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2006年6月号
〓〓〓〓〓〓試写室だより 封切はこれからだ!〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓第二号〓〓〓

     映画を見るプロが選ぶ「ベスト映画」&「裏ベスト映画」
      ∴・∴・∴2006年6月封切り篇∴・∴・∴

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【ベスト】=これぞまぎれもなく、映画を見るプロが選んだ6月の最高作。心して見よ。
【裏ベスト】=出来、不出来は二の次、偏愛あり、ヒイキの引き倒しあり、極私的なケッサク選!
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┣今月の執筆陣(50音順)┫
◇秋本鉄次さん 映画評論家
◇安藤智恵子さん ライター
◇宇田川幸洋さん 映画評論家
◇内海陽子さん 映画評論家
◇馬場英美さん ライター兼雑誌編集者
◇浦崎浩實さん 激評家(映画評、劇評)
◇大森さわこさん 映画評論家
◇加藤久徳さん 映画ライター
◇河原晶子さん 映画・音楽評論家
◇黒田邦雄さん 映画評論家
◇佐々木淳さん ライター&エディター
◇塩田時敏さん 映画評論家
◇品田雄吉さん 映画評論家
◇高橋諭治さん 映画ライター
◇田中千世子さん 映画評論家
◇轟夕起夫さん 文筆稼業
◇西脇英夫さん 映画評論家
◇野村正昭さん 映画評論家
◇増當竜也さん 映画評論家
◇まつかわゆまさん シネマアナリスト
◇皆川ちかさん 雑文業
◇みのわあつおさん ポップ・カルチャー評論家
◇宮城正樹さん 映画&音楽の批評&分析家
◇宮崎祐治さん イラストレーター
◇森直人さん ライター
◇山田宏一さん 映画評論家
◇渡部実さん 映画評論家・日本大学藝術学部講師

◆各人のプロフィール、近況、著作はHPの「執筆者プロフィール」に掲載◆
    http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest

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★秋本鉄次さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ウルトラヴァイオレット
     http://www.sonypictures.jp/movies/ultraviolet/site/
  ●やわらかい生活
     http://www.yawarakai-seikatsu.com/
  ●トランスポーター2
     http://tp2.jp/
  ●花よりもなほ
     http://www.kore-eda.com/hana/

  美女戦士もの花盛りだが、やっぱ“活劇ヒロイン10年選手”のミラは年季が違う。
 「ウルトラ~」はもう“ミラ・ジョヴォ歌舞伎”。六方を踏んで大ミエを切る感じが
 最高。あの三白眼、鞭のようにしなる肢体にイチコロ。ノッポのバトル美女フェチと
 しては「トランス~」の女殺し屋ケイト・ノタも、淫乱、露出狂、変態でたまらん。
 邦画2本は“頑張らない”主人公にエールを。特に“いかにも蒲田にいそうな三十路
 女”寺島しのぶにソソられる。

 【裏ベスト】
  ●ティント・ブラスの白日夢
     http://www.albatros-film.com/movie/monamour.html
  ●ココシリ
     http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/index.html
  ●BLACK NIGHT(ブラックナイト)
     http://www.blacknight-movie.com/

  やっぱり“エロ一筋30年”のブラス旦那はエライ。相変わらず巨尻美女フェチなの
 もブレがなくてヨロシイ。70年代映画監督の理想はイーストウッド大将かティント・
 ブラス御大か。尻といえば、此処尻…じゃなかった「ココシリ」は、そんな冗談ヌキ
 の厳しいチベット山岳パトロール隊の仕事ぶりに敬意を。これでボランティアとは、
 “頑張らない”僕には百年かかっても無理。「ブラック~」は3エピソード中、わが
 瀬戸朝香のパートのみ面白い。

 【封切は終わったけれど…】
  遅ればせながら見た「明日の記憶」は流行の“記憶もの”とは一線を画する説得力。
 堤幸彦監督のオーソな演出もイイ。“予備軍”としては、劇中のラストを反復したり
 して明日は我が身…。頑張り屋と生真面目な人がなりやすいそうだが、該当せぬ僕は
 セーフ? と言うそばから昨日の記憶が、俳優の名前が、☆♪※∞♀…。坂上香織の
 SMもの「紅薔薇夫人」は大沢樹生、津田寛治男優陣の“暗い目”が香織緊縛図以上に
 印象的だった。

★安藤智恵子さん(ライター)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●さよなら、僕らの夏
     http://www.bokunatsu.jp
  ●13歳の夏に僕は生まれた
     http://www.13natsu.jp

  同級生をだましてボート遊びに誘い出した少年たち。日頃のイジメの仕返しに軽く
 イタズラするつもりが、シャレにならない事態に発展してしまい…。イジメっ子役の
 デブ君がすばらしく、多面性のある複雑なキャラをとてもリアルに体現。主演はカル
 キン兄弟の末っ子ローリー、MJの毒牙にかからぬことを祈ります。それにしても、
 10代の子供が夜になっても帰らないのに心配する親が一人もいないとは、恐ろしいこ
 とです。※前回のベスト「13歳~」は封切が6月になりました。

 【裏ベスト】
  ●ジャスミンの花開く
     http://www.jasminewomen.jp

  コマーシャルを見る度に、着実に進むチャン・ツィイーの老化現象を心配していま
 したが、母・娘・孫と3代にわたるヒロインを一人三役で演じたチャン嬢は(冒頭の
 イタイ若作りを除いて)どれも綺麗だった。特に第3話の、化粧っ気のないメガネっ
 娘に扮した彼女は『初恋のきた道』のときと同じぐらい、純朴なかわいらしさがよく
 出てました。驚きの路上○○シーンも必見です!

★宇田川幸洋さん(映画評論家)
 【ベスト】
  ●猫目小僧
     http://www.nekomekozo.jp

  裏も表もこの1本でダイジョーブ! 井口昇のはじめてのフィルムによる上映作品
 (撮影はHDビデオ)で、くっきりとした古典的な絵づくりとカット割りのなかに、普
 通の映画作家なら到底やらないだろうという意味もふくめた、ありえない世界が展開
 する。“にくだま=肉玉”ということばの強烈なひびき、まったく良識のかけらもな
 いヒーローである猫目小僧、しつこくくりかえされるウンコでイラマチオするかのよ
 うな怪物の襲撃……そんな世界なのに、この映画はぜひ多くのこどもたちに見せたい、
 と思わせる、童謡のようななつかしさがある(ぼくが見た試写では、主演の子役が妹
 づれで見にきて、ケタケタと大ウケしていた)。ミッドナイト・ムービーであり、こ
 ども映画でもありうる(社会的制度のじゃまさえなければ)、稀有な映画である。音
 楽も主題歌もすばらしい。座頭市のように去っていく猫目小僧を見ていると、ぜひシ
 リーズ化を! とねがいたくなる。

 【封切は終わったけれど…】
  『七人のマッハ!!!!!!!』。新橋文化でやっとつかまえ、そのスタント・アクション
 のすさまじさに仰天。だれとだれで七人なんだか、よくわからないけど、とにかくみ
 んなスゴイ。テレビ東京のひるまに放映される'70年代の作品みたいな画質も、むし
 ろしっくりくると思えてしまう不思議。スクリーンでもう1度見たいけど、無理かな
 あ。
  『ツイ・ハーク ミッション・ポッシブル:M:P-2』。これは、この欄の趣旨か
 らははずれてしまうけど、特別推薦ということで。'83年、シネマシティ(新藝城)
 作品、テディ・ロビン(泰迪羅賓)監督・主演のアクション・コメディーで、このビ
 デオ・リリースが日本初公開となる。原題は「我愛夜来香」。ぼくが20年まえ、香港
 に行きはじめたころ、ぶったまげた映画の1本である。第2次大戦中、ドイツが開発
 をすすめていた原子爆弾のフォーミュラをめぐる争奪戦。『カサブランカ』のパロ
 ディーで、酒場か食堂でフランス人とドイツ人が歌合戦をはじめると、それに日本人
 もくわわって、ゆかたで「東京音頭」をおどり狂うといったナンセンス・ギャグが充
 満。そこでおどっている「広島太郎」という日本人の敵役が、ツイ・ハーク。アッと
 おどろく結末は、これこそ、だれにもしゃべってはならない。おこり出す人もいるの
 ではないか。23日DVD発売。ブリジット・リン(林青霞)の黒タイツの怪盗ぶりもス
 テキだ。

★内海陽子さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ママが泣いた日
     http://www.annieplanet.co.jp/mama/
  ●レイヤー・ケーキ
     http://www.sonypictures.jp/movies/layercake/index.html
  ●ココシリ
     http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/index.html

  「ママが泣いた日」は、夫が失踪して怒りっぽくなった母とその娘たちの関係を意
 味深に描く。共演のケビン・コスナーのジャンパーは「さよならゲーム」で着ていた
 物ではないか?と興奮。スタイリッシュな犯罪もの「レイヤー・ケーキ」のダニエル
 ・クレイグはさすが「007」役者。エンドロールにかぶさるポピュラーソングに泣
 ける。チベット民族の誇りを描く「ココシリ」の粘り気十分な実写映像に圧倒される。
 映画撮影現場の残酷物語でもある。

 【裏ベスト】
  ●バルトの楽園
     http://www.bart-movie.jp/

  心ある日本軍人とドイツ軍捕虜の「蜜月」を謳いあげる映像にほだされる。故郷に
 帰還する若い捕虜から、折鶴を教えてくれた日本の娘に渡されたラブレターの折鶴が
 藍染めの液に沈んでいくシーンを悲しんだ。出目昌伸監督、健在。

 【封切は終わったけれど…】
  「迷い婚 ~全ての迷える女性たちへ~」
  名作「卒業」の続編的なコメディーで、若手随一のコメディエンヌ、ジェニファー・
 アニストンが健闘。「ママが泣いた日」にもまして、共演のケビン・コスナーの不良ぶ
 りが光る。"ミセス・ロビンソン"のモデルだったという設定の祖母に扮したシャーリー
 ・マクレーンも愉快。ロブ・ライナー監督、絶好調。

★馬場英美さん(ライター兼雑誌編集者)―――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ココシリ
     http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/index.html

  秘境の名にふさわしいココシリの荘厳な風景に圧倒され、チベットカモシカの密猟
 者を追う男たちの無骨さと、命をも惜しまない壮絶な生き様にヤラレました! 映像
 も力強く、久々に骨太の映画を見た気がします。

 【封切は終わったけれど…】
  6月にDVDが発売されるニコラス・ケイジ主演の『ウェザーマン』。
  未公開映画ですが、主人公の父親役でマイケル・ケインが出ていたり、出演者が意
 外と豪華でおもしろい。ニコラス・ケイジが演じるのは、仕事は順調だけど私生活で
 は子供にもなめられっぱなしのダメ男。やっぱりあの顔には情けない男の役がよく似
 合うと、妙に納得しました。あと、息子役の男の子をどこかでみたなと思ったら、
 『アバウト・ア・ボーイ』のニコラス・ホルトでびっくり。いい具合にタテに伸びて
 ます。

★浦崎浩實さん(激評家/映画評・劇評)―――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ココシリ
     http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/index.html
  ●ママが泣いた日
     http://www.annieplanet.co.jp/mama/
  ●ニューヨーク・ドール
     http://www.nyd-movie.com/
  ●メタル ヘッドバンガーズ・ジャーニー
     http://www.metal-movie.com/
  ●アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶
     http://www.longride.jp/hcb/

  「ココシリ」は2年前の東京国際映画祭で観た。自然の厳しさ、仕事の過酷さ、人
 間の酷薄さが見る者を圧倒する。こういう正統的大傑作にこそ、グランプリは与えら
 れるべき。映画祭の評価って、だいたい、ヘンです。「ママが泣いた日」の大どんで
 ん返しは意表をつく。この結末から真の物語は始まるようにも思えるのだが、長い序
 章のつもりで見るのもいいかも。後の3作はドキュメンタリー。稀代の写真家ブレッ
 ソンを写真集(岩波書店刊)で観るのも楽しい体験だが、スクリーンに大きく引き伸
 ばしてみると、劇的“瞬間”はより鮮烈だ。

 【裏ベスト】
  ●ティント・ブラスの白日夢
     http://www.albatros-film.com/movie/monamour.html
  ●プルートで朝食を
     http://www.elephant-picture.jp/pluto/

  未見だが、見たい、あるいはこれから見るであろう作品をあげて、“裏”ベストに
 代えます。
  ヘンタイ系になるでせうか?

 【封切は終わったけれど…】
  土曜の朝、たまたまTVをつけっぱなしにしていて、幸運にもピーター・イェーツ監
 督「セパレート・ピース/友情の証」(原題 A Separate Peace/wowow5月13日放
 送、2004年製作TVドラマ)を見た。“刃渡り”の曲芸にも似て、死と隣り合う青春
 という時間。校庭も教室も野も海も、その“きわどさ”が場面から滴り落ちるようだ。
 とてもTVドラマとして作られたとは思えない繊細な作品。1度、ラリー・ピアース監
 督(懐かしい!)で映画化(1972年)していたことも今回知った。見たい!

★大森さわこさん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●やわらかい生活
     http://www.yawarakai-seikatsu.com/
  ●インサイド・マン
     http://www.insideman.jp/

  「やわらかい生活」。絲山秋子の原作を読んでから映画を見ましたが、うまく映画
 にしたな、と思いました。
  原作ではうつ病の主人公と4人の男性たちとの不思議な関係が描かれるんですが、
 その微妙な距離感がおもしろいと思います。
  ただ、豊川悦司が演じる祥一は、原作の方が軽くて、映画とはだいぶ感触が違う。
 ヒロインの寺島しのぶも、原作よりメスっぽい気がします(原作はもっとカラっとし
 ている)。でも、ま、そこが作り手たちの個性かもしれないですね。
  蒲田という下町の風景も良かったです。
  昨年、フィルメックスで見ましたが、秋に見たせいか、“ちょっと哀愁”なラスト
 にも、しんみりでした。
  この時は“芥川賞作家”ではなかった絲山さんですが、今年、遂に受賞ですね。で
 もひと足先に彼女の作風に目をつけたスタッフの方々、先見の明がありました。

  「インサイド・マン」。スパイク・リー快調! 娯楽に徹して、おもしろい映画を
 撮ったと思う。もしかして、「狼たちの午後」を意識したのかな、と、思える銀行強
 盗ものだけど、ちょっとヒネリがあって、良いです。とにかく、タイトルバックが最
 高!
  あの中近東風のポップな音楽とNYの街をとらえた映像を見て、かつてのスパイク
 らしいリズムが戻ったなー、とゾクゾクしました。でも、これまでの彼の映画を嫌い
 な方にも、これなら大丈夫かも(個人的には、今も、昔も、彼は最も好きな監督のひ
 とりですが)。男優ではクライヴ・オーウェンの風来坊ぶりが、いいです。
  他にニール・ジョーダン監督の「プルートで朝食を」にも期待しています。

 【封切は終わったけれど…】
  けっこう絶賛の嵐の「博士の愛した数式」(6月発売のDVD作品)ですが、原作好き
 の方は、ご用心を!
  映画と原作は別物と思うんですが、それにしても、この脚色は…?
  さらに(アクが強すぎる)浅丘ルリ子が、あの役だなんて……どういうセンスなんで
 しょう?
  この監督の映画は、以前から苦手。別の人の演出で見たかった……。

★加藤久徳さん(映画ライター)――――――――――――――――――――――――

 【ベスト4】
  ●13歳の夏に僕は生まれた
     http://www.13natsu.jp
  ●ジャスミンの花開く
     http://www.jasminewomen.jp
  ●ホワイト・プラネット
     http://www.whiteplanet.jp/
  ●ママが泣いた日
     http://www.annieplanet.co.jp/mama/

  6月は、イタリア映画の『13歳の夏に僕は生まれた』に尽きる。あとの7本(編集
 部註:裏ベストも含む)に順位はない。
  主人公は、自動車会社を経営する富裕な家庭に育った一人の少年。思春期を迎えた
 はずの少年が初めて知ったのは、性へのめざめではなく、移民問題という、大人でも
 難しい社会現実であったという話。
  重いテーマのはずなのに、映画のスタイルは少年が遭遇する冒険ドラマだ。金持ち
 の道楽であるヨット遊びが結果として、少年を移民船に引き逢わせることになる。こ
 れが日本やアメリカの金持ち少年なら、移民なんて自分に関係ないから考えたことも
 ない! という視点でのみ主人公の性格は構築されるものだが(つまり、ただのバカ。
 あるいはボンボン)、一般家庭の食卓で政治論争が行なわれるのが普通なほど政治熱
 の高いイタリアだと少年の性格作りが違う。海中から引き上げられてからの彼の行動
 には秩序もあれば思考もともなう。馬鹿げた行動は皆無だが、それでも本作は立派な
 冒険ドラマだ。ある種、『E・T』的と言っていい。ルーマニアからやってきた2人
 の魅力的な兄妹と巡り逢うサバイバル。時にセクシーとさえ思った。この映画が映画
 として成立するのは、3人の若い男女のルックス。クライマックスはドキッとした。

 【裏ベスト4】
  ●花よりもなほ
     http://www.kore-eda.com/hana/
  ●アフロサッカー
     www.afro-soccer.jp/
  ●セキ★ララ
     http://seki-lala.com/
  ●カサノバ
     http://www.movies.co.jp/casanova/

  『花よりもなほ』。基本的に時代劇に成ってない! と、試写室の先輩方には不評
 だが、僕はそれは百も承知の上で誉めてもいいと思う。戦前の片岡千恵蔵も、戦後の
 沢島正も、売り出し当初は時代劇の本来あるべき姿を壊していたはずだしね。本作に
 は全盛期東映時代劇のスターでもあった中村嘉葎雄も出演している。端で見ている人
 間よりも、現場で演技しているベテランの意見の方が興味ある。
  とはいえ、裏ベストに入れてしまったことに変わりない。本作のバックボーンにあ
 る忠臣蔵の顛末だが、正統派時代劇の忠臣蔵の逸話において、常に疑問が頭に燻って
 いた四十七士のやり口にメスを入れたところが重要だ。時代劇の体裁になっていない
 としたら、本作の踏み込みは確信犯的で大変けっこう。47人目の義士を演じる寺島進
 は今回も好調。

★河原晶子さん(映画・音楽評論家)―――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●プルートで朝食を
     http://www.elephant-picture.jp/pluto/
  ●親密すぎるうちあけ話
     http://www.wisepolicy.com/confidences_trop_intimes/
  ●キングス&クイーン
     http://www.kingsqueen.com/
  ●美しい人
     http://www.9livesmovie.com/ ※英語サイト
  ●ニューヨーク・ドール
     http://www.nyd-movie.com/
  ●ステイ
     http://www.foxjapan.com/movies/stay/
  ●ゆれる ※7月公開
     http://www.yureru.com

  「プルートで朝食を」を観て、「クライング・ゲーム」以来、久々にニール・ジョ
 ーダンに酔いました。ブライアン・フェリーの怪演にビックリ! 「キングス&クイ
 ーン」の邦題(じつは原題のフランス語の直訳なのですが…)とはまったく印象の異
 なるアルノー・デプレシャンの極私的ドラマです。「美しい人」の監督はあのガルシ
 ア・マルケスの息子ですが、女性のヒリヒリするような孤独感・哀しみを見事にすく
 いとっています。

 【裏ベスト】
  ●フーリガン
     http://www.wisepolicy.com/hooligans/

  イギリス映画伝統の出口なしの青春群像。裏切り者の青年を演じるレオ・グレゴリ
 ーが「ブライアン・ジョーンズ/ストーンズから消えた男」でブライアンを演じてい
 ます。

 【封切は終わったけれど…】
  ●Vフォー・ヴェンデッタ
  ジョージ・オーウェル原作の「1984」と対をなす作品です。結ぶのはジョン・
 ハートです。

★黒田邦雄さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●プルートで朝食を
     http://www.elephant-picture.jp/pluto/
  ●バッシング
     http://www.bashing.jp
  ●フーリガン
     http://www.wisepolicy.com/hooligans/
  ●ドッグ・デイズ
     http://www.imageforum.co.jp/dogdays/
  ●親密すぎるうち明け話
     http://www.wisepolicy.com/confidences_trop_intimes/
  ●ココシリ
     http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/index.html

  6月は観るべき作品がいっぱい。特にイラク人質事件をモデルにした「バッシング」
 は必見。こういうテーマだとヒロインは肯定的に描かれるものだけど、そこをツイス
 トして見せた監督の根性を買う。人間の善意ほど厄介なものはない。映画もしかり。

 【裏ベスト】
  ●キングス&クイーン
     http://www.kingsqueen.com/
  ●カサノバ
     http://www.movies.co.jp/casanova/

  「キングス&クイーン」の2時間30分は、自分はインテリだと思っている人だけが
 我慢できる(あるいは楽しめる)。私はインテリだと思っている(?)ので我慢でき
 た(あるいは楽しめた)。おすぎは観たか知らん。「カサノバ」はなんともユルーい
 カサノバに唖然。カサノバっていい人だったんですね。美しいヒース・レジャーと華
 麗な映像は堪能した。

 【封切は終わったけれど…】
  おすすめではないけど、画家・田中一村の人生を描いた「アダン」にひと言。遺族
 の同意を得られないまま映画化を決行したということで、絵を描いているシーンは
 あっても彼の作品は一点も登場しない。こういう状況で映画化すべきだったのか疑問。

★佐々木淳さん(エディター&ライター)―――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●インサイド・マン
     http://www.insideman.jp/
  ●やわらかい生活
     http://www.yawarakai-seikatsu.com/
  ●キングス&クイーン
     http://www.kingsqueen.com/

  陽気のせいか、缶詰め仕事から解放されて外で人と飲みたくなった個人的気分のせ
 いか、今月挙げた3本は並べてみて初めて、どれも人肌を感じる群像劇であることに
 気がついた。『インサイド・マン』は題材こそNYでの銀行強盗という緊迫劇だが、
 個々の事情を抱えた人物の折り重なりが、テロのあったこの町に生きる人の体温を絶
 妙に表現している。また、後者2本の東京、パリを生きるヒロインと男たちの、とき
 おり神経症的になるほどツラいが、(映画としてみれば)滑稽でもある日常の積み重
 ねも胸に沁みて…。しかし、女性は強いデス。

 【封切は終わったけれど…】
  何をいまさら、と言われそうですが……遅ればせながらGWに、「有楽町マリオ
 ン」の大画面で『プロデューサーズ』を鑑賞。あのキャメラワーク、場面転換、色
 調、セット、ソング&ダンス!! すべてがさりげないMGMミュージカルのオマージュ
 に満ちていて涙。客席は5割にも満たなかったのですが、場内は爆笑に次ぐ爆笑で、
 久々に至福のロードショー体験でした!

★塩田時敏さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●やわらかい生活
     http://www.yawarakai-seikatsu.com/
  ●初恋
     http://www.hatsu-koi.jp/
  ●さよなら、僕らの夏
     http://www.bokunatsu.jp

  今月は3週間、イタリアのトリノ国立映画博物館からウーディネ極東映画祭へ、続
 けて韓国のチョンジュ国際映画祭からソウル地球環境映画祭へと回っていたので、見
 逃している試写も多いが、オススメはこの3本。「やわらかい生活」は寺島しのぶの
 匂うような甘い体臭が、「初恋」は宮崎あおいのキリリとした微熱が伝ってくるよう
 な作品だ。「さよなら、僕らの夏」も「リバーズ・エッジ」等を想わせる、痛い青春
 映画の拾いもの。

 【裏ベスト】
  ●ティント・ブラスの白日夢
     http://www.albatros-film.com/movie/monamour.html

  この裏ベスト、イタリアでDVDまで買っちゃいました。本国では昨年9月の劇場公
 開。ヴァギナもアナルももちろん丸見え。だが、ボカシの入った日本のプリントでは
 分らないが、いわゆるハードコアではない。ペニスも場面によっては作り物を使用し
 ているシーンがあることも、本篇やメイキングを見るとわかる。

★品田雄吉さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●インサイド・マン
     http://www.insideman.jp/
  ●ココシリ
     http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/index.html

  「インサイド・マン」は、犯罪行為の巧妙さが心憎い。スパイク・リー作品として
 は、すごくしゃれている。
  「ココシリ」は、不思議なパワーを持った映画だ。この素朴きわまるパワーには呆
 気(あっけ)にとられた。

 【裏ベスト】
  ●バルトの楽園
     http://www.bart-movie.jp/
  ●13歳の夏に僕は生まれた
     http://www.13natsu.jp
  ●ステイ
     http://www.foxjapan.com/movies/stay/

  「バルトの楽園」。何よりも、國村隼のドイツ語のうまさに驚いた。出目監督の話
 によると、ドイツ語を知らない人だったという。そして彼がしゃべりだしたとき、ド
 イツ人のキャスト・スタッフが(その流暢さに)どよめいたという。プロの俳優はす
 ごい!
  「13歳の夏……」は、遭難映画かと思っていたら、途中から密入国問題映画に
 なった。この変わり方にびっくり。
  「ステイ」は奇妙なサスペンス映画だったが、謎みたいなものがわかった後でも、
 だからどうなの? と言いたくなった。

★高橋諭治さん(映画ライター)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1位)フーリガン
     http://www.wisepolicy.com/hooligans/
  ●2位)ココシリ
     http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/index.html
  ●3位)さよなら、僕らの夏
     http://www.bokunatsu.jp
  ●4位)インサイド・マン
     http://www.insideman.jp/

  「フーリガン」はそんじょそこらのワールドカップ“便乗商品”とは一線を画し、
 ヤクザの抗争劇のようなストーリー展開で凶暴なフットボール・サポーターの仁義や
 友情を描いた快作。チベットカモシカ密猟の実話に基づく「ココシリ」は追跡アク
 ションとしても一級品で、中国第六世代のルー・チューアン監督は要注目の才能の持
 ち主。アメリカのインディペンデント映画「さよなら、僕らの夏」は、レイトショー
 公開がもったいないほど濃密な青春ものの傑作でした。

 【裏ベスト】
  ●1位)春の日のクマは好きですか?
     http://www.harukuma.com/
  ●2位)ブギーマン
     http://www.boogeyman.jp/
  ●3位)着信アリFinal
     http://www.chakuari.jp/web/

  「春の日のクマは好きですか?」は妄想シーン満載の韓国製ラブコメ。“物を食べ
 させたら世界一”はたまた“ゴロゴロ寝っ転がらせたら世界一”なエイリアン女優
 ペ・ドゥナの魅力を見抜いた監督が他人とは思えない。「ブギーマン」では、暗闇の
 怪物がつじつま合わせを無視した“やりっぱなし”の大暴れを披露。「着信アリ
 Final」は〆切時点で試写が始まっておらず未見ですが、ホラー&堀北真希の組み合わ
 せに激しく心引かれております。

 【封切は終わったけれど…】
  今回は“封切りはされなかったけれど”ということで、『インサイド・マン』の主
 演俳優クライブ・オーウェンの未公開ものを推薦! この人って、犯罪映画になると
 俄然魅力を発揮する不思議な男優さんなんですが、昨年末にDVD化された「ブラザー
 ・ハート」(04)はその代表例。謎の自殺を遂げた弟の復讐に燃える裏社会の男を、
 ひたすら静かに、しかし異様な迫力で演じております。同じマイク・ホッジス監督と
 のコンビ作「ルール・オブ・デス」(97)も大傑作。こちらはビデオのみですが、ノ
 ワール好きの方はぜひ探してみてください。

★田中千世子さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●やわらかい生活
     http://www.yawarakai-seikatsu.com/
  ●フーリガン
     http://www.wisepolicy.com/hooligans/
  ●ココシリ
     http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/index.html

  廣木監督の『やわらかい生活』は、脚本も主演も『ヴァイブレータ』と同じで、そ
 の上ヒロインのちゅうぶらりん状態(キャラクターは似ていないが)までそっくりな
 のに、素晴らしい映画になっている。『フーリガン』はイギリスの若い男がよく、
 『ココシリ』は山が壮麗だ。

 【裏ベスト】(偏愛する映画)
  ●OVERCOMING ―ツール・ド・フランス 激闘の真実―
     http://www.uplink.co.jp/news/log/001187.php ※劇場サイト
  ●佐賀のがばいばあちゃん
     http://www.gabai-baachan.com/

  2004年のツール・ド・フランスをデンマークの名門チームCSC中心に記録したも
 ので、選手たちの悩みやチーム監督の考えなどがよく描かれている。手ごわきライバ
 ルとしてランス・アームストロングが登場する数ショットが個人的には大いに興味が
 ある。一方佐賀のばあちゃんは素朴な一徹さが感動的。

 【封切は終わったけれど…】
  傑作ではなく愛すべき映画として『チェケラッチョ!!』をあげます。市原隼人く
 んがかわいい。あらゆる体の動きに清新なリズムがあって、『坊つちやん』や『姿三
 四郎』のリメイクを作るなら、今だ!と思う。

★轟夕起夫さん(文筆稼業)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ココシリ
     http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/index.html
  ●花よりもなほ
     http://www.kore-eda.com/hana/
  ●インサイド・マン
     http://www.insideman.jp/

  原題タイトルからは中身が判然とせず、損をしている『ココシリ』。中国最後の秘
 境として知られる「海抜5千メートルの山岳地帯にある自然保護区」での、チベット
 カモシカの密猟者とマウンテン・パトロールの熾烈な闘いを描いていて、血わき肉躍
 ります!
  『花よりもなほ』は是枝監督の“戯作者”としての新境地を推したい。冒頭の木村
 祐一の「朝だ、朝だ」の連呼は、谷岡ヤスジ先生の「アサー!」みたいだったな。
  『インサイド・マン』はやや冗漫ではあるのだが、“70年代映画”のスピリッツの
 再生が心地よくて。あと、ルパン三世(緑ジャケ)好きにもたまらん展開あり。

【裏ベスト】
  ●タイヨウのうた
     http://www.taiyonouta.jp/

  『タイヨウのうた』は、初めての映画で主演の座についたYUIに、気持ちを“持っ
 てかれた”。もともと、月9ドラマ『不機嫌なジェーン』の主題歌、メジャーデビュ
 ーとなった「feel my soul」の頃から気にはなっていたのだが、歌の力、アーティスト
 という存在の強さを改めて感じさせる作品に仕上がっている。難病モノの体裁ではあ
 るが、弱冠25才の新鋭、小泉徳宏監督の“こまやかで、したたか”な演出は要注目だ
 と思う。

 【封切りは終わったけれど…】
  現在公開中だと思いますが、『嫌われ松子の一生』は、本当に忘我の境地にいざな
 われるスゴい2時間10分。あと、ファンには言わずもがなではありますけど、6月末
 にDVDで発売されるTVドラマ『時効警察』も、未見の方は食わず嫌いせずに、ぜひ。

★西脇英夫さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1)ココシリ
     http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/index.html
  ●2)ジャスミンの花開く
     http://www.jasminewomen.jp
  ●3)13歳の夏に僕は生まれた
     http://www.13natsu.jp

  1)は、今月の最高傑作。すさまじい人間の執念と、過酷な自然との闘いが、リア
 ルに生々しく活写されていて、肌が泡立つような衝撃を受ける。ひたすら凄い! 
 2)は、ついにチャン・ツィイーが二代目コン・リーになったといえる、風格ある懐
 かしき伝統的中国映画の佳作。3)は、難民問題を子供の視線でとらえたところがユ
 ニークな社会派問題作。

 【裏ベスト】
  ●1)インサイド・マン
     http://www.insideman.jp/
  ●2)トランスポーター2
     http://tp2.jp/
  ●3)レイヤー・ケーキ
     http://www.sonypictures.jp/movies/layercake/index.html

  いずれも期待したほどではなかった作品。1)はスパイク・リーが、娯楽一辺倒の
 サスペンス物がいかに苦手かを証明しただけ。2)は前作以上に、アクションにキレ
 があるものの、鮮度に欠け、前ほどの驚きがない。3)は作り手が力を込めているほ
 ど盛り上がりがない。ただし、いずれもなかなかの力作で観て損はない。

 【封切は終わったけれど…】
  韓国映画『力道山』。特に中高年はこれを観ないと損をする。今さらながら韓国映
 画の底力のすごさを見せつけられる。キワモノではない、本物の情熱と感動が伝わっ
 てくる。この熱さ、このエネルギーは、やはり「恨」の国ならではのものだろう。

★野村正昭さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●花よりもなほ
     http://www.kore-eda.com/hana/
  ●やわらかい生活
     http://www.yawarakai-seikatsu.com/
  ●タイヨウのうた
     http://www.taiyonouta.jp/

  今までの是枝作品には(特に「誰も知らない」)反発しか覚えなかったのですが、
 この新作には驚いた。これを本当に是枝裕和氏が監督したのか! 群像ドラマとして
 も人情時代劇としても忠臣蔵外伝としても超一級品ではないか。同じように「ヴァイ
 ブレータ」に乗れなかった筆者にとって「やわらかい生活」の寺島しのぶは身につま
 され(別にウツではないが)、あと「タイヨウのうた」もYUIの個性ゆえにベストに
 挙げてしまいました。

 【裏ベスト】
  ●ドラゴン・プロジェクト 精武家庭
     http://www.cinemart.co.jp/dragon-p/ ※劇場サイト
  ●トランスポーター2
     http://tp2.jp/
  ●≒天明屋尚
     http://www.bbb-inc.co.jp/tenmyouya/

  家族全員がカンフーの達人で、兄と妹がTVのチャンネル争い=リモコンの奪い合い
 をカンフーで見せるというプロローグで笑わせてくれた「ドラゴン・プロジェクト 
 精武家庭」が面白い。「トランスポーター2」は荷物(!?)がスー・チーから子供に
 変わったのが不満だが、敵役の女殺し屋のユニークさゆえに。「≒」シリーズは全部
 見てますが、ベスト作「森山大道」に迫る出来栄えでした。

★増當竜也さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ポセイドン
     http://wwws.warnerbros.co.jp/poseidon/

  ベストってほどでもないのですが、前作がバイブルだった者にとっては興味深いリ
 メイクでした。転覆の設定以外はオリジナル。ヒューマニズムを潔く排し、見せ場の
 みで繋ぐアミューズメント仕立てで、前作よりも上映時間が短いというのも異色では
 ありますが、密室逆さま空間という設定がいかに映画的なものであるかは、改めて痛
 感できます(もっともセットは上も下もわからないほどにグチャグチャ)。ウォルフ
 ガング・ペーターゼン監督、今回は『U・ボート』を彷彿させる密室空間演出を披露
 し、久々の当たりとなりました。もちろん前作には及ばないですけどね。

 【裏ベスト】
  ●君に捧げる初恋
     http://www.cinemart.co.jp/han-fes2006/index.html ※韓流シネマフェスティバル
  ●バルトの楽園
     http://www.bart-movie.jp/

  すみません。『君に捧げる初恋』はノヴェライズを執筆したもので、宣伝兼ねてま
 す…。他の韓国映画の例に漏れず、日本と似ているようで異にするキャラの感情や意
 識を、いつもながらの濃いギャグと涙とともにのんびりご堪能くださいませ。
  『バルトの楽園』は戦争映画好きとしては、日独の美談を見せられて複雑な気持ち
 になってしまいましたが、ふと『まあだだよ』など晩年の黒澤明が『赤ひげ』を撮っ
 てたら、こんな感じになってしまうのかなという裏目読みの興味も芽生えました。監
 督・脚本、ともに黒澤組の弟子筋だし、音楽は池辺晋一郎だし、『第九』だし、マツ
 ケンは髭生やしてるし。

 【封切は終わったけれど…】
  評判の悪い『デュエリスト』ですが、私は好みでした。生まれて初めて男(カン・
 ドンウォン)を「美しい…」と思うや胸がキュンとなってしまい、いかんいかんと我
 に返ってしまった次第。少しキン・フー映画のテイストが混じっている気もしたので
 すが……気のせいかな? リメイク『ピンクパンサー』、主役キャラの個性が違いす
 ぎ。ただ劇場内はギャグが披露されるたび、お客の誰か一人か二人だけが代わる代わ
 る笑うという妙なサラウンド効果がもたらされるのは昔のまんま!? 私も片手で数え
 られるほどは笑いました。東洋人ケイトー、出てほしかったなあ。秘書ニコル役のエ
 ミリー・モーティマーが可愛い。

★まつかわ ゆまさん(シネマアナリスト)―――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●花よりもなほ
     http://www.kore-eda.com/hana/
  ●インサイド・マン
     http://www.insideman.jp/
  ●プルートで朝食を
     http://www.elephant-picture.jp/pluto/

  好きな監督が新作を作る。それが好きな作品であればいいなと思う。でも毎回上手
 くいくとは限らない。それでもこの人は今回こういうことをしようとしたんだなと、
 その挑戦やせめてもの署名の残し方に納得がいけば私は満足する。今月はそんな「あ
 ああ~、あの人がぁ」というのが多くて。その中で満足の三本。「花よりもなほ」は
 コメディ・時代劇という二つの挑戦に、現代劇では生々しくて入れにくいメッセージ
 をガツンと入れた是枝監督に拍手を送りたい。「nonfics 憲法9条」も面白かったし
 ね。志のある人です。

 【裏ベスト】
  ●カサノバ
     http://www.movies.co.jp/casanova/
  ●さよなら、僕らの夏
     http://www.bokunatsu.jp
  ●13歳の夏に僕は生まれた
     http://www.13natsu.jp
  ●ココシリ
     http://www.sonypictures.jp/movies/mountainpatrol/index.html
  ●ママが泣いた日
     http://www.annieplanet.co.jp/mama/
  ●美しい人
     http://www.9livesmovie.com/ ※英語サイト
  ●フーリガン
     http://www.wisepolicy.com/hooligans/
  ●ホワイトプラネット
     http://www.whiteplanet.jp/
  ●トランスポーター2
     http://tp2.jp/
  ●迷い婚 ~全ての迷える女性たちへ~ ※5月封切


  久し振りに女性映画が連続公開。また少しアメリカの女性たちの動向が変ってきて
 いるみたい。キャリアより家庭よ、からまたキャリアも家庭もになっているかな。
 「キューティブロンド」世代がそろそろ30歳になるところでこれからを考え始めたの
 では。フェミニズム第一世代の孫娘たちが社会に出る時期だからなのかしら。でも、
 女性監督いないね。逆に「フーリガン」のような男の世界を撮る女の人もいるように
 なったのが時代ですかね。

 【封切は終わったけれど…】
  「ホテル・ルワンダ」「ジャーヘッド」「クラッシュ」「シリアナ」「ブローク
 バック・マウンテン」「グッドナイト・アンド・グッドラック」見ておいてくださ
 い。みんなプッシュが嫌いです。

★皆川ちかさん(ライター)―――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1位)猫目小僧
     http://www.nekomekozo.jp
  ●2位)セキ★ララ
     http://seki-lala.com/
  ●3位)春の日のクマは好きですか?
     http://www.harukuma.com/

  楳図かずお先生のプリティな傑作を、「恋する幼虫」の井口昇で映画化。妖怪・猫
 目小僧が活躍しまくる地方村アクション。かわいい! かわいい! 猫目小僧。うちに
 も欲しいよ猫目小僧。ちょっと太め体型で、そこがまた。井口昇のアイデンティティ
 こと、ゲロもあれば身体的なコンプレックス描写もしっかり。竹中直人も諏訪太朗も
 出てるよ。猫目小僧を演じたのが誰なのか気になりますが、ひょっとして監督本人で
 はないでしょうか。

 【裏ベスト】
  ●やわらかい生活
     http://www.yawarakai-seikatsu.com/

  30代の無職の女性で蒲田在住。風呂なしアパートに住んで、ときどき鬱になりな
 がらもそれとな~く幸せ……。私にとってはホラー映画です。女子映画のネガ的な要
 素は、ほとんどみんな入ってるぞ。

 【封切は終わったけれど…】
  『女教師 汚れた放課後』。いわゆるにっかつロマンポルノ。教育実習時代に手ひ
 どいレイプをされた女教師が、犯人と偽証してしまった初老の男と、その娘にして自
 分の教え子の女子と交流してしまう悲痛なドラマ。主演の風祭ゆきはメガネ美人で、
 教え子役の太田あや子は蒼井優似。シンナー中毒のお父さん、三谷昇の笑顔が壮絶な
 のだ。私は根岸吉太郎を知らなさ過ぎました。

★みのわ あつおさん(ポップカルチャー評論家)――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●インサイド・マン
     http://www.insideman.jp/
  ●ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン
     http://www.getrich-movie.jp/
  ●ポセイドン
     http://wwws.warnerbros.co.jp/poseidon/

  『インサイド・マン』。『BAMBOOZLED』で、スパイクは、もはや、限界と思わせて、
 監督前作のあまりにもトホホな『SHE HATE ME』で、スパイクもこれで終わりと判断
 した。ところが、この大復活!
  人間的には最低な男だけど、やっと、今頃になってブラックスプロイテーションの
 本当の意味が身を持って分かって、改心したんだろうね。
  『ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン』。50セントのリアル・ライフなんて美
 化出来ないでしょう。久々に観るアフリカン・アメリカンとストリート・ライフの
 ネガティブな映画は、当たり前のことだけど、50セントのラップがハマる。
  『ポセイドン』。長~いエンド・クレジットを除けば、正味1時間30分。セリフに
 よるフォローのセリフが多いため、説明過剰で意味もなく映画が長くなる近年の悪し
 き傾向の中で、説明をほとんど排除して、<おいしい要素>を詰め込めるだけ詰め込
 んだという感じ。ただ、請負料が高騰していっているのに、仕事は雑になっていくと
 いうILMの姿勢が気になった。

 【裏ベスト】
  たかだが1ヶ月なので裏も表もありません。

★宮城正樹さん(映画&音楽の批評&分析家)―――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1位)初恋
     http://www.hatsu-koi.jp/
  ●2位)やわらかい生活
     http://www.yawarakai-seikatsu.com/
  ●3位)ジャスミンの花開く
     http://www.jasminewomen.jp

  女性映画に秀作が多い。時代は違うが『ALWAYS 三丁目の夕日』タッチのCGを使わ
 ず全国各地を当時の風景を求めて作った1位の邦画は、'66~'69年にない物を映さな
 いように慎重に撮った映像に好感を持った。
  2位も邦画で、藤田敏八監督の日活作品などに通じるチョイエロ系が嬉しい。
  3位の中国映画は芸者に続き本領のネイティヴを演じたチャン・ツィイーの独壇場。
 3世代の各時代別に色合いを変える凝った作りは、撮影出身の監督ならでは。

 【裏ベスト】
  ●1位)インサイド・マン
     http://www.insideman.jp/
  ●2位)ステイ
     http://www.foxjapan.com/movies/stay/

  ジョディ・フォスター始めスターが揃った1位は、スパイク・リー監督らしいグ
 レー・トーンなど映像マジックは健在だがミステリーとしては大いに不満足。犯人は
 完全犯罪を観客にアピールするがトリックには無理がある。警察犬の投入、人質の完
 璧な擦り合わせなどでいっぺんに崩壊だ。
  2位の洋画は訳の分からない映画でマジメに観ない方が楽しめる。誰がどんな時に
 見た妄想なのか。「誰」と「どんな時」を変えれば無数に作れる映画だろう。

 【封切は終わったけれど…】
  チェコ映画『プラハ!』。冒頭『アメリカン・グラフィティ』。イギリス『チキ・
 チキ・バン・バン』、アメリカ『雨に唄えば』、フランス『シェルブールの雨傘』な
 ど各国の色を入れ、テーマは『ウエストサイド物語』というウルトラ・オマージュ系。
 ソ連侵攻前をアメリカナイズで切り取ったセンスに脱帽。
  『戦場のメリー・クリスマス』的収容所を戦場に変えた『戦場のアリア』は、同じ
 1次大戦友情もの『バルトの楽(がく)園』とは出来が違う群像劇。

★宮崎祐治さん(イラストレーター)―――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●1位)インサイド・マン
     http://www.insideman.jp/
  ●2位)さよなら、僕らの夏
     http://www.bokunatsu.jp
  ●3位)親密すぎるうちあけ話
     http://www.wisepolicy.com/confidences_trop_intimes/

  夏休み映画の前のせいか、すごい映画はないけれど、それぞれ十分面白い。過去の
 映画――1位)狼たちの午後 2位)スタンド・バイ・ミー 3位)裏窓――をリスペ
 クトしながら、それ以上の展開をみせて、どれも素晴らしかった。特に「インサイド・
 マン」の脚本は新鮮。

 【裏ベスト】
  ●フーリガン
     http://www.wisepolicy.com/hooligans/

  ワールド・カップに合わせて、サッカー映画がいくつか公開され、これからも公開
 予定だそうだけれど、ほぼ観せてもらったけれど、これが一番好きだった。
 「サッカーと言うな。フットボールと言え」と怒鳴る英国魂が生きている。「けんか
 えれじい」を思い出す、ラストの男気がいい。

★森直人さん(ライター)――――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●親密すぎるうちあけ話
     http://www.wisepolicy.com/confidences_trop_intimes/
  ●やわらかい生活
     http://www.yawarakai-seikatsu.com/
  ●キングス&クイーン
     http://www.kingsqueen.com/
  ●ニューヨーク・ドール
     http://www.nyd-movie.com/
  ●ゲット・リッチ・オア・ダイ・トライン
     http://www.getrich-movie.jp/

  よくできた恋愛映画は、どれも同じ物語を描いてるように見える今日この頃。ルコ
 ント、廣木、デプレシャン、それぞれベストワークのひとつかと。そしてミュージ
 シャンの人生劇場モノの傑作を2本。

 【裏ベスト】
  ●タイヨウのうた
     http://www.taiyonouta.jp/

  YUIかわいい。

 【封切は終わったけれど…】
  『ロシアン・ドールズ』と『嫌われ松子の一生』は今年のマイベストです。共にパ
 ンフに寄稿してますので、ご鑑賞の記念にぜひ。

★山田宏一さん(映画評論家)――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●プージェー
     http://puujee.info/index.htm

  「草原を駆け抜けた少女/探検家・関野吉晴が出会った/モンゴルの少女・プージ
 ェー!」というプレスの解説に要約されたとおりのドキュメンタリー映画です。山田
 和也監督作品。
  茫漠たるモンゴルの平原のまんなかで馬を駆る9歳の少女に思わず微笑み、魅せら
 れてしまう冒頭から、痛みに近い感動に胸をしめつけられるラストまで、静かな、さ
 りげない画面の連続なのに圧倒的な(どんな劇映画もおよばないくらいの)劇的な迫
 力にみちた記録映画です。「ドキュメンタリーの父」ロバート・フラハティの『極北
 の怪異(極北のナヌック)』(1922)や土本典昭の『パルチザン前史』(1969)
 が、その後日譚とともに、どんなに劇的な人生を描いていたかを想起させました。
 「サスペンス映画の巨匠」(もちろん記録映画作家ではない)アルフレッド・ヒッチ
 コックが「大事なことは、ある位置にキャメラをセットしてシーンの撮影をおこなう
 とき、とにかくそのシーンに最もドラマチックな衝撃力をもたらすことができるかど
 うかを知ることだ」と語っていたことなども思いだしました。
  すばらしいの一語につきる必見の一本です。

 【裏ベスト】(愛すべき小品)
  ●猫目小僧
     http://www.nekomekozo.jp

  井口昇監督作品を初めて見ました。『楳図かずお恐怖劇場 まだらの少女』(2005)
 に続く楳図作品の映画化とのこと。恐怖よりもむしろ、いたずら小僧のような「まこ
 とちゃん」の世界といった感じ。

 【封切は終わったけれど…】
  あれも、これも、和洋を問わず、下ネタばやりで、ちょっとうんざり。

★渡部実さん(映画評論家)―――――――――――――――――――――――――――

 【ベスト】
  ●ナージャの村
     http://www.ne.jp/asahi/polepole/times/sosna/alec/
  ●アレクセイと泉
     http://www.ne.jp/asahi/polepole/times/sosna/alec/summary.html
■編集部より■上記2作品は6月公開との情報がありましたが、変更された可能性があ
ります。各地で自主上映会が開催されているので詳細は公式HPをご覧下さい。

  この2本の映画は日本人の映画スタッフがロシア(旧ソ連)の自然の風物を説話風
 に撮ったフィクションともドキュメンタリーともいえる作品です。原発の為に汚染さ
 れた村。そして、そこに今もわき出る泉。それらの情景がとても素晴らしい撮影に
 よって描かれています。私は学生時代に銀座で開催された旧ソ連の(トレチャコフ・
 プーシキン美術館展)に行きまして、ロシアの風物を描いたレーピン、ペーロフ、シ
 ーシキン、そして圧倒的に素晴らしかった海洋画家のアィヴァゾフスキーの油絵(こ
 の画家による波濤の描写は忘れられない)を見た時から、はたして映画はこのような
 絵画に勝てるのだろうか、という思いを長く抱いてきました。「ナージャの村」「ア
 レクセイと泉」はあきらかにそれらの風物描写に迫ろうとしている。映画と絵画の善
 き親近性を感じました。学生時代、お金がなかったので、フィルム・センターで古典
 映画を見た帰り、銀座の画廊をハシゴした時代が懐かしく思い出されます。そういえ
 ば、もちろん、高級店ではなかったのですが、初めてウィスキーのボトルを入れた店
 も銀座でした――。どうも映画から逸脱しまして失礼しました。

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┣編集後記┫

◆このメルマガを世界で初めに読む光栄にあずかっているのはもちろん れがある であ
ります(笑)。今回は『ココシリ』の圧倒的人気にロードショーに行こうと思いまし
た。轟夕起夫さんも上で書いておられますが、実は恥ずかしいくらい新作映画に通じて
ない私なので『ココシリ』が血わき肉躍る映画だなんて思いもよらず、このメルマガを
拝読(笑)しなければ映画館に行こうと思ったかどうか? もう早く見たくてたまりま
せん。『ココシリ』が一番人気になるメルマガ、これこそまさに私の読みたかったメル
マガです。末永く続いて欲しいです(笑)。山田宏一さん推薦の『プージェー』という
作品も、ものすごく気になりますよね、映画ファンのみなさん! (れがあるF)

◆リニューアルしたホームページ、ご覧いただけたでしょうか(壊れかけの古いi-Book
で作っているのですが、どうしても自分の画面サイズに合わせて作ってしまうので、他
のパソコンではどう見えるのか少々心配…)。執筆者プロフィールのページでは、みな
さんの近況と著作をご紹介しています。いずれファンレターなども受け付けられるよう
にしようかな? (れがあるU)

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★今回もっとも人気のあったベスト作品は『ココシリ』★
★今回もっとも人気のあった裏ベスト作品は『ティント・ブラスの白日夢』『バルトの
 楽園』『フーリガン』『カサノバ』『トランスポーター2』★
★ベスト、裏ベスト合わせてイチバン人気の作品は『ココシリ』でした★
★次号は夏休み直前! 7月封切の話題作が続々登場します。お楽しみに!★
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■発行日:2006年5月30日
■発行者:れがある http://www.ne.jp/asahi/regard/best-urabest
■このメールマガジンに掲載された文章の転載・転送は禁止されています
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