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2007年6月号(最終号)

〓〓〓試写室だより 封切はこれからだ!〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓最終号〓〓〓

     映画を見るプロが選ぶ、表ベスト映画&裏ベスト映画
        ∴・∴・∴2007年6月封切り篇∴・∴・∴

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【表ベスト】これぞまぎれもなく、映画を見るプロが選んだ6月の最高作。心して見よ。
【裏ベスト】出来、不出来は二の次。偏愛あり、ヒイキの引き倒しありのアナザー・ベスト!
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INDEX(得票順/カッコ内は選者/日付は封切り日)
【表ベスト】
1位 ゾディアック(稲垣、浦崎、えいwithフォーン、河原、黒田、品田、高橋、
   野村、まつかわ、みのわ、江戸木)6月16日
   http://wwws.warnerbros.co.jp/zodiac/
1位 あるスキャンダルの覚え書き(浦崎、江戸木、大森、高橋、森、田中、野村、
   まつかわ、宮城、品田/前号参照、宮崎/前号参照)6月2日
   http://movies.foxjapan.com/notesonascandal/
3位 ボルベール<帰郷>(秋本、馬場、河原、塩田、品田、高崎、田中、まつかわ、
   宮城)6月30日
   http://volver.gyao.jp/
4位 ザ・シューター/極大射程(秋本、稲垣、江戸木、品田、西脇、森)6月1日
   http://www.shooter-movie.jp/
4位 プレステージ(馬場、浦崎、品田、高橋、西脇、まつかわ)
   6月9日 http://prestige.gyao.jp/
6位 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ(秋本、塩田、高橋、まつかわ、松島)
   6月予定   http://www.funuke.com/index.html
7位 石の微笑(河原、高崎、高橋)6月下旬
   http://www.eiga.com/official/ishinobisyo/
7位 終わりよければすべてよし(田中、野村、渡部)6月2日
   http://www.jiyu-kobo.com/
7位 サイドカーに犬(品田、高橋、野村)6月23日 http://sidecar-movie.jp/
7位 300[スリーハンドレッド](江戸木、西脇、みのわ)6月9日
   http://wwws.warnerbros.co.jp/300/
7位 ハリウッドランド(秋本、内海、みのわ)6月16日
   http://www.movies.co.jp/hollywoodland/
7位 アポカリプト(江戸木、高村、皆川)6月16日※スバル座先行6/9
   http://www.apocalypto.jp/
13位 雲南の少女 ルオマの初恋(浦崎、加藤)6月16日
   http://www.ruoma.jp/
13位 恋する日曜日/私。恋した(えいwithフォーン、増當)6月9日
   http://w3.bs-i.co.jp/jbreak/
13位 選挙(加藤、松島)6月9日 http://www.laboratoryx.us/campaignjp/
13位 転校生―さようならあなた―(増當、松島)6月23日
   http://www.tenkousei.net/top.html
13位 不完全なふたり(河原、佐々木)6月30日 http://www.bitters.co.jp/fukanzen/
13位 舞妓Haaaan!!!(内海、浦崎)6月16日
   http://www.maikohaaaan.com/index.html
19位以下
●イラク 狼の谷(松島)6月23日 http://www.at-e.co.jp/ookami/
●キサラギ(横森)6月16日 http://kisaragi-movie.com/
●女帝[エンペラー](浦崎)6月2日 http://jotei.gyao.jp/
●憑神(内海)6月23日 http://tsukigami.jp/index.html
●ブリッジ(吉田)6月16日 http://the-bridge-movie.com/
●マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶(浦崎)6月30日
 http://www.marcello.jp/
○モン族の少女パオの物語(加藤)7月下旬 http://www.imageforum.co.jp/pao/
○キャプティビティ(内海)秋 http://www.captivity.jp/
○22才の別れ Lycoris葉見ず花見ず物語(増當)※大分先行上映済/東京は8月
 http://www.22saino-wakare.com/
<○印は6月封切でないため集計の対象外です>

【裏ベスト】
1位 アポカリプト(秋本、品田、高橋、西脇、野村、松島、宮城)6月16日
   ※スバル座先行6月9日 http://www.apocalypto.jp/
2位 あるスキャンダルの覚え書き(内海、三留、河原/前号参照、黒田/前号参照、
   高崎/前号参照、まつかわ/前号参照)6月2日
   http://movies.foxjapan.com/notesonascandal/
3位 選挙(浦崎、佐々木、高橋、まつかわ)6月9日
   http://www.laboratoryx.us/campaignjp/
3位 腑抜けども、悲しみの愛を見せろ(稲垣、野村、三留、森)6月予定
   http://www.funuke.com/index.html
5位 きみにしか聞こえない(えいwithフォーン、加藤、増當)6月16日
   http://www.kimikoe.jp/
5位 恋する日曜日/私。恋した(内海、塩田、吉田)6月9日
   http://w3.bs-i.co.jp/jbreak/
5位 ザ・シューター/極大射程(加藤、塩田、高村)6月1日
   http://www.shooter-movie.jp/
5位 スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー(江戸木、大森、河原)6月2日
   http://sketch.cinemacafe.net/
5位 ブリッジ(秋本、安藤、西脇)6月16日 http://the-bridge-movie.com/
5位 舞妓Haaaan!!!(馬場、えいwithフォーン、田中)6月16日
   http://www.maikohaaaan.com/index.html
11位 イラク 狼の谷(秋本、江戸木)6月23日 http://www.at-e.co.jp/ookami/
11位 雲南の少女 ルオマの初恋(暉峻、松島)6月16日 http://www.ruoma.jp/
11位 監督・ばんざい!(品田、森)6月2日
   http://www.office-kitano.co.jp/banzai/
11位 キサラギ(田中/前号参照、皆川/前号参照)6月16日 http://kisaragi-movie.com/
11位 女帝[エンペラー](品田、宮城)6月2日 http://jotei.gyao.jp/
11位 図鑑に載ってない虫(塩田、皆川)6月23日 http://www.zukan-movie.com/
11位 それでも生きる子供たちへ(内海、まつ)6月9日 http://kodomo.gyao.jp/
11位 テレビばかり見てると馬鹿になる(加藤、野村)6月9日
   http://www.fullmedia.jp/tvbaka/
11位 転校生―さようならあなた―(野村、まつかわ)6月23日
   http://www.tenkousei.net/top.html
11位 ハリウッドランド(稲垣、品田)6月16日
   http://www.movies.co.jp/hollywoodland/
22位以下
●アコークロー(松島)6月16日 http://aco-crow.com/
●雲南の少女 ルオマの初恋(内海)6月16日 http://www.ruoma.jp/
●吉祥天女(内海/前号参照)6月 http://www.kisshohtennyo.jp/
●グラストンベリー(河原)6月下旬 http://www.glastonbury.jp/
●ジェイムズ聖地へ行く(渡部)6月23日 http://www.roundtablecinema.com/
●ストレンジャー・コール(秋本)6月16日
 http://www.sonypictures.jp/movies/whenastrangercalls/index.html
●300[スリーハンドレッド](横森)6月9日 http://wwws.warnerbros.co.jp/300/
●ゾディアック(西脇)6月16日 http://wwws.warnerbros.co.jp/zodiac/
●憑神(馬場)6月23日 http://tsukigami.jp/index.html
●不完全なふたり(高崎)6月30日 http://www.bitters.co.jp/fukanzen/
●プレステージ(黒田)6月9日 http://prestige.gyao.jp/
●ボルベール<帰郷>(稲垣)6月30日 http://volver.gyao.jp/
●ラッキー・ユー(高橋)6月23日 http://wwws.warnerbros.co.jp/luckyyou/
○甘い泥(渡部)未定
 http://www.nhk.or.jp/sun_asia/aff/j/6th_04.html
 ※NHKアジアン・フィルム・フェスティバルHP
○イタリア的、恋愛マニュアル(えいwithフォーン)7月
 http://www.renaimanyuaru.com/
○シュレック3(安藤)7月21日 http://www.shrek3.jp/site/index.html
○モン族の少女パオの物語(暉峻、松島)7月下旬
 http://www.imageforum.co.jp/pao/
○私たちの幸せな時間(暉峻)初夏 http://www.shiawasenajikan.jp/
<○印は6月封切でないため集計の対象外です>

【総合】
1位『あるスキャンダルの覚え書き』
2位『ゾディアック』
3位『ボルベール<帰郷>』
同列3位『アポカリプト』
5位『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』

◆◇◆執筆者プロフィール、近況、著作はHPに掲載◆◇◆
   http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest

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★秋本鉄次さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
  ●ザ・シューター/極大射程
  ●ハリウッドランド
  ●ボルベール<帰郷>

  アクション好きオヤジ待望ご用達の「ダイハード4.0」はまだ見られないのが残念だ
 が、「ザ・シューター」はお待たせの間に見るのに絶好の男性アクション。ほとんど任
 侠映画の呼吸で楽しめる。「米国残侠伝 血染の豪銃」って感じで、ラストの殴り込み
 のマーク・ウォルバーグは背中に唐獅子牡丹を背負っているかのようだ。悪役のネッ
 ド・ビーティはルックス的にさしずめ遠藤太津朗の役どころ。「ハリウッドランド」は
 「LAコンフィデンシャル」「ブラックダリア」あたりと一脈通じる40~50年代ハリ
 ウッド裏の顔ミステリーで、こういう映画が結局一番飽きないね。「ボルベール」
 は“つけ尻”までして熱演のペネロペ・クルスのバイタリティーに往年のイタリア女優映
 画の粋を見る思い。そして、邦画で圧倒的、予想外にイイのが「腑抜けども~」の佐藤
 江梨子! 下から仰ぎ見るカメラワークでヒロインの性悪で淫靡な肉体の全容に、この
 監督はノッポ・フェチに違いないと確信。オトモダチ? 昔のATG映画みたいなクサ
 い題名とは裏腹に、しっかり現状(イマ)を撃っている。サトエリはひょっとして今年
 の主演女優賞?
 
 【裏ベスト】
  ●ブリッジ
  ●アポカリプト
  ●イラク 狼の谷
  ●ストレンジャー・コール

  「ブリッジ」の死をウォッチングする偽善的じゃないドキュメンタリー姿勢が我が意
 を得たり。「アポカリプト」は私の信頼のおける同業及び同業界女性たちがこぞっ
 て“生理的に受け付けないワ”“勘弁して”と絶句したモンダイ作。メル・ギブソンの原始
 回帰、肉体信仰はかなりヤバいとこまで行っているが、悪食の私はそこが興味津々! 
 というと彼女たちに嫌われそうだが。トルコ映画の「イラク~」は「ザ・シューター」
 と呼応するかのような“鬼畜米帝・死んでもらいます”映画。トルコの現在置かれている
 立場も良く分かる。こちらも任侠映画の呼吸。タフガイ悪役ビリー・ゼーンは天津敏
 か、山本麟一か。ヒロイン・ホラーの快作「キャピティビティ」はどうやら秋に飛んだ
 ようなので、同じくヒロイン・ホラー「ストレンジャー・コール」を滑り込ませた。血
 を極力出さない演出に好感。ヒロインのカミーラ・ベル嬢はリア・ディゾン、山本モ
 ナ、滝川クリステル、水野真紀などを連想させるタレ目泣き顔美人で、なぜか男の嗜虐
 心を誘発する。邪悪な気分で楽しんだ。

 【封切は終わったけれど…】
  まずは、電脳版への移行、おめでとう! 角川メディアを乗っ取る気で行こう。ド
 キュメンタリーばやりの今年だが、5月に公開が早まった「コマンダンテ」は、オリ
 バー・ストーン対カストロという顔合わせは興味津々だった。互いにキツネとタヌキと
 いうか、ヘビとマングースというか。カストロがソフィア・ローレンやブリジッド・バ
 ルドーが好きと知って親近感。やっぱりある程度マトモな社会主義国のドンを長年やっ
 てきただけあって、発言にもブレがない。バイアグラの話まで出てくるのがオカシイ。
 男の顔は履歴書、という観点から言えば、カストロは年輪を刻んだ味のある顔をしてい
 るが、ストーンは“映像ヤマ師”らしく、いやしい顔に映るのはなぜ? 「ワールド・ト
 レード・センター」を見て『ストーンらしくない。変節したのか』とガッカリした僕の
 気のせいか。「ボラット」も“捏造ドキュメンタリー”としては面白いし、パメラ・アン
 ダーソンにひとめぼれしてしまう主人公も同好の士として歓迎するが、イレ乳程度で愛
 がさめるあたりまだまだパツキン修行が足らんよ、ボラット君! 「寂しい時は抱きし
 めて」は、“とりあえず寝てから考えよう”みたいな官能ラブストーリー。往年の「ジョ
 ンとメリー」の入念セックス版みたい。見ていた時はけっこう興奮したのだが、時間が
 すぎるとエロ細かい描写を忘れてしまうとは、トシかね。

★安藤智恵子さん(ライター)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●なし

  めぼしいものをまったく見ていません。なんてことを堂々と書いてしまうのは映画ラ
 イターとして、どうなんでしょう……。
 
 【裏ベスト】
  ●ブリッジ
  ●シュレック3 ※7月21日公開

  ゴールデン・ゲート・ブリッジからの飛び降り自殺を防止したい映画監督が作ったド
 キュメンタリー。離れたところから橋を撮影し続けて、自殺者が出ると、その遺族や友
 達にインタビューをする。死んでほしくない、でも死んでくれなきゃ映画にならない。
 なんということ! 監督の強靭な精神力が、ある意味、映画そのものよりも衝撃的だ。
 『シュレック3』は、すっかり毒が抜けてしまって、これならシュレックである必要が
 ない。でも、大好きなエリック・アイドルが出てるから許します。

 【封切は終わったけれど…】
  『スパイダーマン3』をシネコンで鑑賞。あいかわらず不細工で、はた迷惑なバカッ
 プルがどうなろうと知ったこっちゃないけど、スパイダーマンことピーターが、ワルに
 なったら急に女にモテるってのが笑いのツボに入りました。アメリカでも「ちょい不
 良」ブーム? 残念なのは、ピーターより断然かっこいいハリーが××××××××(ネタ
 バレ自粛)。

★稲垣都々世さん(映画評論家)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●ザ・シューター/極大射程
  ●ゾディアック

  「ザ・シューター/極大射程」は、名誉勲章に心惹かれる単純な愛国者にして、協力
 者(友人の未亡人)に降りかかる身の危険にも気づかぬ主人公のおマヌケぶりや、繊細
 さに欠けるイケイケのストーリー・テリングが、お猿顔のマーク・ウォールバーグと
 ぴったり合ってサイコーに楽しめる。「ゾディアック」はその対極にある作品。それぞ
 れの登場人物の心理をじわっと表現して、スタイル先行、詰め甘気味だったフィン
 チャーの最高傑作になった。
 
 【裏ベスト】
  ●腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
  ●ハリウッドランド
  ●ボルベール<帰郷>

  「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」は、イヤミな女の気分が全開して大笑い。
 【表】にすべきか。「ハリウッドランド」は、いつも画面の面積を占領するだけのウド
 の大木だったベン・アフレックがちゃんと演技もできることを証明した記念すべき作
 品。アルモドバルはうまいし、「オール・アバウト・マイ・マザー」では母の気持ちが
 よく理解できたけれど、「ボルベール<帰郷>」のように女であることをこんなにも強
 く前面に出されるとうろたえる。

★内海陽子さん(映画評論家)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●キャプティビティ ※秋公開
  ●憑神
  ●ハリウッドランド
  ●舞妓Haaaan!!!

  主人公・妻夫木聡の母役の夏木マリが、朝、畳に落ちていた息子の髪をつまみ、すば
 やく着物の袂にしまうしぐさにも好感を持つ『憑神』。若く見えるダイアン・レインが
 老けた表情をエレガントにさらして演じる不倫妻の苦しみも可憐な『ハリウッドラン
 ド』。奇妙きてれつなオタク男を全身の筋肉をフル活動させて演じる阿部サダヲにひざ
 まづきたくなる『舞妓Haaaan!!!』。演じ手の真剣な遊び心に、観客も真剣な柔軟性で
 応えていかなければ。

 【裏ベスト】
  ●あるスキャンダルの覚え書き
  ●雲南の少女 ルオマの初恋
  ●恋する日曜日/私。恋した
  ●それでも生きる子供たちへ

  緑青々と美しい「棚田」の風景でやさしく包みながら、少女の胸のときめきを描く
 『ルオマの初恋』。自分の運命を知りながら、ほとばしる生命力でひとを恋してしまう
 少女の無念さが痛ましい『私。恋した』。リドリー・スコット父娘や、スパイク・リー
 の手のかかった監督作より、くず拾いをするブラジルの兄妹や、盗みが生業のイタリア
 の少年のエピソードが心にしみこむ『それでも生きる子供たちへ』。描く対象への作り
 手の情熱の差が歴然だ。

★馬場英美さん(ライター、エディター)─────────────────────

 【表ベスト】
  ●プレステージ
  ●ボルベール<帰郷>

  『プレステージ』は、マジシャン同士の派手なイリュージョン対決を描いた作品かと
 思いきや、マジックの種を探ろうとライバルの日記を盗んだり、いい大人が相手をおと
 しめるために子供じみた罠をしかけたりと、意外と人間臭い話でびっくり。見る者を煙
 に巻くラストはもちろん、いい意味で予想を裏切ってくれる作品です。ヒュー・ジャッ
 クマン、クリスチャン・ベールを手玉に取る魔性の女スカーレット・ヨハンソンもエロ
 くていい。彼女には、ちょっとボンテージぽい衣装が本当によく似合う。『ボルベール 
 <帰郷>』は、こそこそと隠れ回る母ちゃんのキャラが最高! つけ尻をつけてヒロイ
 ンを熱演したペネロペ・クルスも、たくましいスペイン女になりきっていて、ちょっと
 見直しました。

 【裏ベスト】
  ●舞妓Haaaan!!!
  ●憑神

  今月は日本映画から2本。『舞妓Haaan!!!』は、いわゆる宮藤官九郎ノリが炸裂
 で、途中まではすごく楽しめる。が、阿部サダヲのあまりのハイテンションぶりと何で
 もありの展開に、途中からお腹いっぱいに。濃い中華料理のフルコースを食べさせられ
 ているようで、少々胸焼けしてしまいました。『憑神』は、ある雑誌の編集担当として
 降旗監督のインタビューに立ち会わせていただきましたが、そのときに監督がおっ
 しゃっていたように、落語のようなノリと軽妙洒脱なテンポが楽しい映画です。とく
 に、貧乏神に扮した西田敏之の妙演が特筆もの。それゆえに他の役者の演技力不足が目
 立ってしまうのが、残念なところではありますが…。

★浦崎浩實さん(激評家=映画評・劇評)─────────────────────

 【表ベスト】
  ●マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶
  ●女帝[エンペラー]
  ●あるスキャンダルの覚え書き
  ●雲南の少女 ルオマの初恋
  ●ゾディアック
  ●プレステージ
  ●舞妓Haaaan!!!

  今月は傑作・秀作・佳作ぞろい。「それでも生きる子どもたちへ」「300/スリー・
 ハンドレッド」「ボルベール<帰郷>」「ブリッジ」「石の微笑」も加えたいところ
 だが、煩雑を恐れ、上記6作に絞った。“マストロヤンニ”は、イタメシならぬ、イタシ
 ネ全盛期を彷彿、泣けました。「女帝」のヒロインは、ラシーヌ「フェードラ」や我が
 「合邦」の玉手御前ふうでもあって、複雑怪奇、愉快だ。でもエンペラーはおかしい。
 エンプレスでは?

 【裏ベスト】
  ●選挙

  “裏”ならぬ、今月気がかりな見落とし作品です。私の周辺の評判は上々。ちくしょ
 う!

 【封切は終わったけれど…】
  「俺は、君のためにこそ」とかの口直しに、東映旧作の「あゝ決戦航空隊」「あゝ同
 期の桜」「最後の特攻隊」など(DVDで再セールものあり)に新たな脚光が当たるこ
 とを願っています。「俺は、君のために~」など、とても映画の内に入りませんから。

★えいwithフォーンさん(シネマブロガーズ)──────────────────

 【表ベスト】
  ●恋する日曜日/私。恋した
  ●ゾディアック

  廣木隆一『恋する日曜日/私。恋した』は、フランソワ・オゾン『ぼくを葬る』にも
 似た静謐な作品。死期を前にした女子高生なぎさが“不倫という汚いことで時間を無駄
 遣いしている”初恋の彼に投げかける「あたりまえに明日が来るなんて思わないで!」
 の一言が、日常=安穏の錯覚を突き崩す。一方、ドキュメンタルなタッチの中、日常に
 潜む恐怖をあぶり出すのがデビッド・フィンチャー『ゾディアック』。マーク・ラファ
 ロの耳につくハスキー・ヴォイスを因子に醸成される不安感。その頂点で映画はそれま
 での客観的視点を離れて主観スリラーへと変貌する。重厚かつ正攻法の映画と思わせ、
 実は最後に待ち構えるこの大きなギミック。フィンチャーならではの語り口に心底酔わ
 された。

 【裏ベスト】
  ●舞妓Haaaan!!!
  ●きみにしか聞こえない
  ●イタリア的、恋愛マニュアル ※初夏公開

  平成の喜劇王・阿部サダヲ主演『舞妓Haaaan!!!』は、奇しくも本作が遺作となった
 植木等の「出世コメディ」映画を想起させる。果たして両者のバトンタッチは巧くいっ
 たのか? 『きみにしか聞こえない』は、叙述トリックという特質ゆえに映像化がひと
 きわ困難な乙一の世界に新鋭が挑戦した意欲作。 これが監督デビューとなる荻島達也
 は、羊の原毛やタンポポの綿毛のように柔らかな 原作の空気感をキャメラに捉えるべ
 く、風や光にまでも神経を尖らせる。 やはり映画はディテールに心を砕いた丁寧な絵
 作りが大切だ。これは韓流か?----と思わせるベタなタッチのエピソードに始まり、
 徐々にイタリア映画ならではの艶笑コメディへと移行してゆく『イタリア的、恋愛マ
 ニュアル』も買い。物語の輪郭を際立たせるパオロ・ブオンヴィーノの音楽も60~70
 年代ヨーロッパ映画のテイスト。“劇伴”という言葉を久しぶりに思い出させてくれた。

 【封切は終わったけれど…】
  『クィーン』。ダイアナの死を悼み、生前の彼女を礼賛する人々-----。彼らを「メ
 ディアに煽られ、ムードに流された」と批判することはとてもできそうにない。と言う
 のも、そのときスクリーンの前には、エリザベスに対して親近感を抱き、あまつさえ同
 情の念を抱いてしまった自分がいるからだ。理性を失い、あまりにもたやすくコント
 ロールされてしまう感情。それは映画を観ているあなたも同じだと、その脆弱さと危険
 性を、合わせ鏡にして告発するスティーブン・フリアーズ。これは痛烈だ。

★江戸木純さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  1位)ザ・シューター/極大射程
  2位)300[スリーハンドレッド]
  3位)アポカリプト
  4位)ゾディアック
  5位)あるスキャンダルの覚え書き

  1位)は70年代の男性派アクションを思わせる硬派な作りが嬉しい快作。マーク・
 ウォルバーグのアクション・ヒーローぶりも予想以上にいい。2位)くどいほどのケレ
 ン味と濃厚なマッチョ感で満腹感を味わえるデジタル歌舞伎。胸やけ寸前の心地よさ。
 3位)メル・ギブソンが病的なまでのお下劣嗜好で魅せる秘境残酷アドベンチャー。嘔
 吐寸前の気持ちよさ。4位)デビッド・フィンチャーが繊細に描くハリウッド版「殺人
 の追憶」。パワフルで刺激的だが、ちょっと長い。5位)いい人より絶対悪役や異常な
 役が似合う“イギリスの市原悦子”ともいうべき名女優ジュディ・デンチがその真の凄み
 を発揮した底なしに怖い映画。

 【裏ベスト】
  1位)イラク 狼の谷
  2位)スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー

  1位)は、キャノンやヌー・イメージが製作してきた、パレスチナ・ゲリラを悪役に
 したイスラエル資本のハリウッド製B級アクションの真逆の視点から描いた反米活劇。
 こうした映画にゲーリー・ビジーやビリー・ゼインが極悪非道なアメリカ人役で出演し
 ているのが偉い。2位)建築には詳しくないというシドニー・ポラックのわかりやすい
 視点が功を奏したよくできたドキュメンタリー。

 【封切は終わったけれど…】
  『パッチギ! LOVE&PEACE』。「蒼き狼」「俺は、君のためにこそ死にに行
 く」「神童」「プルコギ」…、尋常ではないヒドさの日本映画を立て続けに見て、日本
 映画の技術、演出、演技の壊滅状況に途方に暮れる中、完璧にはほど遠く、様々に問題
 を併せ持ちながら語る価値は十分にあるこの映画の“まともな芝居”に癒された。この国
 の現在の映画作りには根本的に問題があると思う。今月の公開作にも「ラストラブ」と
 いうメガトン級の愚作があった。

★大森さわこさん(「ロスト・シネマ 失われた『私』を求めて」筆者)───────

 【表ベスト】
  ●あるスキャンダルの覚え書き

  前回の号ですでに好評の映画ですが、確かにおもしろい。高校生との関係にのめり込
 むケイト・ブランシェットの教師役も、実はむずかしいと思うが、ケイトはうまい(そ
 れにキレイ)。家庭のさりげない描写に(意外に)説得力があるので、彼女がフラフ
 ラっと危ない状況にいくのがよく分かる。中年にさしかかった女の微妙な心理が出てい
 た。
  とはいえ、もちろん、本当の主役は“ど迫力”のジュディ・デンチで、最後は彼女がハ
 ンニバル・レクターに見えてしまった(いっそ、シリーズ化したらどうでしょう)。

 【裏ベスト】
  ●スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー

  アメリカの建築家フランク・ゲーリーの創造の秘密に彼の友人、シドニー・ポラック
 監督が迫った“ふだん着のドキュメンタリー”。
  リスクを背負う覚悟なしでは創造は生まれない。そして、年を重ねると、自分が神の
 領域に行けないことを知り、他人との共同作業が楽しくなる。
  そんなフランクの人間くささが、おもしろかった(私自身は建築のことは、よく知ら
 ないんですが)。

 *2年がかりの書き下ろし本が河出書房新社より6月15日に発売です。タイトルは「ロ
 スト・シネマ 失われた『私』を求めて」。現代の“ロスト(迷い、喪失)”をテーマに
 したエッセイで、30本の内外の近作を収録。人々の生き方を探ってみました(詳細は
 筆者紹介で)。

★加藤久徳さん(映画ライター)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●選挙
  ●雲南の少女 ルオマの初恋
  ●モン族の少女 パオの物語 ※7月下旬公開

  ドキュメンタリー映画やPR映画は、精鋭スタッフと共に苦労を分かち合って作るも
 のであり、時に35ミリのシネスコサイズで贅沢に作られていた時代もある! という
 映画史的事実を知っている人間から見たら、今風デジタル撮影『選挙』の軽やかな機動
 力は、もはやフィルムで真の記録映画(ドキュメンタリー)は作れないのでは? と思
 わせるほど、迫力と面白さに満ちていた。
  想田和弘監督は、親友・山内和彦が川崎市議会補欠選挙に出馬する姿を、全ての打ち
 合わせ、事前調査もすることなく、たった一人で、製作・撮影に臨んだ。撮り直しのき
 かない場当たり一発勝負で全編が貫かれている。デジタルキャメラならではの効能がこ
 こまで発揮された映画を僕は知らない。お金がないからとか、デジタルの方が画面作り
 に相応しいとか、それが今の主流だからという理由ではない。ある決められた一定の時
 期(選挙期間)に、一つの対象を本気で克明に追うのなら、機動力のあるデジタルキャ
 メラでなければ成立しないのだと思い知らされた。監督一人で10カ月かけたという構
 成と編集は完璧な出来映え。自民党をバックに据えた日本流の選挙の可笑しさ、面白さ
 は半端じゃない。
  ベトナムや中国の山間部を舞台にした美少女の初恋を描いた映画が2本並んだのは偶
 然だが、双方とも素晴らしい出来映え。くっきりとした色彩豊かな映像は35ミリフィ
 ルムならではのもの。ルオマもパオも、演じたヒロインは共に魅力的。すれてないの
 だ。

 【裏ベスト】
  ●テレビばかり見てると馬鹿になる
  ●きみにしか聞こえない
  ●ザ・シューター/極大射程

 【封切は終わったけれど…】 ※正式公開6月30日
  5月に入って14日現在、試写室に出かけていない。今取りかかっている仕事を期日
 までに終わらせるためだが、それでも、マリオンで開催されたイタリア映画祭に例年ど
 おりに出かけてしまった。
  長編新作15本、短編5本、復元の無声クラシック映画1本という陣容だが、プログ
 ラムを見て、内容的に期待が持てそうと思ったのは、今年が初めて。それくらい今のイ
 タリア映画はパッとしない! というのではなくて、毎年の映画祭に選ばれてくる映画
 のテーマ、顔ぶれが“選者”の好みが出すぎて、昨年までは(ミニシアター時代なのに)
 配給会社が手を出さないような類の作品が軒を並べていた。しかし、今年はそうではな
 かった。自分が配給会社の立場で考えても、半数の作品は買ってもいいという気になっ
 たから(笑)。
  とはいえ、今回、自分が一番見たいと思っていたのは、買い手の決まっていない未公
 開作品ではなく、6月30日に公開されるドキュメンタリー『マルチェロ・マストロヤ
 ンニ 甘い追憶』の方だった。96年に急逝したイタリア映画界の伊達男マストロヤン
 ニの人となりや足跡を表わす過去の作品映像、関係者への新旧取り混ぜたインタビュー
 映像を駆使して人物像を描き出すもの。ただし、マストロヤンニが亡くなった翌年に3
 時間20分の長編ドキュメンタリー『マルチェロ、私は忘れない』が作られ、東京国際
 映画祭で上映されているので、今回正式公開される『甘い追憶』は、明らかに使用され
 る映像がだぶらないように配慮されている。すでにおいしい部分は前作でふんだんに使
 用されているので、今回の証言映像は、お宝に近いような絵柄が多い。何十年も前の
 ヴィスコンティやジェルミ、フェリーニが証言者としてモノクロ映像で顔を出すなん
 て、製作者の苦心(苦渋?)の程が目に見えるようだ。
  二番煎じとはいえ、この手の作品は、何が出てくるかが一番の楽しみで、国際スター
 として150本も映画に出ているマストロヤンニなら尚更だ。ざっと挙げると、脚本家の
 スーゾ・チェッキ・ダミーコとトニーノ・グエッラの登場は後々にも貴重。昨年死去し
 たフィリップ・ノワレが証言者として現れるのはドッキリもの。すっかり衰えていた
 が、最期の映像ではないかな? 日本ではオクラとなった『白人女に手を出すな』で共
 演のマストロヤンニと映画の顛末をノワレが語るのは聞き物だ。すでに故人となったス
 ターたちとの共演ショットで嬉しかったのは、ジャン・マリア・ヴォロンテとの共演作
 が長々と映ったこと。何の映画だろう? 思いつかないので今でも気になる。一瞬だが
 リチャード・バートン(『ローマの虐殺』監督はジョージ・P・コスマトス)やロ
 ミー・シュナイダー(『愛の幻』監督はディノ・リージで、ロミーの遺作一つ前の映
 画)との2ショットもあったが、どれもこれも劇場未公開だ。
  マストロヤンニは名作揃いだが、演技力で勝負のアート系と喜劇で占められるから、
 日本未公開が非常に多い。証言者としてリナ・ウエルトミューラー、リリアーナ・カ
 ヴァーニ、マルコ・ベロッキオら大物監督が出てくるが、すべて日本劇場未公開。イタ
 リア文化会館のおかげでベロッキオの『ヘンリー四世』だけは銀幕で見る幸運を得たけ
 ども、マニアの眼で見ていると、ストレスが出そうなドキュメントである。
  ほんの一カ月前、ジャック・ドゥミ映画祭で『25年目のロシュフォールの恋人た
 ち』と『ジャック・ドゥミの世界』を見たが、この2作でメインの証言者として登場す
 るのはカトリーヌ・ドヌーヴ。マストロヤンニと愛しあい、子(キアラ)まで成した大
 女優でも、正妻が睨みを利かしているせいか、『甘い追憶』では瞬き程度でしか現れな
 い。30人を超える豪華出演者だが、ドヌーヴがいないのは予想通りとはいえ(理解も
 納得もいくけれど)、やはり残念。
  『甘い追憶』をこの時に見て役立ったこともある。マストロヤンニが電話魔であるこ
 とが分かったことだ。キャメラの前に立っているとき以外は、電話ばかりしていたそう
 だ。翌日に見たN・モレッティの『カイマーノ』には、打ち合わせ中に電話ばかりして
 いる、やたらジャン・マリア・ヴォロンテのことを気にする映画スターが出てきたが、
 マストロヤンニがモデルだったのだと大いに納得したのだった。

★河原晶子さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●ゾディアック
  ●ボルベール<帰郷>
  ●石の微笑
  ●不完全なふたり

  「ボルベール」ではペドロ・アルモドバルの語り口にさらに旨味が加わって酔わせま
 す。
  シャブロル健在! の「石の微笑」。ジョニー・アリディとナタリー・バイの娘ロー
 ラ・スメットの存在感!
  諏訪敦彦監督の「不完全なふたり」で、パトリス・シェローの秘蔵っ子、ヴァレリ
 ア・ブルーニ=テデスキとブリュノ・トデスキーニが魅力を全開させています。
  そして、「毛皮のエロス」に続いてロバート・ダウニーJr.の怪演が興味を引く「ゾ
 ディアック」。

 【裏ベスト】
  ●グラストンベリー
  ●スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー

  今月は2本の異色のドキュメンタリーを。
  「グラストンベリー」で、30年間続く夏の野外ロック・フェスを映像で考察する
 ジュリアン・テンプル。イギリスという国の底知れぬ人間力(!?)を感じました。
  日本では建築家というとなにやら権威主義者のイメージが重なりますが、「スケッ
 チ・オブ・フランク・ゲーリー」の<彼>の仕事には遊び心が満ちています。

★黒田邦雄さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●ソディアック

  年代もののニュース・フィルムのような暗い映像が気になったが、フィルムではなく
 ヴァイパーというフルデジタルカメラで全編撮影されているそうだ。フィルムでもなく
 デジタルでもなくというような画質が妙にブキミで、映画の内容によく合っている。デ
 ヴィッド・フィンチャー監督が好きなサイコロジカルな世界だけに演出もぬかりはな
 く、連続殺人犯の挑発にアイデンティティを失っていく男たちの姿が実に生々しく描か
 れている。

 【裏ベスト】
  ●プレステージ

  イリュージョニストの話だが、19世紀末ロンドンの話なので魔術師と呼んだ方が似
 合いそう。つまり、イリュージョンのトリックもシンプルきわまりないのだが、それを
 映画のトリックにスライドさせたところがミソ。よくまあぬけぬけと、とは思うが、最
 後まで大いに楽しめた。「メメント」「インソムニア」同様、クリストファー・ノーラ
 ン監督はシンプルなネタで眩暈のような映画を作り上げる名人だ。

 【封切は終わったけれど…】
  中江祐司監督の「恋しくて」は愛すべき小品だが、若者グループのリーダー格である
 にぃにぃを演じた石田法嗣は大物になりそう。試写のあと配給会社の人に、“彼だけが
 プロの俳優で(他は現地採用の素人)、16歳で19歳の役を演じています”と教えても
 らったが、「スタンド・バイ・ミー」ではじめてリヴァー・フェニックスを見た時と似
 た印象を持った。“おすぎさんも注目していらっしゃいます”だって。

★佐々木淳さん(フリーエディター&ライター)──────────────────

 【表ベスト】
  ●不完全なふたり

  いつもギリギリのところまで男女を追い詰めて、互いに見えているはずなのに見えな
 い、行動(身振り)と心の不明瞭な境目をあぶりだす諏訪監督が今回描くのは離婚寸前
 の夫婦。これまでとは違い、こと(摩擦)はすでに起きていて、より淡々と(?)純化
 されたふたりの旅先での数日間が描かれる。ホテルの部屋に残されていく日々の痕跡
 (それはエキストラベッドの導入という象徴的出来事で始まる)は果たして二人が壊れ
 ていく証なのか、それとも、不完全なふたりがより強く結びついていこうという証なの
 か? どこまでも「個」と「個」としての男女の可能性を見つめる監督の視線が観るも
 のを惑わせ、放さない。

 【裏ベスト】
  ●選挙

  そこへ行くと、「選挙事務所」で起こることは狂っているけどバカバカしいほど明快
 だ。つまり、ここで人を動かすものはどこまでも「組織」の論理であって、初めて候補
 者となった主人公の「個」と「組織」では最初から相容れないことを、この映画は何か
 を追求したり、糾弾したりしようとせず、ただ素直に差し出しているから、リアルで面
 白く、ところどころ冗長に思えるようなシーンもかえって好感が持てた。主人公が実に
 あっけらかんと立候補動機を旧友たちに語るシーンにただただ唖然とし、国民投票法案
 が可決したという今、こんなやり方で票が集まってしまう日本の将来に、絶望的にもな
 るけれど。

 【封切は終わったけれど…】
  「赤い文化住宅の初子」。最近、映画やテレビになぜか氾濫している“不器用ゆえに
 不幸の連鎖を背負う主人公”の物語だが、タナダユキ監督のこの新作が、距離感とし
 て、いちばん好きだ。

★塩田時敏さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
  ●ボルベール<帰郷>

  今月はフランクフルトのニッポン・コネクションから全州(チョンジュ)国際映画祭
 と、三週間以上も渡り歩いていたので見逃し作品も少なくない。そんななか、カンヌ出
 品の「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ」は、今年のベスト10級の傑作だ。「嫌われ
 松子」のようなヤリ過ぎをセーブし、家族、姉妹、現代ニッポン人のコミュニケーショ
 ンを、絶妙なシニカルさで描ききる、ヒップでイケてる笑いのセンスが新鮮なのだ。

 【裏ベスト】
  ●ザ・シューター/極大射程
  ●図鑑に載ってない虫
  ●恋する日曜日/私。恋した

  裏も、特別これが、というわけではなく、二番手三番手といったかんじ。しかし一言
 付け加えておきたいのは、北野武が「監督・ばんざい」で大失敗した笑いを、「図鑑に
 載ってない虫」が軽々とクリアしている事である。ところで今年最高の裏ベストは、ソ
 ウルで観たキム・ギドクの最新作『息』だね。な、なんと、キム・ギドク初のミュージ
 カル(!?)“春夏秋冬、そして唄”だ。刑務所の面会所で唄う「♪ボム、ボム、ボム、ボ
 ム、春が来たぁ~」のメロディが耳について離れない(笑)。

★品田雄吉さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●ザ・シューター/極大射程
  ●ボルベール<帰郷>
  ●ゾディアック
  ●プレステージ
  ●サイドカーに犬

  「あるスキャンダルの覚え書き」は先月書いてしまいました。早とちりだったようで
 す。「ザ・シューター」は銃社会アメリカの違った1面を感じさせるハードボイルド・
 サスペンス・アクションの快作です。原作を大分前に読んで面白かったのですが、映画
 も締まった出来です。マーク・ウォルバーグがいい。「ボルベール」は女だけの、まさ
 にアルモドーバル的世界。濃密な、倒錯的エロティシズムが瀰漫しています。「ゾディ
 アック」は悪夢的現実がリアルに描かれています。「プレステージ」はマジックの世界
 をスリリングに描いているのと、クリスチャン・ベールの屈折感が良かったです。「サ
 イドカーに犬」は松本花奈が良かった。

 【裏ベスト】
  ●女帝[エンペラー]
  ●アポカリプト
  ●ハリウッドランド
  ●監督・ばんざい!

  「女帝」は、壮大な空回りみたいな映画でした。「アポカリプト」は、メル・ギブソ
 ンがどんどん変な方に突っ走っているように感じられました。「ハリウッドランド」を
 見ながら、かつて私の仕事上の先輩だった進藤光太さんが、TV映画シリーズ「スー
 パーマン」の吹き替え版翻訳をしていて、ロイス・レインの声をやった声優といろいろ
 あったことを思い出していました。進藤さんは、のちに劇場用映画の字幕翻訳でも大活
 躍されました。「監督・ばんざい!」は映画を作る話が北野流のひねりで展開されま
 す。しかしながら、私は昔から、映画を作る話を映画にするのは、映画作家の逃げ場で
 はないかと思っていて、今回の北野映画もあまり感心できませんでした。

★ジャンクハンター吉田さん(文筆系会社経営者)─────────────────

 【表ベスト】
  ●ブリッジ

  サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジに定点カメラを置いて自殺者を撮るタ
 ブーなアイデアは、ある意味でエリック・スティール監督自身の自殺行為でもあるが誰
 もやらないことを行なった意味ではパイオニアである。本作の最大のポイントは自殺す
 る者をメインターゲットにしていると思わせて、実は病んだ心を持つ者が増えている現
 象にメスを入れて、心のメンタルケアの必要性を訴えている部分。鬱は新手の現代病な
 んだと実感。

 【裏ベスト】
  ●恋する日曜日/私。恋した

  余命3ヶ月と死期の迫った高校生役を演じた堀北真希の次第に心が切迫されていく演
 技と、バックグラウンドで流れる懐かしの名曲が程良く映像とクロスオーバーし、結末
 が分かっているけども観る側へどこかノスタルジックさを感じさせてくれた。堀北の影
 ある演技力が発揮されたのは『ケータイ刑事』のテレビシリーズからデビュー間もない
 彼女を育て続けたプロデューサーの丹羽多聞アンドリウ氏の手腕によって成功した例で
 はなかろうか。

 【封切は終わったけれど…】
  劇場での上映終了滑り込みギリギリで『さくらん』を鑑賞したのだが、ストーリーが
 稚拙だとかの周囲の微妙な評判は安藤政信の演技が全て払拭させてくれた。主役は女郎
 たちなんだけど、父親も母親もわからない女郎の息子を演じた安藤が醸し出す孤独な表
 現や仕草など、土屋アンナを完璧に食っていた巧みな演技は素晴しかった。彼の出演し
 た作品を数多く観てきたが『さくらん』で最高の役者っぷりを初めて感じた。まさに裏
 の主役!

★高崎俊夫さん(編集者)────────────────────────────

 【表ベスト】
  ●石の微笑
  ●ボルベール<帰郷>

   <クロード・シャブロールは愛の欠如を描く詩人だ>と語ったのは、昔、『コール
 ド・ルーム』で初来日した時にインタビューしたジェイムズ・ディアデンだった。まさ
 に、『肉屋』は、愛が欠如した状態に人がおかれると何が起こるのかを定点観測のよう
 に描いた名作だったが、新作『石の微笑』にも、不可解で怪物的なまでに愛が欠如した
 キャラクターが登場する。何気ない郊外の田舎町の風景が、ふいに不気味な不協和音を
 かもし出す瞬間の怖さはどうだろう。『サイコ』にも似た感触、そう、シャブロールは
 トリュフォーよりもはるか以前に、卓抜なヒッチコック論を書いていたことに思い当た
 る。シャブロールの未公開のミステリー作品をすべて見てみたいという欲求に駆られて
 しまった。渋いが、瞠目すべき秀作だ。

 【裏ベスト】
  ●不完全なふたり

  諏訪敦彦監督は、前作『Hstory』で、映画そのものを解体するような極端な方法論
 で自らを袋小路に追いつめてしまったが、同時に、形式的な自己言及性だけでは、映画
 そのものはびくともしない、というパラドックスにも気づいたのではないか。本人曰
 く、『不完全なふたり』は、ロッセリーニの『イタリア旅行』が霊感源にあるとのこと
 だが、見ている間中、思い浮かべていたのはジョン・カサヴェテスの『フェイシズ』
 だった。あの痛切な夫婦崩壊劇を逆回転させたようなフィルムといえばよいか。いずれ
 にしても真率な感情が沸き起こる瞬間を凝視しようとする姿勢は、今のふやけた日本映
 画の中では貴重である。

 【封切は終わったけれど…】
  ゴールデンウィーク直前に、一週間だけ池袋シネマロサでひっそり公開された『サイ
 レンサー』(6月にタキ・コーポレーションからDVDが発売)は、意外な拾い物だっ
 た。末期癌に侵された女殺し屋ローズを『クィーン』のへレン・ミレンが演じている
 が、息子のような若い黒人のパートナー、マイキー(『ザ・エージェント』で落ち目の
 アメフト選手を演じ、オスカー助演男優賞を受賞したキューバ・グッディング・Jr)と
 の激しいセックスシーンまであって驚かされる。いくつになっても官能的な匂いをはな
 つヘレン・ミレンはほんとうに凄い。悪無限的な宿命の連鎖を断ち切ろうとするマイ
 キーの苦悩が、一挙に融解するラストの趣向もよい。

★高橋愉治さん(映画ライター)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●ゾディアック
  ●あるスキャンダルの覚え書き
  ●プレステージ
  ●サイドカーに犬
  ●石の微笑
  ●腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

  ほとんどオタク的といえるほど細部にこだわったデヴィッド・フィンチャー監督作品
 『ゾディアック』の密度の濃さに驚く。単なる小手先の“トリック”に終わらない見応え
 が得られる奇術映画『プレステージ』のクリストファー・ノーランといい、ハリウッド
 の中堅どころの個性派監督たちの仕事ぶりが頼もしい。一方、今年に入ってから小粒な
 がら面白い日本映画が増えてきた、という実感をさらに強めてくれたのが、『サイド
 カーに犬』と『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』。竹内結子とサトエリが対照的なヒ
 ロインに扮して引っ張るこの2作品、後者の永作博美の怪演もお見逃しなく!

 【裏ベスト】
  ●アポカリプト
  ●ラッキー・ユー
  ●選挙

  メル・ギブソンには『パッション』での変態サド趣味にさんざん嫌な冷や汗をかかさ
 れたたが、『アポカリプト』には「ここまでやれば立派だよ!」と脱帽。今回も満載の
 猟奇シーンにギョッとしつつ、ロナウジーニョ似の主人公の本家を遙かにしのぐ底なし
 の運動量と、異常な執念でそれを追う者たちとの激烈なチェイスに圧倒された。『選
 挙』は驚きと笑いが詰まったドキュメンタリーで、海外の映画祭を沸かせたとか。ただ
 し日本人にとっては、後で我に返ると笑うに笑えない問題提起が付く。『ラッキー・
 ユー』は“ギャンブル”と“人生”を巧みに重ね合わせた良質なドラマ。冒頭、主人公と質
 屋の中年女が交わす味のある会話にニヤリとさせられる。

 【封切は終わったけれど…】
  鶴田法男監督の『ドリーム・クルーズ』を観賞。『マスターズ・オブ・ホラー』向け
 の約60分の作品をむりやり長編に引き延ばした印象は否めないが、主役3人の迫真の
 熱演に加え、現代の海を揺らめくクルーザーに古典的な怪奇を出現させた鶴田監督の恐
 怖美学が炸裂する一作だった。

★高村英次さん(映画ライター)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●アポカリプト

  始まって1時間くらいまでは“今頃、こんなマヤ文明下のグロな殺し合いなんか何故
 映画にするんだ?”とゲンナリしたが、主人公のジャガー・パウが故郷の村に向って逃
 走する段になって俄然、面白くなってくる。生贄にされた死体で埋め尽くされた谷や
 ジャングルを抜けて、ジャガー・パウが滝の上から滝つぼ目掛けてジャンプすると、謎
 の文明ガイダンス映画がターザン真っ青の大冒険活劇に早変わり。密林を駆け抜ける疾
 走シーンを捉えた猛烈な横移動、それがどこかソフトフォーカスっぽく映ってポエジー
 なところが、個人的には好き。そして滝川クリステル似のジャガー・パウの妻に脱帽。
 なんたって彼女、深い穴の中で子供を守り、水中で出産までしちゃうんだから!

 【裏ベスト】
  ●ザ・シューター/極大射程

  ワイルドでやりたい放題の『アポカリプト』に較べるとメジャー大作ながら、この
 “罠にはまったスナイパーの復讐劇”は小粒に思えてしまう。マーク・ウォルバーグはま
 だ線が細く、もう少し年食った方がいい味が出てきそう。とにかくアクションがスピー
 ディーにたたみかけてめまぐるしいが、ウォルバーグとマイケル・ペーニャ(『ワール
 ド・トレード・センター』の生存警官)が敵の元スナイパーのコテージを襲撃するシー
 ンでの特殊部隊との攻防はほとんど戦争映画のノリで、あまりの物量&大爆破にド肝抜
 かれました。

 【封切は終わったけれど…】
  ケネディ暗殺の時、私は生まれたばっか(事件のあった年=63年の生まれ)で何も
 知らず、しかしダイアナ死亡の時はリアルタイムでニュースを見ていたので、『クイー
 ン』で描かれる英国王室と政府の対応の違いや英国民の感情の高ぶりなどいろいろ思い
 当たる節があって興味深かった。とはいえ、この映画がもうひとつ喰い足りないのは、
 主人公のエリザベス女王やブレア首相ら関係者が生存中なために、その隠された内輪話
 を虚実取り混ぜて描くことが叶わなかった点にある。つまり現女王や王室に配慮してい
 る、と思える部分がかなりある気がしたのである。ヘレン・ミレンのクイーンは申し分
 ない。しかしもっと素晴らしかったのがマイケル・シーンが演じたトニー・ブレアで、
 単に表情が似ているだけでなく、ブレアのトレードマークであるニカッとした作り笑い
 など絶品と言えましょう。

★田中千世子さん(映画評論家)─────────────────────────

 【表ベスト】
  ●あるスキャンダルの覚え書き
  ●ボルベール<帰郷>
  ●終りよければすべてよし

  『あるスキャンダルの覚え書き』はゾクゾクするほど面白かった。学校とか社会は単
 なる背景だと思う。主人公ジュディ・ディンチの強烈なオブセッションがはた迷惑で不
 気味でたまらなく人間くさいのがいい。『ボルベール』のお母さん幽霊も最高だ。羽田
 澄子監督の『終りよければすべてよし』は行政へ挑戦状をたたきつけていて勇敢だ。

 【裏ベスト】
  ●舞妓Haaaan!!!

  豪華だが単調きわまりない『女帝』や、たる~い『そのときは彼によろしく』のよう
 な映画を見るたびに『舞妓Haaaan!!!』を見習えと言いたくなる。つまりこの映画は
 しっかりと映画なのだ。

★暉峻創三さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●なし

 【裏ベスト】
  ●雲南の少女 ルオマの初恋
  ●モン族の少女 パオの物語 ※7月下旬公開
  ●私たちの幸せな時間 ※初夏公開

  普段はなかなか<裏ベスト>にしっくりくる作品が思いつかない自分だが、今月は<
 裏>ばかりで3本。いずれも主演女優の、素の姿とは全く別人の如き成り切りぶりが作
 品を救った。「裏」を返して言えば、いずれの作品とも監督の絵作り、脚本の構成など
 に若干の難を感じるのだが…。

★西脇英夫さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  1位)300[スリーハンドレッド]
  2位)プレステージ
  3位)ザ・シューター/極大射程

  1位は、何と言っても、劇画チックな映像の迫力に圧倒される。また、その強烈な映
 像にも見劣りしない俳優たちの肉体美と、演技力が素晴らしい。しかも、出来上がって
 みれば意外なリアリティを感じさせ、説得力に満ちている。2位は、とにかく二転三転
 する脚本がずば抜けている。ストーリー全体にトリックが張りめぐらされていて、まん
 まと騙されてしまう。随所に散らばった伏線に要注意。3位は、ご機嫌の本格的ポリ
 ティカル・アクション。月並みなストーリーだが、主役(マーク・ウォールバーグ)の
 魅力(その地味さがいい)で観せる。

 【裏ベスト】
  1位)ソディアック
  2位)アポカリプト
  3位)ブリッジ

  1位、実際にあった迷宮入りの連続猟奇殺人を、捜査の側から描いているだけに、
 淡々とした展開で、派手な殺人シーンなど期待するむきには、そっぽをむかれるかもし
 れないが、それだけに味わいのあるサスペンス物。2位は、ほとんど味もそっけもない
 ストレートな追跡、逃亡劇をここまで真面目に、誠実に描くかと突っ込みを入れたくな
 るが、映像のダイナミズムで結構楽しく観賞できる。3位は、ドキュメンタリーだが、
 自殺者をこれほど長時間にわたって、真正面からとらえた映像は初めてだろう。その衝
 撃だけで、観終わって、しばらく椅子から立ち上がれなくなる。

★野村正昭さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●ゾディアック
  ●終りよければすべてよし
  ●サイドカーに犬
  ●あるスキャンダルの覚え書き

  「セブン」も「ファイト・クラブ」も「ゲーム」も「パニック・ルーム」もデビッ
 ド・フィンチャー監督作品には、いつも不満たらたらだったのですが、長尺をものとも
 せずの、この剛速球ぶりにはビックリ。相当惚れ込みました。「終りよければすべてよ
 し」は終末医療のあり方を問う羽田澄子監督の最新長篇ドキュメンタリーで、両親を続
 けて看取った不肖の一人息子にとっては、何ともはや身につまされる作品でした。しか
 し親が死ぬという事態は、あらかじめ想定していた心境とは全く異なる実感で驚きまし
 た。私の場合は半年後位にドカーンと反動が来たけどね。「サイドカーに犬」は僅か数
 シーンしか出演していない樹木希林に、あっさり食われてしまう竹内結子のヒロインが
 何とも頼りなく、かつ影が薄く、ひょっとしたら、それが狙いなのかとも思え、「ある
 スキャンダルの覚え書き」は先月に引き続き、しつこく念押しをしておこうかなと。

 【裏ベスト】
  ●アポカリプト
  ●転校生―さようならあなた―
  ●腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
  ●テレビばかり見てると馬鹿になる

  巨額の製作費を使って、いったい何を考えてるんだよ、メル・ギブスン! とはい
 え、ラストのジャングルでの追っかけには、それなりにハラハラドキドキさせられたの
 が我ながら不甲斐ない。「転校生―さようならあなた―」は言いたいことが山ほどある
 セルフリメイクで、今回の結末には正直言って不満なのだが、それでも同じセルフリメ
 イクの「犬神家の一族」よりはマシかなあと。ついでに言わせてもらえば、気が早いが
 「櫻の園」のセルフリメイクは、できればやめてほしい。「腑抜けども、悲しみの愛を
 見せろ」は、サトエリファンゆえに一票を。馬鹿な遊び人としか言いようがない三文歌
 舞伎役者風情との恋愛を芸のこやしにして、女優道を究めてほしい。「テレビばかり見
 てると馬鹿になる」は、やはり最愛のヒロイン穂花の一般映画初主演作として。AVで
 の彼女の持ち味は全然生かされていないけれど、それでもDVDが発売されたら、やっ
 ぱり買ってしまうだろうなあ。

★増當竜也さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●恋する日曜日/私。恋した
  ●転校生―さようならあなた―
  ●22才の別れ Lycoris葉見ず花見ず物語 ※大分先行上映済/東京は8月

  『私。恋した』は、10年に一人の逸材・堀北真希の、今のところこれが最高傑作で
 しょう。廣木隆一監督ってもしかして天才? とマジに思ったほど、すべてが“映画”し
 ています。だって、堀北真希が夜道を自転車で走るんですよ! 大林宣彦監督の新作2
 作品は、かたや伊勢正三もの第2弾、かたやリメイクといった、観る前のこちらの偏見
 を打ち消す秀逸な出来。特に『転校生』は、セルフ・リメイクはかくあるべしといった
 自信と誇りと貫禄もお見事でした。

 【裏ベスト】
  ●きみにしか聞こえない

  気に入っているわけではありません。せっかくの面白いアイデアがTVドラマ的演出
 で台無しになっているのが悔しかったので挙げました。成海璃子はいいんだけどなあ。

 【封切は終わったけれど…】
  ようやく観た『パッチギ! LOVE&PEACE』は前作を超える感動と問題提起があ
 りました。TVアニメでは『地球へ…』を懐かしさ半分で観続けています。『ケロロ軍
 曹』の新主題歌、小倉優子の声が耳障りで耐えられない。そしてパチンコはやっぱり
 『必殺仕事人III』! かっこいいし、面白いし、何よりも勝ちやすい!

★まつかわゆまさん(シネマアナリスト)─────────────────────

 【表ベスト】
  ●あるスキャンダルの覚え書き
  ●ゾディアック
  ●ボルベール<帰郷>
  ●プレステージ
  ●腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

  今月の共通テーマは「執着する人々」かな。心穏やかにあるがままを受け入れて、い
 いかえれば何ものにも執着せず昨日より前のことは忘れて生きていければ幸せになれる
 んだろうなぁと思う。でもそれじゃあ物語はつまんないよね。という点でおもしろかっ
 た五本です。それぞれ役者がいい、脚本がいい、演出が巧みで、映画の醍醐味を味わわ
 せていただきました。

 【裏ベスト】
  ●選挙
  ●転校生―さようならあなた―
  ●それでも生きる子どもたちへ

  昨日までのことを忘れて、明日から先のことは考えない幸せな人たちはこうやってだ
 まされていくのでした。「3秒に一回名前を言う」「俺がなぜ公募で公認候補になれた
 か。たぶん東大出てるからだと思うよ」「妻っていっちゃいけないんだって。家内じゃ
 ないとだめだって」「奥さん仕事やめなさいって言うのよ」「ボク落下傘候補なんで
 す」2005年の市議会補欠選挙にて。もうすぐ参議院選挙がやってきます。

 【封切は終わったけれど…】
  しつこく「パッチギ2」お忘れなく。

★松島利行さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●腑抜けども、悲しみの愛を見せろ
  ●選挙
  ●転校生―さようならあなた―
  ●イラク/狼の谷

  澁谷辺りでいまどきよく見掛ける若い女の精神構造を『腑抜けども……』が解析して
 くれたが、『選挙』で辛くも当選する山内和彦市議のオタクぶりも彼女に通底する感じ
 がしてならない。『転校生』は前作より大人向きに面白く痛快だった。大林監督と私が
 同年でも観る側と作る側では年の取り方は違うはずだが……。『イラク』も悪役の定番
 ナチスのような米軍人がやっつけられて実に痛快だった。

 【裏ベスト】
  ●アコークロー
  ●雲南の少女 ルオマの初恋
  ●モン族の少女 パオの物語 ※7月下旬公開
  ●アポカリプト

  『アコークロー』も『吉祥天女』も監督が自らの脚本で撮って裸の王様になった気が
 した。中国やヴェトナムの少数民族の物語と並べてはいけないだろうが、そういう比べ
 方をすれば『アコークロー』の作り手はファンタジーを錯覚している。

 【封切は終わったけれど…】
  『ブラックブック』も面白かったが、『さらばベルリン』や『偽金造り』(オースト
 リア)、『私は英国王の給仕をした』(チェコ)など、第二次大戦中やその直後を描く
 作品が続出している。ナチス、ポツダム会談、イスラエル建国から今日の中東問題を問
 い返している。

★三留まゆみさん(イラストライター)──────────────────────

 【表ベスト】
  ●なし

 【裏ベスト】
  ●あるスキャンダルの覚え書き
  ●腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

  『さよならミス・ワイコフ』か、はたまた『その人は女教師』(岩下志麻!)かと思
 いきや、『噂の二人』へとハンドルを切り、物語は加速をつけてホラー色を増しなが
 ら、『コレクター』へと着地。もうこわいのなんのって。二大女優夢の饗宴地獄めぐり
 『あるスキャンダル~』。抱きしめたくなるほどに愛おしい『腑抜けども~』。爆発炎
 上する愛の四角関係。この容赦ないえぐさ、カッコ悪さ、息苦しさ。日常の中にある半
 端じゃない牧歌的無間地獄。二人姉妹のダメ姉である私は、この映画を全面的に支持す
 る。

 【封切りは“とうのむかしに”終わったけれど…】
  『夕暮れにベルが鳴る』(79)。『ストレンジャー・コール』のプレスには「カル
 ト映画のステイタスを得た映画」って書いてあったけど(そもそも「カルト映画のステ
 イタス」ってなんだ!?)、公開当時は一部のファンが支持するのみで、その後も「カル
 ト」にはならなかった。少なくとも日本ではそうだったはずだ。もちろん、『夕暮れに
 ベルが鳴る』は当時も今も傑作である。キャロル・ケイン、チャールズ・ダーニングと
 いう最高のキャスティング、フレッド・ウォルトンの巧みな演出。今、観てもこわさは
 色褪せない。けれども『ストレンジャー・コール』のサイモン・ウェストは、そのこわ
 さを完全にはき違えてしまった。携帯電話が当たり前になった現在では、たしかにオリ
 ジナルの恐怖は再現できないかもしれない。が、だからといって、防犯設備完備の人里
 離れた湖畔の大邸宅(しかもメイドつき)はないだろう。子供部屋はヒロインのいるリ
 ビングのすぐ真上でなければいけない。そして、犯人はずっと家の中にいて、子供を素
 手で引き裂いて、その血を全身に浴びて、階段をシルエットで降りてこなければならな
 いのだ。『ストレンジャー』を観たら、無性に『夕暮れ~』が観たくなった。かわい
 かったなあ、キャロル・ケイン。ほとんど『悪魔のシスター』だったなあ、ダーニン
 グ。映画にいちばん必要なのはセンスと妄想力である。『ストレンジャー』は悲しいほ
 どにそれが欠けている。

★皆川ちかさん(ライター)───────────────────────────

 【表ベスト】
  ●アポカリプト

  映画監督メル・ギブソンのポテンシャルがいよいよ花開いてしまった「アポカリプ
 ト」は、ものすご?く興奮しました。マジで。もの作りをする人は、本人自身がどんな
 ことを言うよりも、作品そのものに本性が出てくると実感。で、メルの本性は……これ
 からはサディスティック・メル・ギブソンと呼ぼう。

 【裏ベスト】
  ●図鑑に載ってない虫

  ちっちゃいちっちゃい日常生活を忘れさせてくれるはずの映画で、小ネタが氾濫とい
 う矛盾。でもこれが三木聡の“俺色”なのだから、色のないそつのない映画よりもずっと
 後を引くなー。『時効警察』ファンにとっても、どこまで耐えられるかを試される踏み
 絵のような作品ですね。伊勢谷友介、コメディ苦手? 

 【封切は終わったけれど…】
  「主人公は僕だった」。芸術のために人を殺していいかどうか、という命題の是非は
 人それぞれとして、ダスティン・ホフマン=評論家の立ち位置はとても皮肉に響きま
 す。当事者ではないから冷徹に観察できるのか、他人事意識で批評しているから敬遠さ
 れるのか。もの作りを仕事にしてる人、そんな人を観察する仕事をしてる人は、必見で
 すよ。

★みのわあつおさん(ポップ・カルチャー評論家)─────────────────

 【表ベスト】
  1位)300[スリーハンドレッド]
  2位)ハリウッドランド
  3位)ゾティアック

  『300』は、『シン・シティ』よりもフランク・ミラーそのもののビジュアルと世界
 観に驚き、『七人の侍』や『蜘蛛巣城』にも通じる黒澤明的な面白さで、試写のリピー
 ターになってしまった。フランクの原作のグラフィック・ノベルズの原作より面白い。
 『ハリウッドランド』は、ジョージ・リーブスの他殺説を立証する「事実」が巧みに盛
 り込まれ、ハリウッド・スキャンダル・マニアを夢中にさせる作品。『ゾディアック』
 は、フィンチャーの新たな一面に注目したい。

★宮城正樹さん(映画&音楽の批評・分析家)───────────────────

 【表ベスト】
  ●ボルベール<帰郷>
  ●あるスキャンダルの覚え書き

  共に女性ものながらアンチ(反)な女映画2本立て。ラ・マンチャの女を描いた『ボ
 ルベ』。東風吹きすさぶ冒頭の墓そうじのシーンから胸騒ぎ。『フライド・グリーン・
 トマト』な死体処理、台詞でしか出てこないアンモラルな父の姿など、母娘の絆以外の
 サブ・テーマにも激震が…。『あるス』は『危険な情事』系狂気のジュディ・デンチと
 『欲望という名の電車』ビビアン・リー的ファジーさのケイト・ブランシェットの演技
 戦がスリリングな傑作。

 【裏ベスト】
  ●女帝[エンペラー]
  ●アポカリプト

  反・ハリウッド活劇を目指した感がある作品の2本立て。往年のサム・ペキンパー風
 スロー、UPスローに加えワイヤー・アクトを絡ませた短ショットの連続で死の美学を
 創出した中・香合作『女帝』は、主要キャラ全員死亡という冒険にも挑んだ野心作。冒
 頭『地獄の黙示録』のヘリが原始的な走りになった『アポカ』は、前近代的スタイル活
 劇でバイオレンスがストレートに出た快作。いけにえ群像劇から追・逃走劇への一連の
 流れは鮮やかだ。

 【封切は終わったけれど…】
  アンチ・ジャンル映画2本。マイケル・ムーアの米批判ドキュメントを裏焼きした感
 覚の擬似ドキュ『ボラット(以下、略)』。ムーアの西部劇に対しこちらはアメリカ
 ン・ニューシネマをパロッた。「アメリカと合衆国」という呼び方なんか軽妙洒脱。沖
 縄舞台の兄妹もの『涙そうそう』を裏焼きした感じの広島舞台の『赤い文化住宅の初
 子』。過去編を露光過多のまばゆい撮影法にしたのも正解。恋愛部は大林宣彦監督の尾
 道3部作的純なところも。

★森直人さん(ライター)────────────────────────────

 【表ベスト】
  ●あるスキャンダルの覚え書き
  ●ザ・シューター/極大射程

  共にたいして期待せずに観て、えっらく面白かったです。

 【裏ベスト】
  ●監督・ばんざい!
  ●腑抜けども、悲しみの愛を見せろ

  殿の壮大な自爆ぶりに最初は戸惑い、珍しく2回目を鑑賞。すると、なんだかかっこ
 よく思えてきました。『腑抜け~』はサトエリをはじめ、キャスティングが抜群! 実
 際に業の深い方々ばかり……。

 【封切は終わったけれど…】
  少し前に劇場公開された銀杏BOYZのドキュメンタリー『僕たちは世界を変えること
 ができない』が、もうDVDで発売されております。これはかなり感動モノですよ。

★山田宏一さん(映画評論家)──────────────────────────

 1)『ざくろ屋敷』
  深田晃司監督の画ニメ(というのは静止画によるアニメ作品)。ついに劇場公開(7
 月、東京・渋谷のアップリンク・ファクトリーでレイトショー)が決定して、ファンと
 しては感無量です。必見。

 2)『マルチェロ・マストロヤンニ 甘い追憶』
  すでに没後10年!――ルキーノ・ヴィスコンティ監督『白夜』(1957)やフェデリ
 コ・フェリーニ監督『81/2』(1963)の忘れがたい名優、マルチェロ・マストロヤン
 ニの早すぎる追憶のドキュメンタリー。「ラテン・ラヴァー」というのは女性をとりこ
 にする魔力のようなものを持っていたイタリア生まれのハリウッドスター、ルドルフ・
 ヴァレンチノがまず思いだされますが、マルチェロ・マストロヤンニはもっと親しみや
 すい永遠の「イタリアの恋人」として記憶されることになりそう。
  マルチェロ・マストロヤンニはとびっきりの甘い美男子なのに、そんなことはおくび
 にもださずに、だらしない役やしがない役や滑稽な役をごく自然に演じてみせたので、
 誰もが甘く見すぎて、われこそはマストロヤンニと思いこみ、日本でも愛川欽也が「哀
 しみのマルチェロ」と自称していたことなどがありました(たしか、マルチェロ・マス
 トロヤンニがカトリーヌ・ドヌーヴと愛の生活に入り、ふたりのあいだに一女――現在
 女優のキアラ・マストロヤンニ――が生まれたときだったと思います)。「哀しみのマ
 ルチェロ」は日本だけでなく世界中にはびこり、あたかもマルチェロ・マストロヤンニ
 幻想とも呼ぶべき現象が生じたほどです。多くの男性がマルチェロ・マストロヤンニに
 同化するのではなく、われこそはマストロヤンニ、もうひとりのマルチェロなのだとい
 う幻想にうつつをぬかしたようなのです!! ジェームズ・ディーンやエルヴィス・プレ
 スリーのそっくりさんコンテストともちょっと違う、ある種の自惚れ鏡?――という意
 味では本当に映画的な、あまりに映画的な映画スターだったのでしょう。

 3)6月-7月封切かどうか不明なのですが、アキ・カウリスマキ監督『街のあかり』
 は宣伝用チラシによれば「夏、[東京・渋谷]ユーロスペースにて、しあわせロード
 ショー!」とのこと。※編集部註・7月上旬予定
  小林政広監督『愛の予感』はロカルノ映画祭でコンペ上映が決まったとのことですか
 ら、夏以後の封切になりそう。
  ともに単純な物語を簡潔に語って(このところ、だらだらと長い映画ばかりなのに、
 『街のあかり』はわずか1時間18分というきりっとひきしまった短さです)、たんた
 んとしたその語り口はものすごくうまい。うますぎて、かたや「小癪な!」、こなた
 「安易な!」と思われがちで損をするような気もします。
  とはいえ、虚飾を剥ぎ取った簡潔の権化、ロベール・ブレッソンも、いまや、知る人
 ぞ知る、はるかかなたの存在か。   

 4)封切は終わったけれど…たぶんまだ、ずっと(なにしろ面白いので)映画館で上映
 がつづきそうです――『クイーン』(スティ-ヴン・フリアーズ監督)。
  1997年8月31日にダイアナ元皇太子妃がパリでパパラッチに追いかけられて自動車
 事故で亡くなった事実(記録映像)とチャールズ皇太子との離婚後はもはや単なる民間
 人にすぎない彼女の死に対して英国王室が何の反応も示さなかったために国民からの不
 信感に悩まされるエリザベス女王とその事情を察知して王室と民衆の橋渡し的な役割を
 積極的に担って活躍する若きブレア首相の物語(演出された映像)をモンタージュして
 迫力満点のドラマチックな映画に仕立て上げた時局史劇とも言うべき快作。
  エリザベス一世役のかつての名優フローラ・ロブスンやベティ・デイヴィスをしのぐ
 見事なクイーン(エリザベス二世)役のヘレン・ミレンと若く行動的な労働党の――し
 かしエリザベス女王を「母のごとく」敬愛する――ブレア首相役のマイケル・シーンの
 対決も見ごたえがあり、エリザベス女王の夫君、フィリップ殿下(ジェームズ・クロム
 ウエル)ととくにブレア首相夫人(ヘレン・マックローリー)をにくにくしく描くあた
 りも痛快と言いたいくらいです。
  大森さわこさんのように「ちょっとイギリスびいき」になりそう。 

★横森文さん(ライター&役者)────────────────────────

 【表ベスト】
  ●キサラギ

  舞台の映画化だけあって、あえて舞台臭さを残したままの映像化だが、とにかくス
 トーリーが抜群に面白い! 焼身自殺したアイドルの一周忌を記念するオフ会に集った
 彼女のファン5人が、その死の意外な真相を推理していくというもの。この展開が最高
 に面白いのだ(ネタばれになるので一切何も言えないのが悔しいほど)。小栗旬、香川
 照之など個性的な役者たちの細かなこだわり演技もすごい。何度観ても楽しめる作品
 だ。

 【裏ベスト】
  ●300[スリーハンドレッド]

  史実としてみたら「こんなことあるかい!」と歴史に明るい人はツッコミまくってい
 るようだが、正直、そんなことはくそくらえ! ケレン味たっぷりの映像つるべ打ちに
 身悶えし、ハンパない役者たちの鍛えあげた体に陶酔し、無茶ともいえる戦いに身を投
 じる男たち300人の姿に“生きる”ということの本質を問われてしまう。この映画を楽し
 めないという人は損な人だ……と思う。

 【封切は終わったけれど…】
  「リトル・ミスサンシャイン」DVDで観たが、これは映画館で観るべきだったと即
 後悔。完全にバラバラの方向を向いている家族たちが、9歳の娘を子供の美人コンテス
 トに連れていくために車で旅に出る。その旅で家族の絆がひとつになっていくというも
 の。とにかくユニークな、キャラの際立った家族たちも面白いし、ひとつになっていく
 過程、クライマックスへの盛り上げ方も見事。観て損なしの映画だ。

★渡部実さん(映画評論家)──────────────────────────

 【表ベスト】
  ●終わりよければすべてよし

  この原稿を書いている5月現在は山形国際ドキュメンタリー映画祭のコンペティショ
 ン部門の予備選考(すでに応募作品は一千本を越えています)の真っ最中でありまして
 一般の試写もあまり見ておりません。そんな中「終わりよければすべてよし」は人間の
 終末医療に取材をしたドキュメンタリー映画として納得しました。何より羽田澄子監
 督、西尾清キャメラマンの北欧まで取材をするエネルギーに感服しつつ、どこまでも具
 体的な内容で共感できました。

 【裏ベスト】
  ●甘い泥 ※公開未定
  ●ジェイムズ聖地へ行く

  3月、アテネフランセ文化センターで開催されました「イスラエル映画祭2007」は
 盛況のうちに終わりました。実行委員長として深くお礼を申し上げます。「シリアの花
 嫁」「甘い泥」「クロース トゥ ホーム」「ジェイムズ聖地へ行く」などの注目作の
 一挙上映。そしてイスラエル映画財団のカトリエル・シホリ氏も来日されまして最近の
 イスラエル映画事情をお聞きすることができました。上映作品の中では個人的に「甘い
 泥」が圧倒的に素晴らしいものでした。「甘い泥」はキブツに住む少年が思春期を迎え
 た時、自分の母親が精神に異常をきたします。そしてまた、少年は今まで自分が生きて
 きたキブツという共同体に漠然とした疑問を感じてガールフレンドと共にキブツを脱出
 するという衝撃的なドラマでした。イスラエル建国の象徴のひとつであったキブツへの
 批判をテーマとした映画ですが、自国イスラエルでこのような自己批判の作品が作られ
 る事は、逆にイスラエル映画の将来に希望を見い出すことができます。ちょうど5月に
 は福島県の須賀川で「第19回すかがわ国際短編映画祭」が開催され、この映画祭でも
 イスラエルの短編映画(学生映画)が13年間にわたって紹介されています。イスラエ
 ルには1990~2000年に映画の仕事で7回ほど訪れていましたが、また、この国には是
 非、行きたいと思っています。狂牛病が問題になる以前に夏のテルアヴィブの海岸で食
 べたTボーンステーキ、それにサラダとビールがとても美味しかったことを思い出しま
 した。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
┣編集後記┫

◆最終号でございます。メールマガジン「試写室だより 封切はこれからだ!」は
「MovieWalker」(http://www.walkerplus.com/movie 株式会社角川クロスメディ
ア)の映画狂・江崎毅編集長にご提案をいただき、次号(6.29予定)から同サイトにて
「試写室ランキング」として新装開店することになりました。映画が大好きでパソコンを
やっている皆さんですから、「MovieWalker」はもう何度も訪れたことがあるに違いあ
りません。どんなに使い勝手がよくなるかも、たやすくご想像がつくことでしょう。ク
リックでどんどん好きなところから読め、上映スケジュールも瞬時に知ることが出来ま
す。そして閲覧無料!
◆というわけで「さようなら」ではありません。「ありがとうございました。これからも
よろしくお願いいたします」と言わせていただきます。読者の皆様、ご参加メンバーの皆
様、映画配給会社の皆様、映画館の皆様、ビデオ会社の皆様、媒体の皆様…このメルマガ
にかかわってくださったすべての方々のご協力、宣伝、アドバイス、激励のおかげで、こ
こまで続けて来られました。ふんどしを締めなおして、なおいっそう頑張る所存です。 
(れがあるF)

◆「将来、国際電電の交換手になれるから」という理由で、私に英語を勉強させてくれた
母から、手紙が届きました。「最近は景気も良くなってるみたいだし、あんたもそろそろ
一度くらい定職についたらどう?」あのですね、わたくしは確かに正社員になったことが
なく、つねにアルバイトまたはフリーランスという身分ではございましたが、いまだかつ
て一度も定職についてなかったことはないんですよ、お母さん! 来月から新しく生まれ
変わる「試写室ランキング」を見せて、この編集をやっている、と言ったら安心してくれ
るでしょうか(笑)。
◆読者のみなさま、今まで本当にありがとうございました。そして、驚異的低ギャラにも
嫌な顔ひとつせず、いつも内容豊かな原稿を下さった執筆者のみなさまに、心よりお礼を
申し上げます。みなさまから届くご感想やアドバイス、暖かい励ましのお言葉が、この零
細編集部をどれほど力づけてくださったことか! 今後ともどうぞよろしくお願いいたし
ます。
(れがあるU)

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■発行日:2007年5月30日
■発行者:れがある http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest
■定 価:315円(税込)
■このメールマガジンに掲載された文章の転載・転送は禁止されています
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