×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

ヘッダーイメージ 本文へジャンプ
2007年3月号

〓〓〓試写室だより 封切はこれからだ!〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓第十一号〓〓〓

     映画を見るプロが選ぶ、表ベスト映画&裏ベスト映画
        ∴・∴・∴2007年3月封切り篇∴・∴・∴

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【表ベスト】これぞまぎれもなく、映画を見るプロが選んだ3月の最高作。心して見よ。
【裏ベスト】出来、不出来は二の次。偏愛あり、ヒイキの引き倒しありのアナザー・ベスト!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
INDEX(得票順/カッコ内は選者/日付は封切り日)
【表ベスト】
1位 今宵、フィッツジェラルド劇場で(秋本、稲垣、宇田川、内海、馬場、浦崎、江
   戸木、大森、加藤、河原、品田、高崎、高橋、高村、田中、野村、まつかわ、宮
   城、宮崎、山田、渡部)3月3日
   http://www.koyoi-movie.com/
2位 パフューム ある人殺しの物語(安藤、稲垣、内海、浦崎、河原、高村、まつか
   わ、宮崎)3月3日
   http://perfume.gyao.jp/
3位 絶対の愛(えいwithフォーン、黒田、塩田、高崎、西脇、皆川、森)3月10日
   http://zettai-love.com/index.html
4位 ブラックブック(秋本、江戸木、加藤、吉田、まつかわ)3月24日
   http://www.blackbook.jp/
4位 ラスト・キング・オブ・スコットランド(品田、高橋、高村、野村、まつかわ)
   3月10日 http://movies.foxjapan.com/lastking/
6位 パラダイス・ナウ(浦崎、田中、西脇、まつかわ)3月10日
   http://www.uplink.co.jp/paradisenow/
6位 ホリデイ(秋本、高村、みのわ、森)3月24日
   http://www.holiday-movie.jp/top.html
8位 二十四の瞳 デジタル・リマスター版(浦崎、品田、増當)3月3日
   http://www.shochiku.co.jp/24eyes/
8位 パリ、ジュテーム(江戸木、河原、まつかわ)3月3日 http://pjt-movie.jp/
8位 素粒子(加藤、塩田、皆川)3月24日
   http://www.espace-sarou.co.jp/soryushi/
11位 約束の旅路(えいwithフォーン、加藤)3月10日
   http://yakusoku.cinemacafe.net/
11位 サン・ジャックへの道(江戸木、まつかわ)3月10日
   http://www.saintjacques.jp/
11位 神童(加藤、高橋)春
   http://www.shindo-movie.jp/
11位 バッテリー(塩田、野村)3月10日 http://www.bt-movie.jp/
11位 許されざるもの(塩田、高崎)3月10日
   http://www.kaf-s.com/lineup/yurusazaru/
17位以下
●相棒 ─シティ・オブ・バイオレンス─(暉峻)3月10日
 http://www.aibou.info/index2.html
●あかね空(宮城)3月31日 http://akanezora.cocolog-nifty.com/blog/
●映画館の恋(塩田)3月31日 http://www.kaf-s.com/lineup/eigakan/index.html
●黒い眼のオペラ(宇田川)3月 http://www.tml-movie.jp/
●ケータイ刑事 THE MOVIE 2 石川五右衛門一族の陰謀~決闘!ゴルゴダの森(吉田)
 http://www.bs-i.co.jp/zenigatamovie2/
●ゴーストライダー(みのわ)3月3日
 http://www.sonypictures.jp/movies/ghostrider/index.html
●情痴アヴァンチュール(高橋)3月31日 http://www.jyochi.com/
●デジャヴ(西脇)3月17日 http://www.movies.co.jp/dejavu/
●ナイト ミュージアム(みのわ)3月17日
 http://movies.foxjapan.com/nightmuseum/
●ナヴァラサ(加藤)3月17日 http://www.sanmarusan.com/navarasa/
●ハッピー フィート(田中)3月17日 http://wwws.warnerbros.co.jp/happyfeet/
●日本心中 針生一郎・日本を丸ごと抱え込んでしまった男(加藤)3月3日※2002年
に一度公開済み
 http://www.interq.or.jp/leo/lgallery/default.nihon.html
●ポイント45(高橋)3月17日 http://www.point45.jp/
●ポリス/インサイド・アウト(加藤)3月31日 http://thepolice.jp/indexp.html
●マリアの受難(浦崎)3月24日
 http://www.chelucy.com/nsw/cine/maria/
●蟲師(大森)3月24日 http://www.mushishi-movie.jp/
○オール・ザ・キングスメン(まつかわ)4月
○筒井武文のワンダーランドへ(山田)1月公開済み
○NARA:奈良美智との旅の記録(加藤、皆川)2月24日 http://www.nara-movie.jp/
○ひいろ(加藤)2月24日 http://www.hiiro-movie.jp/
<○印は3月封切でないため集計の対象外です>

【裏ベスト】
1位 ブラックブック(稲垣、馬場、塩田、高崎、高橋、皆川、宮城)3月24日
   http://www.blackbook.jp/
2位 パフューム ある人殺しの物語(秋本、黒田、品田、高崎、西脇)3月3日
   http://perfume.gyao.jp/
2位 デジャヴ(稲垣、高崎、高橋、宮城、宮崎)3月17日
   http://www.movies.co.jp/dejavu/
4位 相棒 ─シティ・オブ・バイオレンス─(秋本、塩田、皆川)3月10日
   http://www.aibou.info/index2.html
4位 ナイト ミュージアム(江戸木、高村、まつかわ)3月17日
   http://movies.foxjapan.com/nightmuseum/
4位 絶対の愛(稲垣、河原、高橋)3月10日
   http://zettai-love.com/index.html
7位 超劇場版ケロロ軍曹2 深海のプリンセスであります!(安藤、増當)3月17日
   http://www.keroro-movie.net/
7位 素粒子(稲垣、河原)3月24日
   http://www.espace-sarou.co.jp/soryushi/
7位 口裂け女(宇田川、高橋)3月17日 http://www.kuchisake.com/
7位 神童(大森、森)春 http://www.shindo-movie.jp/
7位 情痴アヴァンチュール(馬場、浦崎)3月31日 http://www.jyochi.com/
7位 映画館の恋(浦崎、西脇)3月31日
   http://www.kaf-s.com/lineup/eigakan/index.html
7位 檸檬のころ(高橋、増當)3月下旬 http://www.lemon-no-koro.com/
14位以下
●キトキト!(内海)3月17日 http://www.kitokito-movie.com/
●黒い眼のオペラ(河原)3月 http://www.tml-movie.jp/
●クロッシング・ザ・ブリッジ~サウンド・オブ・イスタンブール~(江戸木)
 3月24日 http://www.alcine-terran.com/crossingthebridge/
●今宵、フィッツジェラルド劇場で(森)3月3日 http://www.koyoi-movie.com/
●渋谷区円山町(宇田川)3月
 http://www.maruyamacho-movie.com/index.html
●進め!モォトゥオ探検隊(野村)3月24日
 http://www.mmjp.or.jp/pole2/susumemoutoutankentai.html ※劇場HP
●ダウト(秋本)3月3日 http://www.doubt-movie.jp/
●棚の隅(秋本)3月17日 http://tananosumi.com/
●鉄人28号 白昼の残月(田中)3月31日 http://www.tetsujin28-movie.com/
●ネバー・サレンダー/肉弾凶器(野村)3月3日 http://www.foxjapan.com/ 
※配給会社HP
●バッテリー(えいwithフォーン)3月10日 http://www.bt-movie.jp/
●蟲師(吉田)3月24日 http://www.mushishi-movie.jp/
●約束の旅路(西脇)3月10日 http://yakusoku.cinemacafe.net/
●ラスト・キング・オブ・スコットランド(江戸木)3月10日 http://movies.foxjapan.com/lastking/
●龍が如く 劇場版(塩田)3月3日 http://www.ryu-movie.com/
○聴かれた女(山田)2月10日 http://kikaretaonna.com/
○ひいろ(野村)2月24日 http://www.hiiro-movie.jp/
<○印は3月封切でないため集計の対象外です>

【総合】
1位『今宵、フィッツジェラルド劇場で』
2位『パフューム ある人殺しの物語』
3位『ブラックブック』
4位『絶対の愛』
同列5位『素粒子』『ラスト・キング・オブ・スコットランド』

◆◇◆執筆者プロフィール、近況、著作はHPに掲載◆◇◆
   http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★秋本鉄次さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ● ブラックブック
  ●ホリデイ
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で

  映画の楽しみを堪能させてくれたこの3本! あいにく作家主義じゃないので、監督
 の名ではあまり映画を見ないが、バーホーベン、メイヤーズ、アルトマンは数少ない何
 人かだ。訃報に接し、アルトマンだけ過去形で呼ばなければならないのが残念だが、見
 事なラスト・ピクチャーだった。感傷に終わらせないのがボグダノビッチとは違うアル
 トマン流。そして“死の天使”バージニア・マドセンの艶っぽさ! 溶けそうになった
 ぜ。「ブラックブック」は“女スパイもの”の醍醐味に加えて、刺激屋、脱がし屋バー
 ホーベンの面目躍如だ。カリス・ファン・ハウテンもエロいの何の。「ホリデイ」は
 キャメロンちゃんももちろんご贔屓だが、このケイト・ウインスレットはなかなか触れ
 なば落ちんの風情あり。ジュード・ロウも女性陣には好評か。結局、最終的には俳優
 (特に女優)で見てしまうね。でも、それが何か?
 
 【裏ベスト】
  ●パフューム ある人殺しの物語
  ●相棒 ─シティ・オブ・バイオレンス─
  ●ダウト
  ●棚の隅

  表ベストからハミ出したのでこちらに回した「パフューム」は大人の寓話、として興
 味津々だった。あの悪魔的なクライマックスはやっぱり圧巻だ。テレビシリーズ「相
 棒」も好きだが、こちらは邦題だけ同じの全然関係ない韓国アクション。「友へ チン
 グ」にも似ているが、どこか往年の日活映画(「縄張りはもらった」「流血の抗争」な
 ど)の匂いも嗅げて悪くない。「ダウト」は“ユージュアル・サスペクツ”的サスペンス
 だが、“サイコ”じゃないレイ・リオッタの味と、“陽炎の女”ジョリーン・ブレイロック
 のエロスが格別。邦画はいまひとつが多かったので(期待した「アンフェア the
 movie」も雪平夏見=篠原涼子がテレビよりお行儀良くてガックリ)、小品の「棚の
 隅」をすべり込ませた。元妻役のヒロイン内田量子(新人)がボクの好みじゃ。こちら
 のリョウコもよろしく!

 【封切は終わったけれど…】
  ごひいき栗山千明主演なのに見逃していた「エクステ」をやっと。監督が苦手な園子
 温だからなあ、が見遅れた一因かも。これがなかなか魅せる。やっと“商業監督”になっ
 てくれたか。珍しくマトモな役の千明クンも逆に新鮮。あの魅惑の三白眼にはゾクゾク
 する。そして、「棚の隅」では小市民、「アンフェア」では傲慢なエリートを演じて相
 変わらず守備範囲が広い大杉漣サンは久々に“ド変態”を喜々として演じてくれている。
 ピンク映画時代に取った杵柄はダテじゃないのだ。ちなみにボクはサラサラ・ロングヘ
 アが必ずしも美しいとは思えないタチ。スポーティでマニッシュなショートカット美女
 が愛しい。

★安藤智恵子さん(ライター)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●パフューム ある人殺しの物語

  ヘンな映画! 究極の香水を作るため次々と女をあやめる連続殺人鬼の話だが、敢え
 てジャンル分けするならサイコ・ファンタジーとでもいうべきか。腐った生ゴミから、
 処女の体臭まで、画面に映るあらゆるものの臭い/匂いが、リアルに嗅覚を刺激してく
 る。こんな映像体験は初めて。『チャーリーとチョコレート工場』の“におい付き上
 映”は何だったんだ(笑)。クライマックスの○○シーンは実に壮観です……ドン引き
 ギリギリだけど!
 
 【裏ベスト】
  ●超劇場版ケロロ軍曹2 深海のプリンセスであります!

  まだ見てないですぅ~。けど絶対おもしろいに決まっているであります。クーックッ
 クック。

 【封切は終わったけれど…】
  『ボビー』。アカデミー賞に敢闘賞を新設し、脚本・監督・出演のエミリオ・エステ
 ベスに差し上げたい。癖のある俳優ばかり20何人も、よくぞ使いこなした。娯楽性に
 ついてもメッセージ性についても私なんぞが言うことなし、でもひとつだけ。閉鎖され
 た炭坑の町を視察するボビー・ケネディのニュース映像が挿入される。そこで彼の話す
 言葉といったら……同じ元炭坑でも、どこかの誰かの夕張“視察”とは雲泥の差、まった
 く比べ物にならん! 情けなくって涙が出、映画鑑賞の妨げになってしまいましたよ、
 まったく。

★稲垣都々世さん(映画評論家)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●パフューム ある人殺しの物語
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で

  例によって、見ている作品が少なくて、選ぶのがはばかられるのだが……。「薔薇の
 名前」は単に物語を語るだけで<内容>がついてきたが、「パフューム」は<内容>が
 内容だけに薄味だと思われやすい。<匂い>を映像化するのは難しいし、その効能を信
 じさせるのはもっと大変だが、よくやっていると思う。見るべきところはいっぱいあ
 る。「今宵、」は、最後の15分ですべてを理解し、泣いた。<さよなら>が心にしみ
 る。
 
 【裏ベスト】
  ●デジャヴ
  ●素粒子
  ●ブラックブック
  ●絶対の愛

  「デジャヴ」は文科系頭にはタイムトリップが???だった。「素粒子」は少々古すぎ
 るヨーロッパ人的思考についていけない。「ブラックブック」はナチを描いても変わら
 なかったバーホーベンの下品で慎みのない騒々しい娯楽志向に、ふと笑ってしまった。
 「絶対の愛」は単純に面白い。いつものように、ギドクの悪意を押しやりたいと思っ
 た。

★宇田川幸洋さん(映画評論家)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●黒い眼のオペラ

  今月は、これ1本で大丈夫。いや、来月も、そのさきまでも生きていけそう、という
 くらいの満足度の『今宵、フィッツジェラルド劇場で』。こんなはなしで、こんなにま
 で映画のたのしさを馥郁と香らせるなんて、アルトマンだけの名人芸。今月、スター
 チャンネルで追悼特集をやり、アルトマン式超群像劇の原点である『ナッシュビル』
 ('75)も放送されるというが、スクリーンでもう1度見たいものである。
  アルトマン1本でも満足なのに、ツァイ・ミンリャン(蔡明亮)の新作まで同じ月に
 出てくる。ほんにガイなこってすのう、お茶もってこいですわい(川崎市民ミュージア
 ムで『大番』4部作を見たばかりで、愛媛弁があたまのなかで渦をまいて、出口をもと
 めていたもので)。

 【裏ベスト】
  ●口裂け女
  ●渋谷区円山町

  『キューティーハニー』みたいな役を、どんどんやってほしいなあと願っていたのだ
 が、ここでは、もう子どものいる女の役になってしまった。でもサトエリ主演なら、な
 んでも満足してしまうのだ。その程度に吾輩はサトエラレである。つぎは本谷有希子の
 劇の映画化『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』だという、どんなふうなのだろうか。
 期待してます。口裂け女役に果敢にとりくんだ水野美紀にも感心した。これで疾走アク
 ションを見せてくれたら、言うことなしだったのだが。
  チラシの名前のあつかいからして、彼女はわき役なのだと思っていたが、なかなか、
 それらしい子が出てこない。いいかげん、ねむくなったところで、あ! この子にちが
 いないと感じて目がさめた。『渋谷区円山町』は、実は2話構成で、彼女は後半の主役
 だったのだ! 『時をかける少女』で主人公の声を演じていた仲里依沙(なか・りい
 さ)。まだ、ぼくは顔を見たことがなかったのだ(制服を着たうしろすがたのご本人を
 見たことはあって、かがやかしいものを見た印象がのこっている)。はじめて見る仲里
 依沙は、想像していた顔とはすこしちがっていたのだが、予想以上にと言っていいほ
 ど、よかった。愛くるしい、いじめられっ子。かわいさのなかに、かなしみがある。そ
 んな役を生きていた。いろんな面で対照的な同級生役の、背が高く骨っぽい原裕美子と
 のくみあわせもよかった。女の子どうしで、ふたりだけで、こころをかよいあわせる、
 せつない感じがとてもいい。

★内海陽子さん(映画評論家)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●パフューム ある人殺しの物語
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で

  体臭を持たない男が女の香りを追い求める姿を、無味無臭の映像で見るという倒錯的
 な歓び。『パフューム』の壮麗な嘘にはひれ伏すよりほかはない。トム・ティクバ監督
 ののびやかな飛翔に心がうち震える。温気のこもる楽屋からライトがまばゆいステージ
 へ移動する芸人を間近に見る興奮。『今宵、フィッツジェラルド劇場で』は、ある種の
 観客にとって永遠の天国のようなもの。ロバート・アルトマン監督のすましたウィンク
 が目に見えるようだ。
 
 【裏ベスト】
  ●キトキト!

  新宿へ出てきた「キトキト」なかあちゃんの大竹しのぶがすれっからしのホストたち
 の喝采を浴びるのは、男の子たちが「母の子」だからだろう。彼女に惚れこむ中年男
 (光石研)もただの「母の子」に見えて可愛い。父性の出る幕のない大竹のでっかい母
 性は『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』のそれを軽くしのぐ。

★馬場英美さん(ライター、エディター)─────────────────────

 【表ベスト】
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で

  群像劇としてのキレはないと思うが、出演のほかに原案、脚本も手掛けたギャリソ
 ン・キーラーの芸達者ぶりだけでも見る価値がある。一見、うだつのあがらなそうな普
 通のおじさんなのに、ラジオの本番になるとまるで別人のよう。あれこそプロの芸!

 【裏ベスト】
  ●ブラックブック
  ●情痴アヴァンチュール

  「ブラックブック」は、男たちがあまりにもあっさりと殺されていくのには笑った
 が、波乱万丈の人生を送るヒロインのタフネスぶりに一票。女は多少(!?)のことでは
 へこたれません! 加えて、演じているカリス・ファン・ハウテンという女優が、かな
 りの熟女かと思いきや28歳と聞いて驚いた。「情痴アヴァンチュール」は、何がやり
 たいのかよくわからない映画だったけど、リュディヴィーヌ・サニエが好きなので。

★浦崎浩實さん(激評家=映画評・劇評)─────────────────────

 【表ベスト】
  ●二十四の瞳 デジタル・リマスター版
  ●パラダイス・ナウ
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●パフューム ある人殺しの物語
  ●マリアの受難

  「二十四の瞳」はインテリの嫌いな、いわゆる催涙映画だが、高峰秀子の聖なる流涕
 に観客もまたもらい泣きするという一種の宗教映画だと今回再々確認しました。「マリ
 アの受難」は「パフューム」と同じ監督の初期の作。感動もの!

 【裏ベスト】
  ●映画館の恋
  ●情痴アヴァンチュール

  2作とも映画・映像が絡み、後者の男の職業は映画中で初めて見た。前者の主人公キ
 ム・サンギョンが、今年の鶴屋南北戯曲賞となった本谷有希子作「遭難、」の自己
 チュー先生と微妙に重なって見え、可笑しかった。

★えいwithフォーンさん(シネマブロガーズ)──────────────────

 【表ベスト】
  ●約束の旅路
  ●絶対の愛

 ──よくできた映画って、ラストシーンは絶対に忘れられないよね。
 「(※ネタバレ注:ご覧になってからお読み下さい)。奇跡と呼ぶしかない息子との再
 会の瞬間、すべての力を振り絞った母親の声はまるで勝利の雄叫びのように空気をつん
 ざく。天にも届けと発せられたその声の意味をフィルムに収めるべく、ラデュ・ミヘイ
 レアニュは、映画史上まれに見る大胆なラスト・ショットを用意する。一方の『絶対の
 愛』はサスペンスからヌーヴェルヴァーグまで、ありとあらゆる映画の記憶を一本に封
 じ込めた驚くべき作品。映画の転がりゆく先をまったく予想させないギドク・スタイル
 は<整形返し>の内容以上にセンセーショナル。こちらもラストは見逃せないよ」

 【裏ベスト】
  ●バッテリー

 ──この映画、スコープ・サイズなのにアップが多かったよね?
 「そうだね。まるでスターで観客を呼んでいた60年代の日活映画みたい。しかもどの
 ショットもまったく浮つくことなく、落ち着きと安定感があった。青春映画と言うと、
 その渦中にいる若者の悩みや焦燥を描くことが多いせいか、一般に不安定な構図が多い
 けど、この映画は少年たちを常に中心に配置し、思春期特有の強烈な自我を接写する。
 キャッチャー豪の『ど真ん中じゃ!』に呼応するかのように、映画も真っ向から直球勝
 負。折り目正しいと言うか端正と言うか。観終わって、とても清々しい気分になった
 な」

 【封切は終わったけれど…】
  ●ボビー
 ──これは<特別>な映画って言ってたよね。最初は確かゴールデンウイーク公開の予
 定じゃなかった?
 「うん。オスカーに絡まなかったことで急遽公開が繰り上げられたんだろうね。この映
 画は、ボビーことロバート・F・ケネディが狙撃された1968年6月5日、運命の場所
 に居合わせた22名それぞれのドラマを描きながら、ある時点でそれとは別のもの──
 高い理想を掲げた一人の政治家の<記録>と<記憶>──へと移行してゆく。彼の崇高
 な魂をいかにして今の時代に伝えるか? 監督エミリオ・エステベスが編み出したこの
 手法は、一見いびつ。でもそれゆえに心に深く刻み込まれずにはおかない。悲劇が起
 こったアンバサダーホテルは映画『卒業』の舞台でもある。クライマックスで流れる、
 ある曲はまさに時代を象徴。時代の記憶を呼び覚まされ、滂沱の涙が止まらなかった
 ね」

★江戸木純さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  1位)今宵、フィッツジェラルド劇場で
  2位)ブラックブック
  3位)パリ、ジュテーム
  4位)サン・ジャックへの道

  1位)とにかく観ながら終わってほしくないと思った。まさにアルトマンの映画の遺
 言状。2位)バーホーベンの変態性が随所に炸裂するスパイ・サスペンス。過剰なバイ
 オレンスとエロスが素敵。3位)クリストファー・ドイルとウェス・クレイブンの担当
 分は他に比べかなりレベルが低いが、他はどれも楽しく見ごたえ抜群。特にこの企画の
 パイロット版だったというトム・テクヴァ演出分は彼のダラダラ長く、匂いの官能性に
 欠ける新作『パフューム』より遙かに完成度が高い。4位)セローの軽妙な演出を堪能
 する巡礼ロードムービー。ちょっと懐かしい味わいのフレンチ・コメディの快作。

 【裏ベスト】
  1位)ラスト・キング・オブ・スコットランド
  2位)クロッシング・ザ・ブリッジ~サウンド・オブ・イスタンブール~
  3位)ナイト ミュージアム

  1位)主人公の馬鹿で身勝手な白人が痛い目を見るアフリカ版『ホステル』として見
 るべきホラー映画。ウィテカーの怪演も『食人大統領アミン』のオリタには負けてい
 る。2位)イスタンブールの音楽事情をいかにもトルコらしい緩さで追ったドキュメン
 タリー。3位)リメイク版『ピンク・パンサー』の監督+ベン・ステイラーの新作とい
 うことであまりに期待が大きすぎたので、いかにもフォックスのファミリー映画といっ
 た感じの『ホーム・アローン』的毒のなさが物足りなかった。

★大森さわこさん(映画評論家)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●蟲師

  アルトマンの遺作は、とにかく、楽しい。セットもキャストも贅沢で、こういう落ち
 着いた大人のアメリカ映画は、最近、ほとんどお目にかかれなくなりましたね。最後に
 アメリカンな映画で逝った毒舌監督。長い間、素晴らしい映画の数々、本当にごくろう
 さまです。「老人の死は悲劇ではない」。劇中のこの言葉を故人となった監督にも捧げ
 ましょう。
  「蟲師」は不思議な映像力が印象的。特に中盤の文字をめぐるエピソードがおもしろ
 かった。変化球好きの(白髪の)オダギリジョーは、時として、和製ジョニー・デッ
 プ? 大森南朋の(なごみの)助演も好きです。
  キム・ギドクの新作「絶対の愛」は未見です。残念……。

 【裏ベスト】
  ●神童

  正直、“ピアノ映画”としては期待はずれ。前半で見えた音への期待の芽、が、後半ふ
 くらんでいかない。映像の流れに音楽的な感覚が足りないのかもしれない。だから、見
 終わった後、ちょっとかなー、と思ったが、時間がたってみると、主人公たちの不思議
 な愛の映画としては魅力があるのかな……。主演ふたり(鳴海璃子と松山ケンイチ)は
 好演。惜しい映画だと思います。

★加藤久徳さん(ライター)───────────────────────────

 【表ベスト】
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●約束の旅路
  ●神童
  ●素粒子
  ●ブラックブック
  ●ナヴァラサ
  ●日本心中 針生一郎・日本を丸ごと抱え込んでしまった男
  ●ひいろ
  ●NARA:奈良美智との旅の記録
  ●ポリス/インサイド・アウト

  ついに逝ってしまったアルトマン監督。劇場内を死の天使が浮遊する遺作『今宵、
 フィッツジェラルド劇場で』は、それが遺書でなかったとしてもやはり死は意識してい
 たはず。ペキンパーの忘れ形見みたいな老優L・Q・ジョーンズの肩に死の天使が手を
 置くシーンは、身の毛が総毛立つ思いだった。

★河原晶子さん(映画・音楽評論家)───────────────────────

 【表ベスト】
  ●パフューム ある人殺しの物語
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●パリ、ジュテーム

  原作の奇想天外の世界をほぼ完璧に映画化した「パフューム」、主人公の天才調香師
 は、ギュンター・グラスの「ブリキの太鼓」のオスカルを想わせるトリックスターで
 す。
  ロバート・アルトマンは遺作となってしまった「今宵、フィッツジェラルド劇場で」
 で、“死は悲しいものではない”と語りかけてくれます。
  監督の顔ぶれよりも豪華な俳優陣が圧巻の「パリ、ジュテーム」。諏訪敦彦篇がファ
 ンタジックです。

 【裏ベスト】
  ●絶対の愛
  ●黒い眼のオペラ
  ●素粒子

  キム・ギドクとツァイ・ミンリャンはさらにそれぞれの“愛の迷宮”へさまよい込んで
 います。
  ほんとうは表ベスト作品に入れたかったのですが……
  ヨーロッパ知識人の“ひよわさ”を象徴するような「素粒子」。観念の世界と本能の世
 界のあいだを揺れる異父兄弟がこっけいで哀しい。

★黒田邦雄さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●絶対の愛

  「うつせみ」も「弓」もピンと来なくて期待していなかったのだが、「絶対の愛」は
 「悪い男」の興奮を蘇らせてくれた。これはもう、ギドクでなければ考えつかない世界
 だろう。絶対の愛という反語的な邦題が面白い。愛に絶対はない!

 【裏ベスト】
  ●パフューム ある人殺しの物語

  原作が超面白かったが、映画も頑張っている。奇妙奇天烈なクライマックスはさすが
 に映像では万全とはいかないが、それでも努力賞ものだ。こういう人を食ったウソ話を
 「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァ監督が正攻法で描いているのが気に入っ
 た。

 【封切は終わったけれど…】
  評判のいい「さくらん」をやっと観た。コッポラにソフィアあれば、蜷川に実花あり
 という感じ。共に少女幻想をゴーカに繰り広げて、こわいもの知らずの良さがあった。
 苦労を知らずに育つことは、芸術にとってよいことだ。

★塩田時敏さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●バッテリー
  ●許されざるもの
  ●絶対の愛
  ●素粒子
  ●映画館の恋

  今月は結構いいものが出揃った。でも、表裏の差はあまりない。というか、ごっちゃ
 になった面白さだ。例えばキム・ギドクの「絶対の愛」。ギドクらしい傑作だが、でも
 “整形返し”ってありかよ(笑)、なほどツッコミどころはマン載。ていうか、これ浮
 気性なギドク自身の自己弁護映画じゃん(笑)、裏だなやっぱり、と思っても、いや
 “うつろうからこそ愛”なのだと、堂々と表でもハズカしくないテーマも浮かび上ってく
 る。

 【裏ベスト】
  ●龍が如く 劇場版
  ●相棒 ─シティ・オブ・バイオレンス─
  ●ブラックブック

  三池監督「龍が如く 劇場版」は本来、表でもいい面白い出来だが、自身の
 「DOA」や「漂流街」のなぞり的部分もあるので一応裏に。コン・ユと田口トモロヲ
 が“山”“川”ならぬ、“キム・ギドク”“受取人不明”という合い言葉で接触するのが大笑い
 だ。この他、「相棒」「許されざるもの」「映画館の恋」と、韓国ものが凄い。バー
 ホーベンも一見良心派に転向!? なわけなく、セックス&バイオレンス満載。「素粒
 子」のエロこそ人間存在の核だしね。

★品田雄吉さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●ラスト・キング・オブ・スコットランド
  ●二十四の瞳 デジタル・リマスター版

  ロバート・アルトマンは好きな映画作家でした。現実に対する皮肉な目とユーモア。
 辛らつでありながら伸びやかな描写力。そのような特性は、遺作となった「今宵、
 フィッツジェラルド劇場で」にも豊かに流露しています。「ラスト・キング・オブ・ス
 コットランド」は、フォレスト・ウィテカーの熱演に驚きました。「二十四の瞳」は、
 やはり名作です。

 【裏ベスト】
  ●パフューム ある人殺しの物語

  匂いのことを映像で表現するのは難しいな、と思いました。

 【封切は終わったけれど…】
  ここのところ、「ゆうばり応援映画祭」その他のこまごました用事と、風邪のせいで
 映画を見る本数が減っております。2月公開の「さくらん」をやっと見ましたが、失望
 しました。

★ジャンクハンター吉田さん(フリーライター)──────────────────

 【表ベスト】
  1)ブラックブック
  2)ケータイ刑事 THE MOVIE2 石川五右衛門一族の陰謀~
      決闘!ゴルゴダの森

  1)はヴァーホーヴェン先生のエロさが爆裂+彼自身のトラウマ幼少期を具現化した
 かのような展開にノックアウト。ハリウッドでは撮れない、というか撮らせてもらえな
 い激しく接写した女性の陰毛箇所など、ビックリの連発。先生が71歳で元気なのは毎
 日プールで泳いでいるからだとか。納得行かないのがドクターが棺に入っているのに武
 装していなかった箇所。金銀財宝だけ入れとくわけねーじゃん。2)はトミマツの復活
 に感涙しまくり!

 【裏ベスト】
  ●蟲師

  原作やアニメを観ていたら確実に楽しめる内容であろう『蟲師』。勉強不足のまま観
 てしまった自分に激しく後悔すると共に、観終わってからの理解力のないバカな自分に
 ダメ出しをしたくなった……。オダギリジョーがクローズアップされ過ぎているけど
 も、大森南朋のトボけた演技が冴え渡るので、もっと彼にスポットを当てるべきじゃな
 いかと思った。

 【封切は終わったけれど…】
  配給元への失礼を考えて、媒体にて取り扱う作品がない限り試写室で映画を観ないよ
 うにしているのだが(個人的美学)『不都合な真実』はお金を払って観たい映画だった
 ために、今更ながら六本木ヒルズにて平日夜に初鑑賞。……早く観ておけば良かった映
 画だった。これを試写室で早々に観ていたら、扱っている媒体全てにて紹介していたで
 あろう。まさにゴア氏の講演を観ているかの展開と人類への問題提起を訴えかける内容
 に心打たれた!

★高崎俊夫さん(編集者)────────────────────────────

 【表ベスト】
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●絶対の愛
  ●許されざるもの

  『今宵~』は、30年以上にわたってアルトマンの映画を見続けてきた者にとって
 は、涙なくしては見られない遺作。冒頭の、エドワード・ホッパー「ナイトホークス」
 を彷彿とさせる、書割じみた40年代フィルム・ノワール風のイントロから、カント
 リー&ウェスタンの歌手が右往左往する狂騒的な楽屋へとなだれ込んでいく演出の名人
 芸には、溜め息が出る。常に<死>を見据えてきたアルトマンは、自分と同い年で誕生
 日が一日違いの、もうひとりのひねくれ者サム・ペキンパーの常連L・Q・ジョーンズ
 を、この作品で手厚く葬っている。「老人の死は悲劇ではない」とは何とアルトマン的
 なアイロニーに満ちた台詞であることか。

 【裏ベスト】
  ●デジャヴ
  ●ブラックブック
  ●パフューム ある人殺しの物語

   最近のトニー・スコットの映画って、なんでこんなに面白いのだろう。フランク・
 キャプラの名作『素晴らしき哉!人生』を、今、説得力あるかたちでリメイクするとす
 れば、こんなふうになるのではないか。あり得たかもしれない過去を、たぐりよせるこ
 とで、見出される<映画的な真実の瞬間>の魅惑に酔わされた。村上春樹でなくても、
 この映画の「ビーチ・ボーイズ」の引用にはシビレルだろう。

 【封切は終わったけれど…】
  3月25日からラピュタ阿佐ヶ谷で一ヶ月間、「田中登追悼特集上映」(17本立
 て!)を行ないます。70年代には、アルトマンと同様、封切られる新作を必ず見てい
 た、このロマンポルノの鬼才の死はショックでした。今回の特集では、ロマンポルノ以
 外にも初期の二時間もののテレビ作品を上映します。宇都宮雅代の妖艶なファム・ファ
 タールぶりが凄い『鬼火』、山本陽子が覚醒剤中毒で破滅する主婦をエロティックに演
 じる『白い悪魔が忍び寄る』、風間杜夫、桃井かおりという異色のキャストで、克美茂
 の愛人殺人事件を素材にした『愛の報い』の三本ですが、どれも、ほとんど見る機会の
 ない秀作揃いです。風間さんは、二度ほど来館し、トークに出てくれる予定になってい
 ます。乞う、ご期待!
  (財)エース・ジャパンで発行している「フィルムネットワーク」の最新号で、山田
 宏一さんに「映画教育とは何か」というテーマでインタビューをしました。晦渋なアカ
 デミズムに行きがちな昨今の表象系の映画研究を痛烈に批判する山田さんの発言は必読
 です。

★高橋諭治さん(映画ライター)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●ポイント45
  ●情痴アヴァンチュール
  ●神童
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●ラストキング・オブ・スコットランド

  これまであまり心引かれずにいたミラ・ジョヴォヴィッチ(『ポイント45』)、
 リュディヴィーヌ・サニエ(『情痴アヴァンチュール』)が、この新作で突如強烈な魅
 力を放っていて驚いた。女性の中のある種の怪物性が表現された2作品、完全に参りま
 したぁ! アッケラカンと怪物ならぬ“神童”を演じてみせた成海璃子も印象的で、孤高
 の天才少女がどこへ行こうとしているのか最後までわからない不思議なスリルがある。
 まるで時空を超えたファンタジーのようにも思える一夜の人間模様『今宵、フィッツ
 ジェラルド劇場で』も堪能しました。

 【裏ベスト】
  ●檸檬のころ
  ●デジャヴ
  ●口裂け女
  ●ブラックブック
  ●絶対の愛

  ブラッカイマー作品としては珍しくひねったプロットで見せる『デジャヴ』は、前半
 が抜群に面白い。終盤の「えっ、それをやっちゃうの?」という禁じ手気味の展開に興
 醒めもしたが、かなり楽しめた。オランダに戻って健在ぶりを示したバーホーベンの
 『ブラックブック』。あまりにもパワフルな人で、来日時のインタビューでは30分で
 3つしか質問できませんでした。そして今月のハイライトは『檸檬のころ』の谷村美月
 でしょう。ああ、女の子というのはこんなにも可愛い生き物なのか、などとウブな少年
 の気分で見惚れてしまい、すっかり参りましたぁ!

 【封切は終わったけれど…】
  奮発してミヒャエル・ハネケのDVD-BOXの1と2をダブル購入。昨年の特集上映で
 見逃した作品をこれから見るのが楽しみです。

★高村英次さん(映画ライター)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●パフューム ある人殺しの物語
  ●ラストキング・オブ・スコットランド
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●ホリデイ

  3月は“07年は映画の当たり年”を象徴する大豊作マンスリー。『パフューム』はエ
 ログロが至高の美学にまで達したブラッディな寓話として近年にない傑作だし、緊張感
 がたまらない『ラストキング・オブ・スコットランド』は見終わった後言葉を失う“も
 の凄さ”。アルトマン監督の遺作『今宵、フィッツジェラルド劇場で』のマイペース&
 粋な演出にジーンときて、Wカップルの洒落た自宅交換ラブコメ『ホリデイ』にウルウ
 ル…。大満足!

 【裏ベスト】
  ●ナイト ミュージアム

  この作品、「惜しい」と思うのは、博物館の剥製や人形、恐竜の標本が動き出すアイ
 ディアはグーなのに、発展のさせ方が手温い点。映画のラストでやっとアース・ウィン
 ド・アンド・ファイヤーの曲をバックに、剥製たちがアホ乗りで踊り狂うイイ場面が出
 てくるが、コイツをもっとやって欲しかった。我が愛する『チキ★チキ★バン★バン』
 の名優ディック・バン・ダイクやミッキー・ルーニーが見れて嬉しい事は嬉しいんだけ
 ど…。

 【封切は終わったけれど…】
  2月公開になってしまった『ボビー』。しかし上映中のうちに見といてほしい秀作で
 す。JFKの弟で当時のアメリカ市民の希望の星だった大統領候補のロバート・ケネディ
 =“ボビー”が暗殺される一日を、ロバート・アルトマン監督のような群像ドラマで見せ
 る。俳優としてはご無沙汰のエミリオ・エステベスが父のマーチン・シーンや元の恋人
 デミ・ムーアら関係者を総動員して、“夢が費える瞬間”を見事に演出。黒人シェフの
 ローレンス・フィッシュバーンが差別について語るシーン、メジャーの試合を見に行く
 のを我慢する移民ウエイターなど印象的な言辞とドラマがいっぱいで、とても<映画的
 >。

★田中千世子さん(映画評論家)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●パラダイス・ナウ
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●ハッピー フィート

  『パラダイス・ナウ』は面白い。この映画には現実のシリアスな緊張感とフィクショ
 ンならではの緊張感のふたつがある。アルトマンの『今宵』は辞世の句のようだ。胸が 
 いっぱいになる。

 【裏ベスト】
  ●鉄人28号 白昼の残月

  「死んだはずだよ、お富さん」の歌がしゃれている。とってもユニークなアニメ。

★暉峻創三さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●相棒 シティ・オブ・バイオレンス

  今月は敢えて上記一本のみ。監督・主演のリュ・スンワンは、アクションを中心とし
 た“男の映画”の名手として名高いが、『相棒』を見て、むしろその女優演出の名手とし
 ての抜きん出た才覚を確信した。今作のキム・ソヒョン、04年の旧作『アラハン』の
 ユン・ソイらは、いずれも彼の下で紅一点のヒロインを務める時のみ、他の監督作品で
 は見せない神々しさを発揮する。その演出の秘訣はおそらく、やりすぎないこと、だ。

★西脇英夫さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  1位)デジャヴ
  2位)パラダイス・ナウ
  3位)絶対の愛

  1位)は、実に良く出来たタイム・パラドックスのエンタテイメント。相変わらずデ
 ンゼル・ワシントンがいい。細かい伏線がちりばめられているので、かたときも目が離
 せない。2位)は、画面から血が噴出してくるような、パレスチナ・自爆テロのセミド
 キュメンタリー・ドラマ。まさに本物の迫力だ。3位)はいよいよ冴えわたるキム・ギ
 ドクの愛のドラマ。相変わらず「痛い!」。

 【裏ベスト】
  1位)約束の旅路
  2位)パフューム ある人殺しの物語
  3位)映画館の恋

  1位)は、イスラエルへ逃れたユダヤ難民の悲劇と苦闘を、丁寧に描いた感動の叙事
 詩。少年を主人公にしているところが巧いし、胸をうつ。2位)は、暗くエロティック
 で、風変わりな文芸作。これこそ初めて匂いを真正面からとらえた映画ではないか。3
 位)は、韓国映画の実験的作品。恋愛ドラマもこんな風に作られると興味深い。もう一
 本の実験的韓国映画「許されざるもの」もよく出来ている。

★野村正昭さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●ラスト・キング・オブ・スコットランド
  ●バッテリー

  遺作らしい遺作というのは意外に少なくて、普通は社交辞令の対象として遇するケー
 スが多いけれど、アルトマンのこの遺作は「アルトマン・最後の挨拶」と別題をつけた
 いほどの確信犯的な遺作でした。別題といえば「ラスト・キング・オブ・スコットラン
 ド」は「アミンと私」と名付けたいけど、それじゃ、まるで少女漫画みたいですね。
 「バッテリー」は最近空回り気味だった滝田作品としては久しぶりの快作なので。この
 水準を連打してくれると嬉しいんですが。

 【裏ベスト】
  ●進め!モォトゥオ探検隊
  ●ひいろ
  ●ネバー・サレンダー/肉弾凶器

  「進め!モォトゥオ探検隊」は相当に荒削りだけど、こういう映画、好きだなあ。チ
 ベットの秘境に住む老人に会いに、新聞記者や医師、地元の人々がチームを組んで過酷
 な旅に出かけ、次から次へと困難な事件の連続というサバイバル・ドラマの佳作。滑稽
 かつ悲惨で、結構ジーンときました。「ひいろ」は「乳泉村の子」のような凡庸なドラ
 マかと思いきや、ヒロインの健闘や丁寧な演出、南田洋子や桜金造、ルー大柴らの意外
 な好助演もあって、好感の持てる作品になっていました。「ネバー・サレンダー/肉弾
 凶器」は、ただもうひたすらアクションの連続だけで押しまくり、その潔さが、まるで
 実験映画のような境地に達していたので。今時珍しい、これぞB級映画の醍醐味溢れる
 一本でした。

★増當竜也さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●二十四の瞳 デジタル・リマスター版

  名作と呼ばれるものはやはり名作であることを痛感させられました。本当の涙を流せ
 る映画とでもいうべきでしょうか。こんなご時世だからこそ、ぜひ見直していただきた
 い映画です。きっと新たな発見があるはずです。

 【裏ベスト】
  ●檸檬のころ
  ●超劇場版ケロロ軍曹2 深海のプリンセスであります!

  はっきりいって出来がいいとは思いません。演出は自主映画レベル、しかも構成(特
 に後半)がひどすぎます。ただ、時折ふと自分の高校時代をフラッシュバックさせられ
 る瞬間が多々ありました。高校生のスカートの丈が長いのが、おじさんは嬉しい。谷村
 美月は上手すぎ。榮倉奈々はせっかく日本では珍しい童顔長身スリムの魅力が活かされ
 てないのが残念。早く『円山町~』観なきゃ。
  まだ観てないというか、まだ完成してないんじゃないかな。でも私にとって『ケロ
 ロ』は今や自分の生活になくてはならない大切な存在なのです。

 【封切は終わったけれど…】
  もう放映終了しているのですが、目下TVアニメ『スクールランブル』にはまってい
 ます。特に『二学期』はSFファンタジーのない『うる星やつら』といったテンション
 の高い学園集団ドタバタドラマで楽しい。萌えアニメでは『ハピネス!』が可愛い。は
 い、編集とTVアニメの仕事でカンヅメとなり、2月は見逃し多数。劇場で挽回せね
 ば。

★まつかわゆまさん(シネマ・アナリスト)────────────────────

 【表ベスト】
  ●パフューム ある人殺しの物語
  ●ブラックブック
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●パラダイス・ナウ
  ●オール・ザ・キングスメン
  ●パリ、ジュテーム
  ●サン・ジャックへの旅
  ●ラスト・キング・オブ・スコットランド

  今月見た中で気に入ったものを並べてしまいました。頭パンクしてて選べなくて。す
 みません。三月公開の春休み映画にしてはシリアスなものが多く、突出してこれはすご
 いという感じではないけれど意義はあるものがたくさんあった感じがしてます。今にコ
 ミットしようという心意気があると感じたものをあげました。あと一年、がんばれ社会
 派映画。ブッシュはきらいだ。安倍もきらいだ。

 【裏ベスト】
  ●ナイト ミュージアム

  実は博物館学芸員の資格をもってます。社会教育主事のも。といってもこれって免状
 とかないので、実感はないですが。どこに旅行しても博物館は必ず行きます。子どもの
 頃はミイラを掘る人になりたかった。大学に考古学がなかったのでもう一つの憧れだっ
 た人類学を専攻しました。そんな私は博物館の展示物が生き返るというコンセプトだけ
 でワクワクしちゃいます。

 【封切は終わったけれど…】
  「ボビー」、結局賞にからまず公開が早まってしまったけれど、がんばった作品だと
 思う。よくぞここまでおおきくなったねぇエミリオ、と感慨。で、エミリオとマーティ
 ンはヒラリーかオバマか、エドワーズか、誰を応援しているのだろう。クシニッチは出
 るのかな。

★皆川ちかさん(ライター)───────────────────────────

 【表ベスト】
  1位)素粒子
  2位)絶対の愛
  3位)NARA:奈良美智との旅の記録

  どうも私は、分かっているけど常識からはぐれてしまう、“俺の俺による俺のための
 モラル”を持つ人が出てくる映画が好きなんですね。1位と2位なんてその代表格です
 よ。3位は対象者・奈良美智がリアル“俺モラル”ってことで。

 【裏ベスト】
  ●相棒 ─シティ・オブ・バイオレンス─
  ●ブラックブック

  「相棒」は終盤のケンカシーンが、「ブラックブック」は序盤でカリス・ファン・ハ
 ウテンが変装するため陰毛を染めてるシーンが心に残りました。

 【封切は終わったけれど…】
  「キムチを売る女」:暴力、セックス、死。ヒットする映画に必要な3つの要素が確
 かに出てくるけれど、直接は描かれず、そういうことは画面の外で行われています。そ
 して観客は想像をふくらませて、自分にとっての暴力、セックス、死を見るわけで……
 自分の欲望がよく分かってきますね、これは。

★みのわあつおさん(ポップ・カルチャー評論家)─────────────────

 【表ベスト】
  1位)ゴーストライダー
  2位)ナイト ミュージアム
  3位)ホリデイ

  『ゴーストライダー』は、ミラマックス版の製作が発表されてから6年後の完成と公
 開。企画が移動して完成したコロンビア版に満足だ。ゴーストライダーのバイクの走っ
 た跡まで細かに描写され、監督のコミックス・オタクぶりが良く分かる。『ナイト 
 ミュージアム』は、まさにベン・スティラーのハマり役。しかし、プレス・シートにカ
 メオ出演の某スターの写真を載せてしまうのはマズいでしょう。『ホリデイ』は、
 ジャック・ブラックとケイト・ウィンスレットの「ハリウッド篇」が、風刺のきいた裏
 話がたっぷりで楽しかった。

★宮城正樹さん(映画&音楽の批評・分析家)───────────────────

 【表ベスト】
  1位)あかね空
  2位)今宵、フィッツジェラルド劇場で

  『武士の一分』風人情時代劇的ながら自然な感じで感情移入できた快作の1位。男の
 食職人ドラマかと思いきや中盤以降、女性ドラマ、さらに家族ドラマへと転換して泣か
 せる。職人系『タンポポ』、コメディ特化の『UDON』にはできなかった着地に加
 え、中谷美紀のセリフ、表情演技は神ワザに近い。ロバート・アルトマンの遺作の2位
 は集大成的な群像音楽劇。老シンガーの死、皆に見える天使など、死と向かい合う監督
 の姿が垣間見えて壮絶。

 【裏ベスト】
  1位)ブラックブック
  2位)デジャヴ

  ハリウッド大作映画の現在を知ることができる2作。1位)はポール・バーホーベン
 監督が本国オランダで撮った作品で、女版『戦場のピアニスト』系生き残りスタイルを
 監督のハリウッド経験によるバイオレンス&エロスの手法で描いた会心作。製作J.ブ
 ラッカイマー&監督T.スコットによる2位。過去一部改ざん系でいった勧善懲悪型パ
 ニック・アクション。マルチ・アングルで見せるセピア色の4日前映像などにユニーク
 な試みがある爽快な娯楽作。

 【封切は終わったけれど…】
  ワケ分からんノリながら多彩な10作短編集『ユメ十夜』。黒澤明監督『夢』の字幕
 「こんな夢を見た」も出てくるが、硬派な『夢』に対し軟派で自由ホンポー。夢とはそ
 もそもワケ分からんからコレでOK! シリアスで緊張感ノリながら最後は感動的な
 『善き人のためのソナタ』。ケヴィン・スペイシーを思い出す主演男優の無表情演技、
 『1984』『華氏451』のSF系ではないナチ時代的な実話抑圧映画性などが秀逸。「自
 分のためだよ」の一言が効く。

★宮崎祐治さん(イラストレーター)───────────────────────

 【表ベスト】
  ●パフューム ある人殺しの物語

  何ともバランスの悪い世界観なのにとても魅力的。なぜか、ぐいぐいひきこまれてし
 まう。きっと「臭い」「香り」という五感のひとつに生理的に迫ってくるからなのだろ
 う。逃げて行く赤い髪の少女の香りを追いかけて、空中をカメラが浮遊するカットだけ
 でも一見の価値あり。

 【裏ベスト】
  ●デジャヴ

  決して成功することのないタイムマシンものだけれど、映像の演出力で納得させられ
 て、ラストまで楽しく見られる。ニューオーリンズのロケーションを活かした複雑な爆
 破事件にリアリティがある。何重にも張り廻らされた仕掛けもサスペンスが効いてい
 る。唯一タイムマシンだけを我慢すれば…。

★森直人さん(ライター)────────────────────────────

 【表ベスト】
  ●絶対の愛
  ●ホリデイ

  キム・ギドクは振り切れた最狂怪作! ナンシー・メイヤーズは、『恋愛適齢期』と
 いい絶妙なバランス感覚を持った監督だと思います。

 【裏ベスト】
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で
  ●神童

  音楽系の映画、というより、音楽のような映画。

 【封切は終わったけれど…】
  遅ればせながら『世界最速のインディアン』を劇場で観ました。なかなか面白かった
 です。

★山田宏一さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  1位)筒井武文のワンダーランドへ
  2位)今宵、フィッツジェラルド劇場で

  1位)は筒井武文監督の習作、自主製作映画、PR映画、記録映画などをまとめて新
 年早々、東京・神田小川町のneoneo坐という小さな「たまり場」で特別上映されたも
 のですが、これからも個展のようにあちこちで継続して見られるとすばらしいと思いま
 す。『ゆめこの大冒険』というサイレント・コメディーの大傑作が見られるだけでも幸
 福な映画体験です。できたら、同時に、どこかの劇場で、たとえば東京・池袋の新文芸
 坐のような映画館で、筒井監督の2004年作品『オーバードライヴ』も連動して上映さ
 れるといいのですが……!
  2位)は昨年11月に81歳で亡くなったロバート・アルトマン監督の遺作。アメリカ
 の伝説の公開ラジオ番組のライブショーを、『ナッシュビル』(1975)や『ウェディ
 ング』(1978)のように多彩な人物模様の織りなす狂乱のアルトマン・タッチで描く
 面白うてやがて悲しき猥雑なスペクタクル喜劇。追悼の意をこめて必見。

 【裏ベスト】
  ●聴かれた女

  山本政志脚本・監督作品。「私が裸にされていく──」「若者たちの“リアル”な欲望
 を描くエロポップ・サスペンス!!」という惹句と『聴かれた女』というタイトルの扇情
 的ないかがわしさにだまされてはならない。いや、むしろ単純に素直にだまされ、そそ
 られ、誘われて見るほうがその快い「映画的」な面白さにおどろき、思いがけない発見
 に微笑みすら浮かんでくるたのしさを味わえるかもしれない。
  壁ごしの盗聴が裏窓からの覗き見のようにさりげなく自然に──壁を抜けて──視覚
 化される見事さ(美術は磯見俊裕、撮影は三栗屋博、そして録音は水口靖)。もちろ
 ん、脚本・監督の山本政志の「映画的」なセンスと工夫の勝利でしょう。隣の女の性生
 活を盗聴しながら性的興奮にひたる(といういやらしいはずの)若い男の幸福を心から
 願わずにはいられなくなる思いがけないドラマ展開も洒落ていて巧妙で心やさしく微笑
 ましい。
  すでに東京・東中野のポレポレ東中野でレイトショー公開中ですが、それは前哨戦の
 ような感じで、これからのおそらくはDVD化のほうが、もしかしたら、本格的な一般
 公開とも言える作品。

 【封切は終わったけれど…】
  『赤い鯨と白い蛇』。TVディレクターとしてはベテランの、78歳になるという、せ
 んぼんよしこ監督の劇場用映画第一作で、これがじつにういういしく、みずみずしい。
 東京・神田神保町の岩波ホールでは上映後、静かな拍手が出ました。手紙ひとつだけで
 も、大げさで自信にあふれたクリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』の
 マッチョ的共同幻想よりも、ひそやかで個人的ながら、「映画的」にずっと感動的です
 らあると思います。
  蛇足──それにしても、『どろろ』のひどさ。誰が撮っても同じようなCG映画で、
 ただただ、おどろろおどろろしくて、今年のワーストは決まったと思いきや、大ヒット
 とのこと。しかも、朝日新聞の映画評では山根貞男氏が塩田明彦の「卓抜な演出」で
 「子どもも大人も楽しめる異色の時代劇」と大絶讃していて、まったくおどろろくばか
 り。久しぶりの「邦高洋低」も真におどろろくべき現象なのか。

★渡部実さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●今宵、フィッツジェラルド劇場で

  ロバート・アルトマン監督の活動歴は戦後アメリカ映画史の一面を担うほどに大き
 く、その監督の最後の作品「今宵、フィッツジェラルド劇場で」はどんな映画かと期待
 をしましたが実に暖かい雰囲気の映画でした。「ナッシュビル」を思わせる内容でドラ
 マらしい起伏がなく、カントリーの歌が続く中、その土地の人々の人情が自然に溢れて
 いて好感を持ちました。イーストウッドの「硫黄島2部作」が話題ですが、あちらの映
 画よりもアルトマンの作品の方がパーソナルな面でアメリカ人の良心を感じました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣編集後記┫

◆猫を飼っているフィリップ・マーロウ。それも、就寝中に猫に餌を要求され、コンビニ
に買いに行く。飼い猫お気に入りの猫缶が売り切れで、別なのを買い、猫の見ぬ間にいつ
もの空き缶に詰め替え、これ見よがしに出すも、猫は「これじゃニャい!」と食べない。
ご存知アルトマンの『ロング・グッドバイ』のかなり長めのオープニング。昨年、山田宏
一さんの学習院の公開連続講演会「身体表象文化としての映画誌」
http://www-cc.gakushuin.ac.jp/~corp-off/right.htmlで拝聴、拝見いたしました。猫を
飼うマーロウなんてと、原作やボガートのファンには不人気だったようですが、実はチャ
ンドラー自身が無類の猫好きだったということ。他にもハリウッド映画へのひねくれたオ
マージュのことや、エンディングでは『第三の男』との見比べなど、大変面白いお話をう
かがいました。中のインタビュー映像でアルトマンが「キャメラを先に、俳優に完璧なダ
ンドリをつけるよりも、自由にやらせてそれをキャメラで追った方がいいことに気づい
た」というような発言(うろ覚え)があったのですが、マーロウ(エリオット・グール
ド)とニャアニャアあちこち跳ね回る猫の共演はまさにそんな感じです。わが編集部にも
猫が影の編集長よろしく鎮座しておりますが、猫好きな映画ファンにとって、あれは最高
のシーンでしょう。32人中21人の映画評論家が推す3月のベスト映画『今宵、フィッツ
ジェラルド劇場で』。昨年19人で記録を出した『グエムル』を抜きました。(れがあるF)

◆前回ベスト2になった『世界最速のインディアン』が大ヒットしているとのこと、なん
だか嬉しいです。この邦題では……なんて勝手に心配していたのですが余計なお世話でし
た(笑)。ドイツ映画『素粒子』も、タイトルから睡眠薬のような、つまり、眠気を誘う
インテリ文芸映画を想像しましたが、意外と面白かった。異父兄弟の兄はド変態、弟は童
貞なのですが、その原因は同じ母親。共通のトラウマが兄と弟では正反対の形で表面化し
ている点が、とても興味深かったです。ちなみに私のトラウマは姉として生まれたこと。
どこへいっても「オネーサン」と呼ばれる……?! (れがあるU)

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
■発行日:2007年2月28日
■発行者:れがある http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest
■定 価:315円(税込)
■このメールマガジンに掲載された文章の転載・転送は禁止されています
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

フッターイメージ