評家/映画評・劇評)―――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)カミュなんて知らない
  2位)キャッチボール屋
  2位)太陽の傷

  いずれも各種“テン”や賞にシカトされている傑作です。日本映画がTVドラマにひた
 すら擦り寄っていく現状にあって、はらむものは大きく、映画ここにありの感に堪えま
 せん!

 【2006年の裏ベスト】
  ●Oi〈オイ〉ビシクレッタ
  ●僕の大事なコレクション
  ●太陽に恋して

  裏というより外国映画秀作3作だが、「明日へのチケット」を加え4作にしたいとこ
 ろ。旅イコール発見と変化、成長の物語で、辺境と都市の往還はいつもスリリングで
 す。

 【2月のベスト】
  ●あなたになら言える秘密のこと
  ●世界最速のインディアン

  この2作については贅言を全く要しません。観てくれ!

※浦崎さんより同人誌のプレゼントがあります。詳細は巻末の編集後記をご覧ください。

★えいwithフォーンさん(シネマブロガーズ)――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)リトル・ミス・サンシャイン
  2位)硫黄島からの手紙
  3位)ホテル・ルワンダ

 ──あらら。意外にオーソドックスな作品が並んだね。でも統一性に欠ける気がする
 けど……。
 「映画は一本一本がそれぞれが違うところに観る楽しさもあるわけだからね。ただ、普
 遍性の中にも現代に生まれた必然性を感じさせる映画の方がどうしても強く印象に残る
 のは否めない。その観点からすると『キンキーブーツ』と『フラガール』を外さなけれ
 ばならなかったのは辛かったね」

 【2006年の裏ベスト】
  1位)虹の女神 Rainbow Song
  2位)ラブ★コン
  3位)さよなら、僕らの夏

 ──あれれ。こちらは全部、青春映画だ。
 「それまで信じきっていた自分の王国が他者との関係が生まれることによって揺らぎ始
 める----。その一瞬を、登場人物たちと同年齢の俳優の肉体とともに切り取った映画は
 他の表現媒体にはない魅力を放っている。『青春映画が映画だ』------これは井筒和幸監
 督の名言。ぼくはさすがにそこまでは断定できないけど、青春映画に感応する部分があ
 るのは否定できないな」

 【2月のベスト】
  ●善き人のためのソナタ
  ●エクステ

 ──これって、一見ありえない組み合わせに見えるけど…。
 「アナログ音によって生み出したと言う冷戦当時の東ドイツ。その静まり返った空気の
 中で蠢く愛と欲望のドラマは観る者を翻弄。『善き人のためのソナタ』は着地点の読め
 ないスリリングな映画体験を味わえた。一方の『エクステ』は派手なスペクタクル・ホ
 ラーの中にあって、大杉漣の怪演、つぐみVS栗山千明によるバトルと、俳優たちがそ
 れぞれの力量を存分に発揮し、映画を支える。童話『狼と七匹の子山羊』を思わせる恐
 怖、人を食ったようなお遊び的結末。園子温には『目指せ! 和製ティム・バートン』
 と言いたいな」

★江戸木純さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)2番目のキス
  2位)ピンク・パンサー
  3位)ヒストリー・オブ・バイオレンス

  イーストウッドの2作は別格なのであえて入れず。1位)と2位)はほんとうによく
 できた大傑作コメディ。それにしてもこの2作、過小評価され過ぎ。ハッキリいって1
 位)は「僕のプレミア・ライフ」よりも、2位)はピーター・セラーズ版より遙かに出
 来がいいし笑える。未見の人は、レンタルなんて言わずDVDを買うべし。2位)の特
 典映像におけるスティーブ・マーチンの暴走ぶりも必見。3位)のクロネンバーグ復活
 はイーストウッドの堅調よりうれしい。こちらのDVDの特典映像もまた最高。 

 【2006年の裏ベスト】
  1位)ホステル
  2位)スネーク・フライト
  3位)SPL 狼よ静かに死ね

  1位)はアメリカ娯楽映画史の伝統を踏まえ、表現を現代に合わせてエスカレートさ
 せた痛快作にして、『SAW』シリーズをはじめとする強烈なバイオレンスだけの病的
 なホラーとは一線を画す傑作。2位)はとにかくこの馬鹿げた題材を直球でやりつくす
 豪快さが素晴らしい。サミュエル・L・ジャクソンの悪ノリぶりにも感涙。3位)はド
 ニー・イェン対サモ・ハンの壮絶な死闘にしびれる香港格闘技映画史に残る傑作。

 【2月のベスト】
  1位)ドリームガールズ
  2位)世界最速のインディアン
  3位)善き人のためのソナタ
  4位)華麗なる恋の舞台で
  5位)守護神

  1位)は芸達者な超一流のパフォーマンスを堪能させてくれる近年最もよくできた傑
 作ミュージカル。アカデミー賞助演男女優はこれでほぼ決まり。2位)はアンソニー・
 ホプキンスが出ずっぱりで頑張る豪快爺さんの豪快なチャレンジ。ポジティブなエネル
 ギーに満ち、元気の出る映画。3位)は盗聴というひたすら地味な展開の底から感動が
 湧いてくるいい話。4位)はアネット・ベニングが女優という魔物を凄みある熱演で演
 じる力作。5位)はアンドリュー・デイヴィス監督にとってもコスナーにとっても久々
 の快作。日本の「海猿」とは比較にならない緊迫感と重量級の見応え。

★大森さわこさん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)ブロークバック・マウンテン
  2位)うつせみ
  3位)ヨコハマメリー

  この3本、実はこのマガジンのゼロ号で選んだベスト作品です。で、それがそのま
 ま、年間のベストにもなりました。「ヨコハマメリー」は何も知らずに白紙で見たの
 で、本当に驚きました。ワイルドサイドを生きぬいた女性のリアルな人生が迫ってく
 る。しかも、本人の出番がほとんどない、という構成も、おもしろい。こんなにヒット
 するとは、ゼロ号の頃は予測もつきませんでした。
  「ブロークバック~」ほど、何度も映画館に行きたくなる映画も、ちょっとなく、そ
 の無常観に打たれました。「うつせみ」は見れば見るほどに、ギドクのアブナイ催眠術
 の罠におちていくのです。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)嫌われ松子の一生
  2位)プルートで朝食を
  3位)メルキアデス・エストラーダの三度の埋葬

  私の場合、ベストテンに表も裏もありません。ので、こちらをベストと入れ替えても
 OK。昨年は書き下ろし本の執筆に時間をとられ、あまり新作を見られなかったのが残
 念です(本はやっと脱稿)。「松子」はあのペラペラの映像が、映画と呼べるものか、
 やや疑問ですが、不思議な触発力のある作品でした。
  「プルート~」はどこか切なく、でも、楽しい! 「メルキアデス~」は何よりもゴ
 ツゴツした風景の広大さが魅力。この映画の脚本家ギジェルモ・アリアガの新作「バベ
 ル」にも期待! 他に「リトル・ミス・サンシャイン」も特に好きな1本で、3位はこ
 ちらと入れ替えてもOK。
 
 【2月のベスト】
  ●あなたになら言える秘密のこと
  ●ドリームガールズ
  ●叫(さけび)

  「あなた~」は「死ぬまでにしたい10のこと」のイザベル・コイシェ監督とサラ・
 ポーリーのコンビ2作目で、製作は前作同様、アルモドヴァル。秘密を抱えた孤独な
 人々を独特の雰囲気で描くコンビ。前作ではブラッサム・ディアリーのジャズが、今回
 はBS&Tやトム・ウェイツの曲が効果的。かつてのアラン・ルドルフを思わせるオフ
 ビートなセンスがある監督です。
  「ドリーム~」はザ・シュプリームスからヒントを得たといわれるミュージカル。ひ
 たすらに歌の魅力で押す映画で、あれよ、あれよ、と物語が展開し、気づくと、終わっ
 てましたワ。アレサ・フランクリン風のパワフルな歌を聞かせる新人ジェニファー・ハ
 ドソン、もうけ役ですね。
  「叫」は黒沢清の新作。この監督の映画は、特に好きではないのだが、見終わると、
 妙な感覚が体の中に残ることが多くて……。サイコロジーのお化け屋敷というか、なん
 か、コワイ映画でした。

★加藤久徳さん(映画ライター)―――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)雪に願うこと
  2位)ニキフォル 知られざる天才画家の肖像
  3位)13歳の夏に僕は生まれた

  脚本、演出、キャストの魅力、スタッフの働き等、非の打ちどころのないような『雪
 に願うこと』はばんえい競馬そのものが廃止と決まった今、本当によくぞ作ってくれた
 と製作に関わった全ての人にお礼を言いたいほどの秀作だった。『ニキフォル』は、映
 画を観終わった後も、“主演女優”がどこに出ていたか判らなかった点で、僕には驚天動
 地な傑作。『13歳の夏に僕は生まれた』は生きていればきっと良いことがあると信じ
 ている僕には、返答につまるような問題提起作だった。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)007/カジノ・ロワイヤル
  2位)ディセント
  3位)セプテンバー・テープ

  呼吸困難、吐き気に苦しめられたほどの恐怖感に襲われた『ディセント』だが、一位
 は007にしておく。物心ついたころからの007ファンには、この新版は絶対的なものが
 あるのだ。しかし、ボンド誕生の秘密を描くと宣伝しておきながら、過去のシリーズと
 は何の関係もないようなエピソード1の描き方には大笑い。評判が悪いわけだ。それで
 も、ダニエル・クレイグのキャラに合わせた商魂に徹している点は素晴らしく、裏ベス
 トには相応しい。『セプテンバー・テープ』も、アメリカ人が体を張って商魂に徹して
 いる点で変わりなし。バカとしか言えないが、日本人には真似できないな。

 【2月のベスト】
  ●世界最速のインディアン
  ●ドリームガールズ
  ●カインの末裔

  ローレンス・オリヴィエを凌ぎ、スペンサー・トレイシーの境地に到達したのではと
 思えるほど、魅力的な熟年俳優となったアンソニー・ホプキンスの存在感が素晴らしい
 『世界最速のインディアン』。お膳立てやシナリオが生きるのは、最後は演じる人で決
 まるのだと証明する逸品であった。ビヨンセがメインのつもりで観た『ドリームガール
 ズ』は、意外にも、脇役ジェニファー・ハドソンが圧倒的な迫力と歌唱力で主役を食っ
 た。ブロードウェイミュージカルの映画化だが、2時間10分全く飽きなかった。あの
 エディ・マーフィも快演。『カインの末裔』の監督・奥秀太郎は才能がある。環境描写
 もいい。

★河原晶子さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)隠された記憶
  2位)メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬
  3位)サラバンド

  ミハイル・ハネケは“現代”の悪意を相変わらず冷徹に挑発的に描いています。
  ベルイマンの“生きること”への熱さに心揺さぶられました。
  そしてトミー・リー・ジョーンズの快挙! 某CMの“宇宙人ジョーンズ氏”もお気に入
 りでした。

 【2006年の裏ベスト】
  ●プルートで朝食を
  ●楽日
  ●ラスト・デイズ

  ニール・ジョーダンの愛すべきロマンティシズム。ツァイ・ミンリャンの抑制された
 不思議なユーモア感覚。そしてガス・ヴァン・サントの極私的なファンタジー。あえて
 ゲイ・テイストの3作を。

★黒田邦雄さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)ブロークバック・マウンテン
  2位)ヨコハマメリー
  3位)愛されるために、ここにいる

  「愛されるために、ここにいる」は余り話題にならなかったが、若手監督がこれだけ
 円熟した作品を撮るところにフランス映画の伝統を感じさせた。悔い多き人生の最後に
 訪れた夢にすがりつこうとする男の切なさ、むなしさ。「ブロークバック・マウンテ
 ン」も、アメリカ映画には珍しく虚無的な空気が流れているのが気に入った。「ヨコハ
 マメリー」のメリーさん、夢を見続けたあなたは強かった!

 【2006年の裏ベスト】
  1位)007/カジノ・ロワイヤル
  2位)ユナイテッド93
  3位)プロデューサーズ

  ダニエル・クレイグのマゾ(!)なボンドに会えたことが最大の収穫。おせっかいな
 がら観るのがつらかった3本をあげると、「初恋」「地下鉄に乗って」「出口のない
 海」。一応の評価を受けた作品の中からのチョイスだが、共通点らしきものを強いてさ
 ぐってみると、青春とか感傷とか郷愁とかのキーワードが浮かぶ。つまり私は、こうい
 うものが苦手なのです。

 【2月のベスト】
  ●ドリームガールズ

  マイケル・ベネット(ミュージカル版の演出・振付)に捧げられているが、ベネット
 とビル・コンドン(監督・脚色)の相性のよさが伺える。コンドンって、ポイントを押
 さえる脚色が実にうまい。アフリカ系アメリカ人ミュージシャンの苦労話やモータウン
 の裏話などをリアルに織り込みながら、華やかでダイナミックなミュージカル映画に仕
 上げている。「コーラスライン」もコンドンで再映画化すべし。

★塩田時敏さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)太陽の傷
  2位)弓
  3位)エコール

  表ベストの3本を選ぶなら、イーストウッドでもなけりゃ、故・黒木和雄でもなし。
 三池崇史の「太陽の傷」だ。誰も観たこともない社会派シリアス・ホラー的な怖さで、
 誰も観てないのがもったいない。この三池と韓国代表キム・ギドク、仏代表ギャス
 パー・ノエが、最も危険な現代映画の三巨頭。ギャスパーの不在を公私にわたるパート
 ナー、ルシールの「エコール」が埋めて、私にとっては実に充実した’06年だったとい
 える。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)インプリント~ぼっけえ、きょうてえ
  2位)うつせみ
  3位)ホステル

  ちなみに、三巨頭に米代表アベル・フェラーラを加えると、最も危険な現代監督四天
 王である。裏も三巨頭でシメたいとこだが、ギャスパーは寡作なので、真に裏ベストに
 値するイーライ・ロスの「ホステル」を推すにしくはないが、なんなら未公開DVD発
 売のみのフェラーラ作品「クライム・クリスマス」に替えてもよし。しかし、そんなア
 メリカをもビビらせて、放送禁止処分を勝ち取った、我が「インプリント」のヤバさこ
 そアッパレ!

 【2月のベスト】
  ●さくらん
  ●エクステ
  ●世界最速のインディアン
  ●不機嫌な男たち

  エロカワな「さくらん」、木村佳乃、菅野美穂の“萌え”ならぬ“もだえ”っぷりが、本
 作に風格、品格をもたらしている。「エクステ」は何といっても大杉漣、久々の超怪演
 ぶりに絶句。’07年も園子温監督は絶好調のすべり出しだ。こんなオヤジが回りにいた
 ら、実はぐったりする程大変だと思うが、距離をおけば痛快な「世界最速のインディア
 ン」。オヤジの生き様も悪くないが、そのスピード感にけっこうシビレるのだ。

★品田雄吉さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)硫黄島からの手紙 
  2位)父親たちの星条旗
  3位)ブロークバック・マウンテン

  クリント・イーストウッドの「硫黄島2部作」は立派な仕事であり、ともにアメリカ
 の良心を感じさせる作品になりました。かつて反逆の男を演じていたイーストウッドが
 作家となり、弱い者を見つめ続けてきた足跡に共感を覚えます。「ブロークバック・マ
 ウンテン」は繊細な感受性を持った現代の西部劇でした。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)ボクの大事なコレクション
  2位)太陽
  3位)ブロークン・フラワーズ

  ベスト10を選ぶと、なぜかこれらの愛する作品がはみ出してしまいます。私は建前
 主義という病気に冒されているのかもしれません。

 【2月のベスト】
  ほとんど見ていないので棄権します。

★ジャンクハンター吉田さん(映画秘宝.com 編集長)―――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)スポンジボブ/スクエアパンツ・ザ・ムービー
  2位)007/カジノ・ロワイヤル
  3位)テキサス・チェーンソー ビギニング

  全米で放送が始まった当時から応援していたスポンジボブが劇場版としてスクリーン
 で鑑賞できたことに感激。カジロワは冒頭のアクションから惹き付けられるが、常に緊
 迫感度良好な展開が良かった。キン●マ拷問はなぜ、裸にして縛り上げなきゃいけんの
 か理解に苦しむがアレはアレで大笑い。テキチェンはリー・アーメイ教官の教えは絶対
 との教訓が胸に痛いほど刻まれるし、チェーンソーで肉もビシバシ刻みまくられる救い
 ようない良作。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)デビルズ・リジェクト
  2位)ファイナル・デッドコースター
  3位)ブロークバック・マウンテン

  商業主義が前面に出されたハリウッドへアンチテーゼをぶつけてくれたロブ・ゾンビ
 の答えが本作だったんじゃないかと思う。まだこんなカッコ良いニューシネマが撮れる
 映画監督がいるっつうだけでも掘り出しモン。2位)はヒロインのメアリーが突出した
 輝きを放っていたのが具現化し、今後確実に売れる女優となるでしょう。3位)はゲイ
 映画と勘違いする輩が多い中、好きになったら男女の関係はないんだと恋愛ボーダレス
 さを魅せてくれた。

 【2月のベスト】
  1位)DOA デッド・オア・アライブ
  2位)ピンチクリフ・グランプリ
  3位)スターフィッシュホテル

  コリー・ユンは『クローサー』でもそうだったが女性をアクション要素含ませて撮ら
 せたら最高の監督なのは間違いない。格闘技ゲームの実写化だが、無駄にビーチバレー
 のシーンが入っている理由はDOAキャラを使ったビーチバレーゲームが出ているから
 +ゲームメーカーのテクモのプロデューサーの強い意向があったかららしい。ちなみに
 このプロデューサーは去年秋に女子社員からセクハラで訴えられたけど事の顛末は一体
 どうなったんだろ!?

★高崎俊夫さん(編集者)――――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)楽日
  2位)百年恋歌
  3位)ヨコハマメリー

  ツァイ・ミンリャンは過激な『西瓜』もいいが、力を抜いて<映画>そのものの魂と
 向きあったような『楽日』をあえて推したい。韓国映画の攻勢によって、近年、忘れら
 れがちな台湾映画だが、この二本の傑作を前にすると、やはり格の違いは歴然としてい
 る。『百年恋歌』の冒頭のエピソード、とりわけ「煙が目にしみる」が流れている<時
 間>はほとんど悠久とさえ感じられた。そして、かつて、このスタンダード・ナンバー
 を恐るべき場面で引用し、鮮烈な印象を与えた『恐怖分子』のエドワード・ヤンの長い
 不在が、あらためて気にかかる。『ヨコハマメリー』は、『市民ケーン』を想起させ
 る、真摯に対象へと接近していく姿勢が、ラストの名状し難い感動を生み出したのだと
 思う。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)ストロベリーショートケイクス
  2位)闇打つ心臓
  3位)2番目のキス

  1970年代末から80年代にかけて自主映画を牽引した、ほぼ同世代の監督たちの愛し
 い新作が並んだ。矢崎は『風たちの午後』から引きずっている女性たちの抱えるオブ
 セッションというモチーフを、より成熟した繊細な手つきで鮮やかに掬いとっている。
 長崎も過去の自作の八ミリ傑作をリメイクするというきわどい試みながら、<記憶と現
 在>という切実な地平が、徐々に視界に浮上してくる語り口がすばらしい。『2番目の
 キス』は、差別ネタで過剰なまでに露悪的な笑いをふりまいてきたファレリー兄弟が、
 初めてアメリカ映画のジャンルの王道・スクリュー・ボール・コメディに挑んだ小傑
 作。この映画で疾走するドリュー・バリモアは『レディ・イヴ』のバーバラ・スタン
 ウィックのように美しい。

 【2月のベスト】
  ●孔雀 ―我が家の風景―
  ●ドリームガールズ
  ●不機嫌な男たち

  『孔雀』は、キャメラマン出身らしい演出家クー・チャンウェイの才気走った映像感
 覚にもかかわらず、どこかピエトロ・ジェルミやレナード・カステラーニのような
 1950~60年代のイタリアの庶民映画を彷彿とさせる。ニン・インの新作『無窮動』
 が、初期のロッセリーニ的なドキュメンタリズムから、マルコ・フェレーリを思わせる
 バロック的な耽美主義へと変容したように、近年の中国映画のある種の才能はイタリア
 映画の影響を顕著に受けているのだろうか。ヒロインのチャン・チンチューはチャン・
 ツィイーよりもはるかに魅力的で、この一作でブレイクは間違いなしだと思う。

★高橋諭治さん(映画ライター)―――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)ミュンヘン
  2位)ヒストリー・オブ・バイオレンス
  3位)紀子の食卓

  殺伐としたバイオレントな内容の傑作が多かった、というのが昨年の大まかな印象。
 なかでも『ミュンヘン』『ヒストリー・オブ・バイオレンス』人間と暴力の関係を考察
 しつつも、“社会派”の枠を軽々とはみ出す異様な迫力がみなぎっていた。日本映画では
 『紀子の食卓』がダントツのインパクト。これまた現代への社会批評を加えつつも実験
 的な野心作になっていて、その詩的でグロテスクな語りの魔力に打ちのめされた。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)ハイテンション
  2位)サイレントヒル
  3位)ホステル

  個人的に最も好きなジャンルであるホラーのベスト3がこれ。最近のホラー(特にハ
 リウッド製)は残虐描写重視の作品が目立ち、正直ついていけない面もあるのだが、一
 夜の血まみれのメルヘンというべき『ハイテンション』は演出力と主演女優の魅力でず
 ば抜けていた。そのほか『ディセント』『機械じかけの小児病棟』といったヨーロピア
 ン・ホラーが収穫。そして着々とB級映画の巨匠の道を歩むデヴィッド・R・エリスの
 『スネーク・フライト』には“特別賞”を与えたい。

 【2月のベスト】
  ●あなたになら言える秘密のこと
  ●善き人のためのソナタ
  ●叫(さけび)
  ●松ヶ根乱射事件

  孤独な人々のドラマを語り続けるイザベル・コヘットの『あなたになら言える秘密の
 こと』は、長ゼリフによる“秘密”の告白シーンがあるにもかかわらず説明的になってい
 ないところがいい。一見ハッピーエンドに思えるラストにも、ヒロインの秘密の領域が
 まだ残っていることが示唆され、深い余韻を残す。『善きソナ』は、旧東ドイツの監視
 する者とされる者がたどる劇的な運命を描く良作。若手監督の語りの妙にうなる。黒沢
 清&山下敦弘は、日本映画バブルにすっかり取り残されつつある筆者の希望の星。特に
 闇の中に赤ドレスの女幽霊が浮かび上がる『叫(さけび)』は、黒沢清のフィルモグラ
 フィ中最も魅惑的な映像を獲得している。芦澤明子という撮影監督は本当にすばらし
 い。

★高村英次さん(映画ライター)―――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)ブロークバック・マウンテン(アン・リー)
  2位)父親たちの星条旗(クリント・イーストウッド)
  3位)リトル・ランナー(マイケル・マッゴーワン)

  『ブロークバック・マウンテン』はゲイの映画というよりも、自分が意図したのとは
 違う人生(恋愛)を生きてしまった男(ヒース・レジャー)の悲劇として見た。そう見
 ると物凄く切ないしやるせない。峻厳な山河が彼らの愛の営みを観照しているように思
 い、心に残った。『父親たちの星条旗』は路上をトボトボ歩いていた元英雄のインディ
 アン兵士に、『リトル・ランナー』は孝行者のエロ少年の涙ぐましい奮闘に1票を投じ
 ます。

 【2006年の裏ベスト】
  ●子ぎつねヘレン
  ●花田少年史
  ●天使の卵

  上記のように06年の裏ベストに選んだ邦画を3本並べたが、本当の裏ベストは市川
 崑がリメイクした『犬神家の一族』だ(見たのが遅かったので裏ベストでは不選出)。
 もちろん映画の完成度や<色艶>は前作に及ぶべくもない。だが変更したラストシー
 ン、老いた石坂=金田一が去っていく途中で立ち止まり、観客の我々に向って微笑む一
 瞬に胸が詰まった。「金田一耕助(作品)はこれが最後ですよ」と淋しい笑顔は伝えて
 いるようだった。

 【2月のベスト】
  ●ドリームガールズ
  ●墨攻

  ソウルやポップ・ミュージックに目がない人は『ドリームガールズ』を絶対に見なけ
 ればならない。新星ジェニファー・ハドソンの圧倒的な歌唱力に打ちのめされる、との
 巷の評判はもはや定説で、その言葉に偽りなし。作品自体も、山あり谷ありのショウビ
 ズ界の内側を巧み描いて、ミュージカルとしても上出来。片や『墨攻』は、武力衝突を
 回避もしくは最小限で終らせたい、と願う軍師アンディ・ラウの孤軍奮闘に共感させら
 れた。ココには重い戦争論と独裁者(独裁国家)の暗愚な末路が提示されている。

 【封切は終わったけれど…】
  昨年末、DVDでマルクス兄弟の『いんちき商売』(1931)を見た。原題はモン
 キー・ビジネスでハワード・ホークス監督の名作コメディ(1952)と同題名である
 が、内容は別物。豪華客船に密航したマルクス兄弟の面々がハチャメチャな騒動を巻き
 起こす。やはり客船が舞台で、一室に数十人もの乗客が詰め込まれるシーンで有名な
 『オペラは踊る』(1935)や、鏡の中の人物になって相手と同じ扮装&ポーズをして
 笑わせる『我輩はカモである』(1933、我々日本人にはドリフターズのコントで御馴
 染み)、相手の帽子をしつっこく獲り続けたり、「トゥティ・フルーティ・アイスク
 リーム!」と同じフレーズを繰り返して相手をケムに巻く『マルクス一番乗り』
 (1937)に比べると、『いんちき商売』はアナーキーではあるが、笑激度が弱い気が
 する。だがその中で、一切喋らずにナンセンスかつ暴力的な狂態を見せるハーポが出色
 (グルーチョも良いのだが、Wミーニングや時事ネタいっぱいの彼の台詞が十分に訳さ
 れていないので、ジョークの良さがもうひとつ伝わらない)。話は飛ぶが、今人気の漫
 才コンビ「タカアンドトシ」のボケ役のタカって、ハーポに感じが似てるなぁ、と見る
 たびに思う。もちろんタカは喋りますがね…。因みにタカ(とトシも)は北海道出身の
 バリバリの道産子で、彼がアメリカ人のハーポに似てるなんて変に決まってるが、コレ
 をトシが聞いたらきっと「欧米かッ!」て突っ込むでショウ。

★滝本誠さん(評論家)―――――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)ハード・キャンディ
  2位)ニューヨーク・ドール

  ぼーと思い出すと、この2本があたまに浮かびました。昨年はジョニー・トーの遅す
 ぎた発見につきます。

★田中千世子さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)ブロークバック・マウンテン
  2位)カポーティ
  3位)鉄コン筋クリート

  『ブロークバック・マウンテン』のロマンティックな感動は一生忘れない。『カポー
 ティ』はすごい傑作だと思う。『鉄コン筋クリート』は日ごとに感動がつのる。特に私
 が自転車事故で肋骨を4本5箇所折ってから個人的な思いが加わってクロとシロに対す
 る愛情が深まるばかり。

 【2006年の裏ベスト】
  年間裏ベストのことはどうもあまり真剣に考えられないのでパスです。

 【2月のベスト】
  ●ドリームガールズ

  娯楽度満点。登場人物がそれぞれ魅力がある。それでいてくどくないのがいい。なか
 でも新人のジェニファー・ハドソンが素晴らしい。歌がうまく、存在に迫力がある。

★暉峻創三さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)グエムル -漢江の怪物-
  2位)マクダル パイナップルパン王子
  3位)小さな恋のステップ

  映画が今という時代と真正面から切り結べることを身を賭して実証した『グエムル』
 と『マクダル』。一方『小さな恋のステップ』は、イ・ナヨンという女優の映画的魅力
 を初めて銀幕上に全面開花させた監督の演出力を評価。

 【2006年の裏ベスト】
  ●親友
  ●ガレージ
  ●イザベラ

  集計外となることを承知の上で、07年に劇場公開が何としてでも望まれる06年非商
 業上映作を選出。タイ映画『フェーン・チャン』の6人組監督の1人の単独デビュー作
 『親友』(アジアフォーカス福岡映画祭)、インドネシア・ガレージ・ミュージックの
 鋭利な魅力満載の『ガレージ』(東京国際映画祭)、王家衛の次を担う香港の旗手・彭
 浩翔の『イザベラ』(同)、いずれも正式公開すれば日本のアジア映画マーケットに新
 たな可能性を切り開けるはず。

 【2月のベスト】
  ●孔雀 ―我が家の風景―
  ●不機嫌な男たち

  『紅いコーリャン』等の撮影監督・顧長衛の監督デビュー作『孔雀』は、近年の中国
 映画界が誕生させた最大の驚愕。ワンショットごとの自在な展開の衝撃だけで全編を見
 せきる。『不機嫌な男たち』は、東京国際で『可能なる変化たち』の題で上映され、当
 時の読売新聞・土屋好生、映画監督・万田邦敏、映画批評家・北小路隆志の各審査員満
 場一致の絶賛を得て最優秀アジア映画賞に輝いた作品。

★永野寿彦さん(シネマ・イラストライター)―――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)007/カジノ・ロワイヤル
  2位)スーパーマン・リターンズ
  3位)鉄コン筋クリート

  10本でも厳しいのに3本はさらに厳しい。というわけで、『スーパーマン・リター
 ンズ』以外は12月公開の新しめの作品になってしまった。基本的にまず問答無用のエ
 ンタメであること、それにプラスアルファーの何かがあることを基本に選んでみまし
 た。入れ替え可能の表ベスト作品は以下の通り。『硫黄島からの手紙』『フラガール』
 『嫌われ松子の一生』『クラッシュ』『カーズ』『UDON』『16ブロック』『ミュン
 ヘン』などなど。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)ブラック・ダリア
  2位)グエムル -漢江の怪物-
  3位)時をかける少女

  これが表でも問題はないんだけれど、趣味的に大好きな映画たちということであえて
 裏に。デ・パルマに怪獣映画、細田アニメとどれも趣味的ながらも傑作ぞろい。『グエ
 ムル』がキネマ旬報3位になるほど高く評価されたのは意外だけど……。こちらの入れ
 替え可能の裏ベスト作品は以下の通り。『Vフォー・ヴェンデッタ』『ナチョ・リブレ 
 覆面の神様』『ブラックキス』『SPIRIT』『プロデューサーズ』『サイレント・ヒ
 ル』などなど。

★西脇英夫さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)硫黄島からの手紙
  2位)クラッシュ
  3位)イノセント・ボイス 12歳の戦場

  1位)は、誰もが認める傑作で、多分、昨年のナンバーワンになることは間違いない
 だろう。日本映画といっても通りそうな見事な仕上がりに、むしろ驚きを覚えた。
 2位)はなんと言っても脚本が素晴らしく、それを支えた演出と演技のコラボレーショ
 ンが作品に圧倒的な力を与えている。3位)は、これほど悲しく痛ましい作品もなく、
 見ていてとてもつらいが、それだけに訴えてくるものは大きい。これこそ映画でしか伝
 えられない現実性の重みだ。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)ミュンヘン
  2位)ココシリ
  3位)麦の穂をゆらす風

  「M:i:III」「007/カジノ・ロワイヤル」「パイレーツ・オブ・カリビアン/
 デッドマンズ・チェスト」の3強エンタテイメントを選びたいところだが、まじめに3
 強シリアス路線をとりあげた。1位)の、批判を覚悟の上で、勇気を持って挑んだ作品
 づくりを、2位)の、命がけの撮影と俳優たちの涙ぐましい努力、そして、この驚くべ
 き事実の提示を、3位)の、いつもながらの監督の誠実な製作態度と、歴史の非情さを
 客観性を持って訴えたメッセージ性を、いずれも高く賞賛したい。

 【2月の表ベスト】
  1位)ドリームガールズ
  2位)孔雀 ―我が家の風景―
  3位)不機嫌な男たち

  1位)は、モータウン・サウンドのブラックパワーが炸裂する、ご機嫌なブロード
 ウェイ・ミュージカル。歌や踊りも勿論だが、出演者たちの見事な演技と存在感が素晴
 らしい。2位)は文革が終わり、新しい時代へ踏み出そうとする中国の下町の家族を、
 温かく、ときに辛らつに、クールに描いた年代記。見終わったとき、なんともいえない
 爽やかさが伝わってくる。3位)は韓国アート・フィルムの傑作。登場人物のほとんど
 が無気力でアンニュイなのだが、それでいていとおしく感じてしまうのは、なにゆえな
 のか。

 【2月の裏ベスト】
  1位)パパにさよならできるまで
  2位)世界最速のインディアン
  3位)長州ファイブ

  1位)は、素直に作られたギリシャ製の、母子家族を主題としたハートウォーミン
 グ・ドラマ。ややお涙頂戴だが、観客の方も素直に見るべし。2位)は、小品だがジジ
 イのクソ力をみせつける、スピードレース・ドラマ。全体はロードムービーの作りで、
 レースそのものより、旅の部分の方がはるかに面白い。これは好みだろうが、主演がミ
 スキャストのように思える。もちろん、アンソニー・ホプキンズは名優だが、もっと素
 朴で、フツーの俳優がやっていたら、傑作になったかも。3位)は、出来はともかく、
 最近の日本映画の中で、珍しく志し高く、思い切って作ったといえる、幕末の改革児を
 描いた歴史劇。いつまで難病悲恋物語ばかり作り続けていれば気が済むんだ。こういう
 作品がもっと作られるべき!

★野村正昭さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  ●雪に願うこと
  ●間宮兄弟
  ●ゆれる

  10号目だというのに、まだ<表>と<裏>との踏んぎりが自分の中ではついておら
 ず、思い悩んだあげくに、この3本を挙げてみました。「間宮兄弟」は<裏>かもしれ
 ないし。誰に勧めても賛同されるというタイプの作品ではないしなあ…。まあ、いい
 や。「父親たちの星条旗」や「硫黄島からの手紙」はたまた「グエムル-漢江の怪物-」
 「ミュンヘン」あたりを挙げるべきかもしれませんが、これは当り前すぎて、ここでは
 取り下げました。

 【2006年の裏ベスト】
  ●ラブ★コン
  ●太陽
  ●時をかける少女

  「ラブ★コン」は、ひとえにヒロイン藤澤恵麻の魅力ゆえに。「嫌われ松子の一生」
 の中谷美紀も顔負けのコメディエンヌぶりに対して。元旦に発売されたDVDも、ため
 つすがめつ見ています。「太陽」のイッセー尾形の素晴らしさにも圧倒されましたが、
 これは<表>に回すべきだったかなあ。「スネーク・フライト」や「スカイ・ハイ」
 「ダイヤモンド・イン・パラダイス」あたりも、頭の中では、ひしめいています。

 【2月のベスト】
  ●世界最速のインディアン
  ●フリージア
  ●素敵な夜、ボクにください

  全然期待せずに見た「世界最速のインディアン」は、実在した人物というアンソ
 ニー・ホプキンスの愛すべきキャラクターに。「フリージア」は昨年の「紀子の食卓」
 に続いて、つぐみの無機質でメタリックな個性の中から、ひょいと垣間見える凶暴な味
 わいに。「素敵な夜、ボクにください」は昨年の「シムソンズ」みたいなカーリングを
 題材にしたコメディですが、前半のヒロインへの違和感が、それ自体伏線になっている
 点で中原俊の演出は見事。

★増當竜也さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)硫黄島からの手紙
  2位)長い散歩
  3位)春がくれば

  洋画は海外での日本人俳優の活躍が嬉しかった年です。戦争映画好きとしては『硫黄
 島からの手紙』以上の戦場映画は、もう生きているうちには観られないかもというほど
 感銘を受けました。邦画は大収穫の年で、3本でも30本でも入りきりません。『長い
 散歩』もその一本ですが、久々緒形拳に哭きながら日本映画の良さを満喫しました。
 『春がくれば』は独身中年男には染みて痛い映画。韓国映画は公開本数が増えた分ハズ
 レもありますが、腹が立ったものがないのは我ながら不思議なほどで、そこが邦画と違
 うところかな(邦画は出来不出来の激しい玉石混淆の年でもあったと思います)。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)ゲド戦記
  2位)日本沈没
  3位)猫目小僧

  2006年の邦画の大きな特徴に、アニメーションと特撮ものの飛躍もあったことは強
 調したい点です。『ゲド戦記』の青春の彷徨とその痛みこそは現代に通じるものとし
 て、断固私は支持します。『日本沈没』もオリジナルのファンとしては心情的に、よく
 やってくれたというものでした。そして『猫目小僧』、お下品でも不快にならない映画
 が私は大好きです。井口昇監督は文芸H映画『卍』も良かった。Hといえば『紅薔薇夫
 人』の坂上香織は綺麗だったなあ。可愛いレズもの『LOVE MY LIFE ラブ・マイ・ラ
 イフ』の吉井怜も良かった。『機動戦士Zガンダム』劇場版3部作もラストはH礼賛で
 したね。『パプリカ』には萌えました……。書き出したらもう止まらなくなりそうです
 ので、このへんで。

 【2月のベスト】
  ●ピンチクリフ・グランプリ
  ●墨攻

  『ピンチクリフ・グランプリ』はリバイバルですが、必見のノルウェー製人形カー・
 アクション・レース・アニメーション。私は28年前の初公開時にロードショーで運良
 く観ましたが、ほのぼのとダイナミズムを融合させたカーレースの妙は、今のただ速い
 だけで芸のないアクション演出とは一線を画しています。『墨攻』は裏ベスト的なもの
 ですが、非攻という精神に曳かれるものがあります。日本を含むアジアが一体となって
 の製作体制にも好感を覚えました。

★まつかわゆまさん(シネマアナリスト)―――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)グッドナイト・アンド・グッドラック
  2位)麦の穂をゆらす風
  3位)花よりもなほ

  06年はアメリカ中間選挙の年ということでオスカーからカンヌから社会派映画のオ
 ンパレードでした。とにかくブッシュにダメージを与えてアメリカの方針を変えさせな
 いことには世界ったら危なくってしようがない、ということ。その中で、映画人がそれ
 ぞれ志をもって伝えようとした作品を。各地域ひとつずつ代表ということで。もっと入
 れたいのもあるけどね。一位は愛しのジョージががんばったけれどアカデミー逃し、残
 念賞で。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)トンマッコルへようこそ
  2位)フラガール
  3位)グエムル -漢江の怪物-

  単純にベストに入れたかったものをこちらで続けたということで。まだまだあるけ
 ど、あえていえばこちらは後味の良さが共通点かな。希望はあるぞ、それは人間だぞ、
 どどんがどん。ということでどうでしょ。

 【2月のベスト】
  ●ドリームガールズ
  ●あなたになら言える秘密のこと
  ●魂萌え!

  とにかく試写が見られなくて。すみません。そのなかから自分の人生を切り開くこと
 にしたヒロインものを三本選んでみました。バックステージものに、ブラックミュー
 ジック史をからめ、売れ線とアートの葛藤も盛り込んだ「ドリームガールズ」はいろん
 な見方ができて面白かったし、エフィ役の子がうまくて聞かせて、お得な一本という感
 じでした。

★皆川ちかさん(ライター)―――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)うつせみ
  2位)ホテル・ルワンダ
  3位)イカとクジラ

  映画という“つくりごと”と、“こちらがわ”の境界を打ち壊しかねない力強さにびびり
 ました。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)紀子の食卓
  2位)ゆれる
  3位)ストロベリーショートケイクス


  地方都市の、書き割りではないリアルな閉塞感が息づまるほど感じられてきます。

 【2月のベスト】
  ●孔雀 ―我が家の風景―
  ●ピンチクリフ・グランプリ
  ●フリージア

  「孔雀 ―我が家の風景―」:悲しくなるほどせつないです。
  「ピンチクリフ・グランプリ」:打ち上げとかしないレオドルは、本当にカッコい
 い。
  「フリージア」:ヒロシ君とヒグチさんがあまりにかわいくて……。

★みのわあつおさん(ポップ・カルチャー評論家)―――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)インサイド・マン
  2位)悪魔とダニエル・ジョンストン
  3位)ハッスル&フロウ

 【2006年の裏ベスト】
  1位)ナチョ・リブレ 覆面の神様
  2位)40歳の童貞男
  3位)ピンクパンサー

 【2月のベスト】
  1位)ドリームガールズ
  2位)DOA デッド・オア・アライブ
  3位)Gガール 破壊的な彼女

  『ドリームガールズ』は、どこをどう観ても、60年代のシュプリームスとモータウ
 ンのお話。いつかしてモータウンが、今日の黒人音楽の隆盛の基盤を作ったか、という
 エピソードは、もう観ててわくわくします。『DOA』は、おねぇーちゃんたちのド
 ロップキックが素晴らしい。足の伸び方も打点の高さもね。それと『燃えよドラゴン』
 へのリスペクトがうれしです。『Gガール 破壊的な彼女』は、性格の悪いスーパー・
 ヒロインという設定がいい。脚本家は、『ファンタスティック・フォー2』の脚本家
 チーム。楽しみです。

★宮城正樹さん(映画&音楽の批評・分析家)―――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)紙屋悦子の青春
  2位)トンマッコルへようこそ
  3位)硫黄島からの手紙

  コレが遺作になると分かって撮った1位)は、低予算の中で溝口健二ばりの長回しを
 多投し抑制演技の張り詰めた演出力で、まさにオンリー・ワンな逸品。今までに観たこ
 とがない映画という言い方は映画の110年史を否定する論評だと思う。だから、1本の
 映画から多彩な過去の作品が見えてくればくるほど、僕の個人的な点数は高くなる。2
 位)と3位)は100本以上が見えてきた。映画の積み重ねってヤツだ。映画に国境はな
 いことも強く感じた2作。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)武士の一分
  2位)ジャーヘッド
  3位)フラガール

  100点満点の模範解答を僕は映画に求めていない。「え?」「何か分からんけど凄い
 なあ!」の方が100年後にも残り皆に見続けられる作品では。例えば『2001年宇宙の
 旅』とか。1回観れば完結(完璧)してしまうから繰り返しは?な1位。2位)は作品
 賞を取るはずだったのに内容で候補にも挙がらず、06年のアカデミー賞を混戦にした
 作品。3位)は『紙悦』とは真逆のハイな押せ押せ演技に終始圧倒された。『カルメン
 故郷に帰る』的な松竹大船調喜劇。

 【2月のベスト】
  1位)ドリームガールズ
  2位)世界最速のインディアン
  3位)バブルへGO!! タイムマシンはドラム式

  レコード会社モータウンの実話を基にした1位)は、短いカットの連続で映像的にも
 ダンサブルなリズム感を作っているのに衝撃を覚えた。2位)はアメリカン・ニューシ
 ネマノリの中盤の、ロードムービー・タッチに震えたシニアも頑張るぞ映画。『老人と
 海』的な執念を感じる。3位)は映画史上初の過去改ざん系のタイムマシン映画で、現
 在の記憶と塗り変わった過去の記憶のつじつま合わせを無視した展開が立派! 心のハ
 テナ・マークは笑って許せる。

★宮崎祐治さん(イラストレーター)―――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)武士の一分
  2位)ブロークバック・マウンテン
  3位)ユナイテッド93

  映画を見た後、いつまでも反芻するように後味を楽しんだ3本。映画を見てそれで原
 稿をかく仕事が多くなって、目の前を作品がどんどん通過していく感覚(いけない)。
 若い頃の映画への愛に戻れるか。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)ルート225
  2位)リトル・ランナー
  3位)リトル・イタリーの恋

  あまり人に、教えないようにしている愛すべき佳作。きっとベストテンとかに選ぶ人
 はいないだろう。でも誉めたり、書いたりする人がいたら、その人が少し好きになると
 思う。

 【2月のベスト】
  ●ドリームガールズ
  ●孔雀 ―我が家の風景―

  『ドリームガールズ』は、音楽の、そして歌のちからに圧倒される。ビヨンセがすご
 いのは当然だけれど、ジェイミー・フォックスやエディ・マーフィも魅力的に歌う。そ
 して何よりジェニファー・ハドソンの歌に引き込まれる。リハから本番に流れ込んでい
 く演出はミュージカル映画の至福の時間。チャン・イーモウやチェン・カイコーからロ
 バート・アルトマンとまで組んできた撮影監督の雄クー・チャンウェイの初監督作『孔
 雀―我が家の風景』は、映像で語る文体。さすがにただファインダーを覗いているだけ
 ではなかった。人間をみている。

★森直人さん(ライター)――――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)嫌われ松子の一生
  2位)僕のニューヨークライフ
  3位)ロシアン・ドールズ

  ハイブリッドな映画表現の最新形であり、恐ろしいほどのエネルギーの噴出があった
 『松子』はとにかく衝撃でした。下2作は、共に物書き男子の葛藤の映画なので
 (笑)。

 【2006年の裏ベスト】
  1位)カーズ
  2位)グエムル -漢江の怪物-
  3位)悪魔とダニエル・ジョンストン

  「裏」にしなくてもいいんですが……いずれも映画表現の水準を更新してくれた作品
 です。

 【2月のベスト】
  ●ピンチクリフ・グランプリ
  ●ピクシーズ ラウド・クァイエット・ラウド
  ●ドリームガールズ
  ●さくらん
  ●カインの末裔

  『ピンチクリフ~』は『カーズ』と二本立てで観たい。あとは音楽モノの傑作2つ
 と、注目の日本映画2つ。

★山田宏一さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  裏表なしに順不同で二種類のベスト3を挙げさせていただきたいと思います。
 A
  1位)ブラック・ダリア(ブライアン・デ・パルマ監督)
  2位)プルートで朝食を(ニール・ジョーダン監督)
  3位)メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬(トミー・リー・ジョ-ンズ監督)

 B もうひとつのベスト3として――
  1位)プージェー(山田和也監督)
  2位)天空の草原のナンサ(ビャンバスレン・ダバー監督)
  3位)ツヒノスミカ(山本起也監督)

  A-1位)は映画館でもういちど見て、ブライアン・デ・パルマ監督の最高傑作と確
 信。口を裂かれて惨殺された女のイメージにつらなるコンラート・ファイトの『笑ふ
 男』の映画的引用の見事さ。
  A-2位)は『ギャンブルプレイ』に次ぐニール・ジョーダン監督の快作。アイルラ
 ンドの爆弾テロのさなか、チャーミングなスーパーオカマの『クライング・ゲーム』的
 ギャンブルプレイをプルート(冥王星)の惑星からの降格にイメージしたとも言えそう
 なコメディー。
  A-3位)はTVコマーシャルで八代亜紀の歌に泣く怪優トミー・リー・ジョーンズの
 初監督(かと思われる)作品。もちろん主演も。すばらしい。サム・ペキンパー監督の
 『ガルシアの首』以来の現代西部劇の傑作かもしれない。

  B-1位)はモンゴルの草原の少女プージェーに、B-2位)は同じモンゴルの草原の一
 家と「黄色い犬」ツォーホルに、すべての感動が集約されたロバート・フラハティ的生
 活ドキュメンタリー(1は衝撃的なまでに生々しい山田和也監督の日本映画、2はより
 劇化されたビャンバスレン・ダバー監督のドイツ映画)。B-3位)はしみじみと笑える
 「ばあちゃんの80回目の夏」を描いた山本起也監督の親密感あふれる記録。

 【2月のベスト】
  ●世界最速のインディアン

  アメリカ原住民をインディアンとよぶのはいまや差別語になっているはずだが、と
 思ったら、これは孤独な長距離ランナーのネイティヴ・アメリカンでなく、「インディ
 アン・スカウト」というバイク(エンジン付自転車)のこと。製作・脚本・監督のロ
 ジャー・ドナルドソンは『バウンティ 愛と叛乱の航海』『追いつめられて』『ゲッタ
 ウェイ』などリメークの名手。主演のアンソニー・ホプキンスは『羊たちの沈黙』など
 の饒舌な名優。ひそかに思う――クリント・イーストウッドの監督・主演だったら素晴
 らしかったのに!!

  【封切は終わったけれど…】
  フランス映画ならではの繊細な情感あふれるステファーヌ・ブリゼ監督の『愛される
 ために、ここにいる』――こんな素敵な「大人の恋愛映画」(などという言い古された
 紋切り型の表現でも心をこめて使いたくなる)に出遭えるとは!  恋が「美しい感
 情」であることを久しぶりに思い知らされる。ダンス教室が舞台になるので日本映画
 『Shall we ダンス?』とそのリメークのアメリカ映画に比較されて損をしているにち
 がいないけれども……必見。

★渡部実さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――――

 【2006年の表ベスト】
  1位)あの鷹巣町のその後
  2位)蟻の兵隊
  3位)ヨコハマメリー
  次点 ●六ヶ所村ラプソディ ●ダーウィンの悪夢

  2006年の日本映画、外国映画ともにドキュメンタリー映画が印象に残った一年でし
 た。これは何も2006年に限ったことではなく、ベストテンの季節に、その年の映画か
 ら印象に残った作品をふるいにかけると、社会を直裁に撃つドキュメンタリー映画が最
 後まで残ります。邦画では「あの鷹巣町のその後」「蟻の兵隊」「ヨコハマメリー」
 「六ヶ所村ラプソディ」、洋画では「ダーウィンの悪夢」などがありました。もっとも
 大学生たちも劇映画はよく見るのですが、ドキュメンタリー映画にはあまり接していな
 い人達もいるので、これからの授業でもドキュメンタリー映画の魅力を積極的に伝えよ
 うと思っています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣編集後記┫
◆浦崎浩實さんからプレゼント
日本最南端の地の歴史ある文芸同人誌が暮れに刊行。私も批評小説(?)を寄稿。読みた
い奇特な方、先着8名に献呈します。
文芸同人誌は「邂逅」(第15号)といいます。数年に1回刊行してますが、第16号を続
けて出すらしく、原稿の召集がもうかかっています。A5版型、200ページ弱。
定価1050円を無料で、送料当方負担で先着8名さまに献呈。内容は、小野十三郎(とう
ざぶろう)賞受賞の実力派詩人から自称(?)作家まで、沖縄石垣島在住ないし出身者が
腕によりをかけ、詩、短歌、エッセイ、創作を競っています。浦崎は「オレステスのよう
に…」という批評小説を寄稿。姉エレクトラに煽動され、姦通したわが母クリテムネスト
ラを殺害したオレステス。わが内なるオレステスが3千年の時空を飛び交う気宇壮大な
(笑)内容ですが、くれぐれも読んで落胆しないように。
※ご希望の方は、送付先を明記の上、メルマガ「試写室だより 封切はこれからだ!」の
ご意見・ご感想アドレスorブログ「試写室だより ただいま編集中!」の<メッセージを
送る>をご利用ください(http://plaza.rakuten.co.jp/fromregard)。

◆手作りの媒体にて、プロの映画評論家の方々に多数ご参加いただいての年間ベストをや
れるなんて、嬉しいなんてもんじゃありません。特に、読者の皆様には【裏ベスト3】の
ユニークな面白さを楽しんでいただけることと存じます。心残りは、スクロールダウンし
か出来ないメルマガの性格上、ベスト10アンケートではなく3にとどめざるを得なかっ
たことです。というわけでプレ創刊号から第八号まで、ベスト10なら選出されたかもし
れない、裏と表と総合で月間第1位になった選外作品をあげてレクイエムといたします。
ちなみにプレ創刊号~第十号までの裏と表のベストはホームページにバックナンバーとし
て載ってますので、今一度ご参照ください。なんちゃって、ベストワンは隠しておりま
す。

『SPL 狼よ静かに死ね』『グッドナイト&グッドラック』『Vフォー・ヴェンデッタ』
『ピンクパンサー』『ココシリ』『バルトの楽園』『フーリガン』『ティント・ブラスの
白日夢』『カサノバ』『トランスポーター2』『ゆれる』『2番目のキス』『ハチミツと
クローバー』『ユナイテッド93』『マッチポイント』『マイアミ・バイス』『紀子の食
卓』『カポーティ』『トンマッコルへようこそ』『涙そうそう』『ブラック・ダリア』
『プラダを着た悪魔』『キング 罪の王』『あるいは裏切りという名の犬』『犬神家の一
族』『ダーウィンの悪夢』『ダニエラという女』

個人的に2006年の印象的な作品は、宮崎キャラを使いながら、実は高畑アニメをやりた
かったんじゃないかと妄想させた『ゲド戦記』。宮崎吾朗監督が、信州大学農学部森林工
学科卒で、公園緑地や都市緑化などの計画・設計に従事ってあたりもなんか高畑監督的な
ものを感じたのですが、ジブリ知らずのいいかげんな感想であります。『ヨコハマメ
リー』はウディ・アレンの『カメレオンマン』を思わせ、ドキュメンタリーによって、逆
に劇映画における感動的な演出とは何かを教わった気がいたします。『クレヨンしんちゃ
ん 伝説を呼ぶ 踊れ!アミーゴ!』は『グエムル』よりよかった。『超劇場版ケロロ軍
曹』もなかなか。『ココシリ』はフランスの犯罪映画風でそうとうよかった。『カジノ・
ロワイヤル』よりも『タイフーン』と『スパイモンキー』が007してて好き。(れがあるF)

◆あけましておめでとうございます。延々と続くスクロールの手間をもいとわず、こんな
最後のところまで読んでくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。先日、テレビニュース
で、杉村太蔵&武部勤が率いる夕張視察団の様子を見ましたが、住民の神経を逆撫でする
ようなお気楽ぶりに呆れ返ってしまいました。HPのプロフィール欄の、塩田時敏さんの
ところに「ゆうばりファンタスティック映画祭が再始動」とあります。すごいぞ夕張! 
成功を祈ります!(れがあるU)

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■発行日:2007年1月30日
■発行者:れがある http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest
■定 価:315円(税込)
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