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月間最優秀作品賞 選評 SAMPLE 

最優秀作品賞 選評 2008年10月号 SAMPLE
一線で活躍する映画評論家の方々が、前月に試写でご覧になった映画から選出した最優秀作品賞と最優秀個人賞、その選出の理由は、映画ファン必読です。

企画・制作 れがある


SAMPLE



月刊 シネマグランプリ 2008年10月号


──最優秀作品賞──


※封切順(作品タイトルをクリックすると公式サイトにリンク)

 おくりびと  9/13

秋本鉄次
  映画評論家
「お葬式」に似て非なる題材として“納棺師”にスポットを当てた点がユニーク。本木雅弘がまさに適役だ。彼の持つ濃厚な清潔感イメージがあればこそ、この職業が純粋昇華されてゆく。初めて納棺をこなした夜、救いを乞うように妻(広末涼子)の体を性急に求めるシーンは心に染みる。ここには、一度夢破れながらもなお生き続ける人へのエールがある。さらには夭逝も、大往生も、腐乱死体も分け隔てなく浄化する、といういたわりがある。題名を“納棺師”と固くせず、あえて平仮名の優しい呼び方が心地よい。滝田洋二郎監督は“ヤバネタ”上等の人だが、今回は人間の営みへの深い共感を押し出した。原作に頼らぬオリジナルというのも今どきお値打ち。

品田雄吉  映画評論家
以前から滝田洋一郎監督はうまい人だと思っていましたが、今回は完成度が高いと感心しました。演出の呼吸が見事です。私事になりますが、アメリカ・アカデミー賞外国語映画部門の出品作の国内選考委員会の委員長を務めております。この委員会でも、満場一致でこの作品を選びました。私にとって満足のいく選考でした。演出と演技、そして撮影、すべてが優れた成果を上げていました。

山田宏一  映画評論家
冠婚葬祭映画は苦手だし、伊丹十三監督の「お葬式」もルイ・マル監督の「五月のミル」もちょっとここひとつ。そのうえ納棺の儀式なんて、あえてまた映画で見たくないと敬遠していたところ、これが見はじめたらやめられない(と言いたいくらいの)おもしろさです。粗削りな演出から繊細な演出まで題材によって多彩に撮り分ける真のプロフェッショナルとも言うべき滝田洋二郎監督の新作。清潔感あふれる本木雅弘が死体を棺に納める仕事に専念、それを知った妻の広末涼子が「とても醜い顔をして、『汚らわしい』と言うのだ」と「キネマ旬報」に大高宏雄氏が書いていて、思わず笑ってしまいます。なんといってもすばらしいのは、ベテラン納棺師の役を演じ、映画の解説書にも「飄々とした風貌と深みのある演技で圧倒的な存在感を放つ」と讃えられている山崎努です。


 アキレスと亀   9/20

高村英次
  映画ライター
単発コントのようなシークエンスを置き石のように積み重ねる北野映画のドラマツルギーは、時として冷めた笑いというか笑えない自己完結に終わるきらいがあるけれども、この売れない画家・真知寿の狂気を描いたドラマの中ではそれが幸いにもハマッて機能している。

この画家が幼少時代(子役の吉岡澪皇)、青年期(柳憂令)、中年(ビートたけし)と3世代を通じてまったく自分のスタイルを確立できない(成長もしくは成熟しない)のが笑わせるし、『モンパルナスの灯』に出てくる狡猾な画商(リノ・バンチュラ)を思わせる美術商の二代目(大森南朋)に描いた絵を毎回貶されるのも可笑しい。

真知寿はその時々の流行や巨匠画家のスタイルを真似ることしかできない凡人なのであり、自分を極限に追い込もうとして風呂の水に頭を浸かって溺れかけたり、瀕死の怪我人を助けようともせずにスケッチしたり、果てには自ら“炎の人ゴッホ”よろしく火に包まれた小屋の中で絵筆を走らせる、という具合にエスカレート。業火にやられ心も身体も傷ついた真知寿は、それでもゴミのコーラ缶にペイントしてアートとしてそれを売ろうとする。ここに芸術に憑かれた人間の、クリエイターの業がよく出ている。本人がそれをアートだと思えばアートだし、創作し続けることが人生なのだ。売れようが売れまいが<やり続けていることが楽しい>のであればそれは芸術活動なのだ、という映画が投げかけてくるメッセージには説得力があって胸打たれる。

そして何ということもないのだが、青年時代の真知寿がボロの軽自動車に絵を積んで新妻の幸子に見送られて走り去っていく日常的なワンシーンには涙が出た。「狂気の主人公が佳き理解者を得る」というのは今までの北野映画にはなかったもの。不思議と安らぐような気分になるのはそのせいだ。


 おろち  9/20

増當竜也
  映画文筆
奥深い大作映画を見ているかのようなゴージャス感、往年のハリウッド映画、もしくは日本映画黄金時代を彷彿させるクラシック感、鶴田法男監督のこれまでの古今東西の映画を換骨奪胎した映画的知識と記憶の血肉感が見事に演出に昇華されていることに、心はときめきっぱなし、スリルと緊張と恐怖に震えっぱなし、そしてラストの深い絶望の嘆息を経て、鑑賞後はどこかすがすがしい希望の光に包まれる傑作、それが映画『おろち』です。

冒頭のおろちの登場、および彼女が門を壊して屋敷に入っていくときのショットの連なり、もうそれだけで背筋がピンと張る緊張感に包まれ、ぞくっときました。そして屋敷内の階段が映し出されたとき、この映画の成功は決まった! と確信しました。とにもかくにも谷村美月がすくと立っているだけで“映画”、階段を上るだけで“映画”、一つ一つのショット、映像そのものの極彩色の美学も加わり、そのカッティングによる連なりによる浪漫恐怖世界観の構築など、全てのスタッフワークが“映画”としか言いようのない恍惚感をもたらしてくれます。

おろちの存在感からは、伊藤俊也監督作品にも通じる“孤独で凛々しい風”を感じるとともに、彼女のまとう衣裳も手伝い、どこか赤頭巾をも彷彿させるものがあります。つまりそれが危険と知りつつ、ついつい足を踏み入れてしまう少女。谷村美月の“小さな巨人”的な体躯から発散される強いオーラと、それと真逆な幼い者の弱さが入り混じった個性は、ここで見事に機能しています。また、佳子のキャラは、同じ顔をしていながら全く別人。一人二役などというレベルで語れるものではない見事さで、無垢な者ゆえのか細さと哀しみが、ただそこにいるだけで醸しだされています。佳子が「新宿鳥」を歌うところは、その間ずっと瞬きできないほどでした。また、屋敷のバルコニーで彼女がクルクル回るところなど、まさに鶴田ロマンティシズムの発露でしょう。

木村佳乃と中越典子に至っては、もう何を言葉にしても意味がないほど素晴らしく、ともに代表作として後世語り継がれるべきものです。木村の往年の女優のカリスマ感、中越の“妹”性の描出、それぞれの色分けされた衣裳の妙も大いに手伝い、いずれも見事に引き出されていました。まったく映画のタイプは異なりつつ、この二人のコンビネーションは『OK牧場の決斗』でのバート・ランカスターとカーク・ダグラスにも通じる、映画の呼吸としての粋があったようにも思います。だから、あれだけの壮絶な暴力シーンがクライマックスに用意されていながら、私のような暴力嫌いにも不快感を与えない。また、こうしたリアリズムとは一線を画した世界観の内での演技は、その大仰さが鼻についてしまうことも邦画ではよくありがりですが、今回の二人にはそれが微塵もなく、虚構のダーク浪漫世界の立ち振る舞い、その一つ一つが全てさまになり、華と毒、鮮やかさと闇、美と醜、すべてが入り乱れた混沌の魅力が沸きあがってきます。

時代背景を考慮しながら世界観を視覚的に濃厚に映えされる美術やセットもお見事で、また劇中のモノクロ映画をちゃんとスタンダードで見せているのも、当たり前のことではありながら、やはりこういった映画史的基本はおろそかにしてもらいたくないものですし(意外に無頓着な映画やドラマ、アニメが最近多すぎる)、そもそもあのモノクロ映画自体、非常に時代の空気感が濃密に出ていました。フィルムが燃えていくタイミングなども絶妙で、フィルム=映画がもたらす恐怖の序章たり得ています。キャメラが外界に出たときの粒子の荒れた映像も、荒涼とした寂しさと孤立感が滲み出ていて効果を挙げています。

私はホラーが苦手で、特にここ近年はもうこのジャンルに関して何も語れないほど、意識して見ないようになっています。ただ、その理由というのが、今のホラーの多くがショッカー、即ちグロい脅かしでしかなくなっていることにうんざりしてしまっているからで、そんな中、鶴田法男監督は私が本当に見たいホラーを毎回作ってくれています。今回の『おろち』には、ホラーも含めて今の映画が忘れてしまっている“映画”そのものの醍醐味と興奮、悲しみ、感動などなど、即ちエモーションが充満しています。だからこそ、「これがホラーだ!」と今の私には断言することはできないものの「これが映画だ!」とは堂々と胸を張って言えますし、私が観たかったホラー、怪奇、スリラー、そして感動の映画であるとも言えるのです。


 ゲット スマート  10/11

みのわあつお
  ポップ・カルチャー評論家
テレビ版のノスタルジーを隠し味にしつつ、完全にいまのノリのアクション・コメディになっている。スティーブ・カレルもハマリ役。


 東京人間喜劇  10/11

宇田川幸洋 映画評論家
短篇『ざくろ屋敷』(06)では、静止した絵画をつみかさねて、オーソドックスな映画的流れをつくり出した深田晃司監督が、劇団青年団のユニット出演による実写(ビデオ)長篇(2時間18分)で、ちょっと変わった流れをもった、新しい感触の映画をつくった。
日常的なスケッチのようなエピソードからはじまって、じわじわと奇怪なものがたりにちかづいていく。3話構成で、共通する登場人物もいるストーリーがおもしろいし、じっくりした描写のペースに味がある。


 ワイルド・バレット  10/11

西脇英夫  映画評論家
新人監督が作ったこのサスペンス・アクションはすごい!テレビシリーズ「24」が、二時間に凝縮されたような、スピーディな展開、先の読めない機知に富んだストーリーの面白さ。登場する男たちの面構えのリアル感、カメラアングル、カット、編集の巧みさなど、どれをとっても第一級。とにかく観ればわかる。

永島浩  映画案内人
『その土曜日、7時58分』『青い鳥』『ヤング@ハート』『悪夢探偵2』『永遠のこどもたち』『BOY A』。あまりにもお気に入りの作品ばかりが並んだ9月。でも一本だけ選ぶならやはりこれ『ワイルド・バレット』。なにせサム・ペキンパー、ウォルター・ヒル、そしてブライアン・デ・パルマだもの。終始「失われた拳銃探し」のサスペンスとアクションで押しながら、途中、わざわざホラーへの寄り道までしてみせるという、この新人らしからぬ余裕。そしてビックリ玉手箱のエンドクレジット。次回作も期待大。


 私がクマにキレた理由(わけ)  10/11

内海陽子  
映画評論家
小樽にある「青山別邸」という大金持ちの豪邸を見学したとき、細くて急な階段の上にある粗末な小部屋が女中部屋だとわかり、そこにたたずんだらめまいがしたので、前世、わたしは間違いなく女中(メイド)だったと思う。メイドも似合うだろうが、ナニー(子守り)もはまり役の素敵なヨハンソンが、陰険な雇い主(ローラ・リニー)にいびられながらも、ちゃっかり未来と恋人を手に入れる物語は、少し弱虫なヒロインが知的で溌剌としているので安心してわくわくできる。彼女の自分探しというより、彼女の視点を借りて成り上がり(?)富裕層のみじめさを描く映画のようで気持ちがいい。ひと(金持ち)の不幸は蜜の味。ヒロインに学があるのが救いだ。


 イーグル・アイ  10/18

野村正昭  
映画評論家
小生の周囲ではあまり芳しい評価を受けていませんが、最初に広げた大風呂敷を納得のゆく形で畳んでみせたアクションの快作。


 真木栗ノ穴   10/18

加藤久徳
  映画ライター
角川ホラー文庫から発売されているが、そのことは映画鑑賞では忘れたほうがいい。自分がそうだった。映画が始まったとき、タイトルロールでホラー文庫と初めて知ったが、映画のタッチに引き込まれ、途中で忘れたのが幸いだった。主人公は貧乏な売れない小説家である。普段の生活程度そのものがホラーであり、しかも見かけが若く、そのくせプライドは人一倍の扱いづらい独身男。つまり、何かに取り憑かれるにはうってつけの主人公ではある。

『狼少女』(05)が印象的だった深川栄洋監督が山本亜紀子の小説『穴』を脚色・監督。自分ワールドでの作品作りだが、主人公の真木栗を演じたのが優男の西島秀俊だったのが成功の一因。(役作りとはいえ)生活と創作に疲れ気味な中年一歩手前の作家のイメージにはピッタリだ。ヒロインの栗田麗の容姿も、舞台となる鎌倉の風景に溶け込んでいて自然だ。もうひとり、アパートの大家を演じる老優も出色の存在感。この人はプロの俳優か?

大作も少なくなかった9月だが、低予算のこの映画がいちばん面白かった。


 夢のまにまに  10/18

高崎俊夫  編集者
木村威夫がこれまで撮った短篇は、良くも悪くも<奔放なイメージ遊び>の域を出なかったが、初めての長編劇映画『夢のまにまに』は、彼の戦争体験が、かつてないほどあらわに表出されていて驚いた。晩年の黒木和雄の゛戦争三部作゛の美術を手がけたことが大いに影響を与えたのかもしれないが、原爆のイメージひとつとっても、激しく糾弾する姿勢を崩さぬ昭和一ケタ生まれの黒木と較べると、大正ロマンティシズムの洗礼を受けた世代特有の、えもいわれぬ無常観が色濃く滲んでいる。長門裕之が演じる映画学校の学院長は、明らかに木村の分身だが、彼の戦争に翻弄された悲惨な記憶と対比されるように、ひとりの学生との交流が描かれ、そこからいつの時代にも通底する、゛生きることの困難さ゛という切実な課題が浮かび上がってくる。なによりも映像そのものに弾力があり、その若々しい息吹に圧倒されてしまった。


 ハロウィン  10/25

三留まゆみ
 イラストライター
ロブ・ゾンビの素晴らしさは『デビルズ・リジェクト~マーダー・ライド・ショー2』ですでに証明済みだが、まさかここまでやるとは! ほんと惚れ直しました。まさにリメイク映画の鏡!! 魂の入り方が違う。オリジナルへのリスペクトの大きさがまったく違う。もう神がかりといっていい完成度なのである。いや、リメイクというよりもジョン・カーペンター版『ハロウィン』のミッシング・ピースといった方がいいかもしれない。30年の歳月をかけて完結した『ハロウィン』。ゾンビ版を観たあとはカーペンター版がせつないまでに恋しくなり、カーペンター版を観たあとは狂おしいほどにゾンビ版が恋しくなり、そしてこの永久運動の中で死んでもいいと思うのだ。


 ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢  10/25

横森文
  ライター&役者
あの大人気のブロードウェイミュージカル『コーラスライン』が久々に再演になった。その再演に至るまでのオーディションを追ったドキュメンタリーだ。もともと『コーラスライン』自体がオーディションの模様を舞台化した作品だけに、ユニークな多重構造になっていて、その仕掛けだけでも相当に面白い。まさにリアル『コーラスライン』が展開していくわけで、オーディションにすべてを賭ける人達の姿は 本当に胸に迫る。感動する。特に劇団四季の『コーラスライン』を必死に観ていた世代にはたまらないはずだ。


 その日のまえに  11/1

まつかわゆま
  シネマアナリスト
大林監督の作品の中では「異人たちの夏」「ふたり」「あした」の流れをくむ一本。「生」のすぐお隣にある「死」に足を踏み込んでいながら「生」にも片足をかけ生者を励ましてくれる人々のお話。生者を見守ることで”生き続ける”死者たち。死者に見守られることで、より「生」を愛おしむ生者たち。ヒロシマの対岸に暮らし、医師の子として育った監督の死生観なのかもしれない。

「死」を迎える準備を着々と進めるまだ若い母を演ずる永作博美がいい。妻の体調を気遣いながらも、彼女のしようと決めたことを実現させるため妻に寄り添う夫に、自分もこうありたいと思う。亡き人々への悔いを浄化してくれるような作品で、それはこれから迎えるであろう愛おしい人の死への心構えにもなってくれるだろう。見ている間は我慢したが、試写のあと話していてこらえきれず泣いてしまった。


 ブタがいた教室   11/1

馬場英美
  ライター
期待することなく観たのがよかったのか、それとも演技とは思えない自然体の子供たちの姿に胸打たれたのか。豚を食べるか、食べないかの議論が白熱するシーンでは、自分もその場にいるかのような感覚で双方の意見に耳を傾け、子供たちの真剣な眼差しと、子供ゆえのストレートかつ鋭い意見に心を揺さぶられた。「こんな子、クラスにいそう」と思わせる子役選びのバランスもよく、妻夫木聡が本物の教師に見えたのもよかった。


 かけひきは、恋のはじまり  11/8

宮城正樹
  映画&音楽分析評論家
禁酒法時代ただ中の1925年のアメリカを描きながらも、古き良きアメリカの風景と心を捉えた、ジョージ・クルーニー監督・主演の痺れるような渋い1作。

赤狩りに遭った監督たちへオマージュを捧げ、1930年代的映画風なモノクロ・イメージで描いた前作の「グッドナイト&グッドラック」(2005)よりもさらに時代をさかのぼって、共に野球映画の「ナチュラル」('84)や「プリティ・リーグ」('92)なテイストで、フットボールのスポ根映画系も取り入れた快作だ。

1925年の時代感描写をするために、照明・フィルター・インテリア・壁色などセピア・トーンを全編にわたり強調したり、洗練されたハードボイルドを思い出させるクルーニーとレニー・ゼルウィガーのやりとり、オールド・ジャズの効果的な使い方なども心をくすぐる。

「或る夜の出来事」('34)的なシーンも含め、都会派コメディーのエルンスト・ルビッチ監督やその弟子・ビリー・ワイルダー監督、さらに「オペラハット」('36)などのフランク・キャプラ監督らへ、敬意を捧げた感じもグッとクル仕上がり。


 GSワンダーランド  11/15

森直人  ライター
和製「すべてをあなたに」('96)!? 本田隆一監督の箱庭ワンダーランドが、スタンダードな青春映画へと突き抜けた快作。元ザ・ファントムギフトのサリー久保田を起用した音楽面も完璧!


 ある脅迫  11/22-30東京フィルメックス

佐々木淳
  フリーエディター&ライター
最優秀作品賞というわけではないのですが……。11月に行なわれる東京フィルメックスの記者発表試写でみた旧作(60/蔵原惟繕)です。

東京フィルメックスの一部門として開催される日本映画の監督特集では毎年、新たな発見ともいえる出会いをしています。内田吐夢特集での『自分の穴の中で』、中川信夫特集での『思春の泉』、山本薩夫特集での『赤い水』など。自分が上記の監督に対してまだまだ不勉強な点もあると思うのですが、これらの作品は、それぞれの監督に対する勝手な先入観を突き崩してくれました。こうした作品がたった10本強のセレクションのなかに、さりげなく放り込まれているのが、毎年、この特集のプログラムの楽しさです。

そして今年上映の蔵原惟繕特集に先駆けて試写されたのが、この『ある脅迫』。個人的には傑作とは申しませんが、たった66分でこの密度は圧倒的。裕次郎映画ではなく、これを試写の1本に選んだところに、映画祭プログラマーのニヤリとした目配せが目に浮かびます。今年もやってくれそう、と期待を抱かせてくれた点で。


 ザ・フー:アメイジング・ジャーニー  11/22

田中千世子  映画評論家
インタヴューに答えるピートが面白かった。バンドが売れ出して、メンバーたちは興奮剤を常用するようになるが、声が枯れるからとロジャー・ダルトリーが服用をやめ、仲間から浮いてしまったことについてピート・タウンゼントが言う。ロジャーにしてみれば無理もなかったんだ、と。「他のメンバーはキースも天才、ジョンも天才、自分も天才。でもロジャーはシンガーなんだ」。ただのシンガーで、音楽的な天才ではないという厳しい評価を当たり前のように現在のピートが話す。思わず引き込まれた。ドキュメンタリーは言葉だなあ、としみじみ思う。

河原晶子  映画評論家
ビートルズやローリング・ストーンズとともにブリティッシュ・ロックの一時代を築いたザ・フー。60代中途になったピート・タウンゼントとロジャー・ダルトリーがバンドの軌跡を語る。ケン・ラッセルの「トミー」のチャーミングだったロジャーの激変はショックだったが、ピートは渋い知的な風貌になっていた。キース・ムーンとジョン・エントゥイッスルの死を超えてはじめて強い絆を知ったと語る2人のことばが思わず胸に迫る。見事な人間ドラマである。

渡部実  映画評論家/大学講師
ビートルズ、ローリング・ストーンズと異なり、The WHOは英国のロックを語る上で気になっていたのですが、マーレイ・ラーナー監督は以前、バイオリニスト、アイザック・スターンの記録「毛沢東からモーツァルトへ/中国のアイザック・スターン」(1980年)を発表しており、あの映画がなかなか良く、今回も期待しました。期待どおり、The WHOのリーダーであるピート・タウンゼントへの取材が充実。貴重な1960年代のフィルムも満載の内容で、堪能しました。


 トロピック・サンダー/史上最低の作戦  11/22

永野寿彦 シネマ・イラストライター
濃い。濃厚トンコツスープにさらに背脂ドップリ投入したくらいにコッテリと中身が濃い。落ち目のアクション俳優と下品なコメディアンと役者バカなアカデミー賞俳優がベトナム映画撮影中にホンモノの戦闘に巻き込まれるというお話ながら、のっけから何の説明もないままギャグを繰り出し、表面的なドタバタには頼らず、ブラックなネタも含め、とことん奥深く真剣にバカバカしいシチュエーションを作り上げていくあたりが、いかにもベン・スティラー監督作らしい。名前の書けない超大物俳優を筆頭にしたカメオ出演、それぞれの俳優たちのオフィシャルサイトまで作られている本気の遊び、メイキングまでもが某有名映画のメイキング作のパロディという徹底ぶりが、根っからのアメリカン・コメディ好きにはたまりません。ケッサクです。


 バンク・ジョブ  11/22

浦崎浩實  激評家=映画評・芝居評
今年は久々、アクション系映画(クライムもの、コメディ色を含む)の当たり年では? ざっと挙げるだけでも「インビジブル・ターゲット」「ワイルド・バレット」「デス・レース」「ゲット スマート」「宿命」「エグザイル/絆」「レッドクリフ」etc.があって、「ハロウィン」も加えたいところだが(笑)、アクションのコネタを次から次、繰り出してくる点で「ワイルド・バレット」に譲るものの、「バンク・ジョブ」の“悪党”たちが図らずも国家体制を手玉に取るという骨太さに、シビれた。偉い! 禿頭(とくとう。はげあたま、と読まないように、意味は同じでも!)のアクション・スター、ジェイソン・ステイサムがいよいよ快調!


 ぼくのおばあちゃん  12/6

安藤智恵子
 ライター
今の<お祖母ちゃん>たちは若くて元気でちっとも<お婆ちゃん>じゃないが、菅井きん扮する<おばあちゃん>は昭和のおばあちゃんそのもの。岡本健一の妙なセリフ回しなど少々ウザい部分もあるが、本当に心のこもったやりとりで笑わせ、泣かせる菅井と孫(幼少期&少年期の子役2人)の存在が、すべて帳消しにしてくれた。全国のおばあちゃん子、必見!


 エグザイル/絆  12/6

暉峻創三
  映画評論家
ジョニー・トー美学のまさに集大成。彼の映画作りを深く理解する同志ばかりを現場にかき集めて、やりたい放題を尽くした爽快さ。


 WALL・E ウォーリー  12/15

稲垣都々世 映画評論家
開巻の寂しさがいい。ウォーリーの健気さに涙した。


 ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト  12/15

松島利行
  映画評論家
20世紀がどんな時代だったか、せいぜいその3分の2弱しか知らないのだけれど、人類の価値観、道徳観を一変させた契機があった。第二次世界大戦とその混乱の中からにじみ出た実存主義もあるけれど、第三世界で革命が国境を越えて広がったころに私たちはロックンロールからロックへと青春を過ごした。自分自身は美空ひばりやエルヴィス・プレスリーの世代なのだけど、享受し、体験したものは反抗とイモラルなローリング・ストーンズそのものだった。ストーンズに象徴される何かと言うべきなのかもしれないが、ジャン=リュック・ゴダール、そしていまマーチン・スコセッシの思いを勝手に共有したつもりである。


 永遠のこどもたち  12/20

高橋諭治  映画ライター
恐怖映画の次なる大傑作はスペインから生まれる。そんなかねてから筆者が抱いていた漠然とした思いが現実のものとなった。ギレルモ・デル・トロ製作のもと、フアン・アントニオ・バヨナという新人監督が撮ったこの映画には、『たたり』『回転』『ヘルハウス』といったアメリカ恐怖映画史の最も偉大な遺産が受け継がれている。舞台となるのは、かつて孤児院だった海辺の屋敷。当然ながら子供の亡霊が恐怖の源なのだが、その肝心の亡霊が姿を現さない。いつ出現してもおかしくないハイレベルな緊張感が一貫して保たれているのに、いっこうに現れないのだ。しかし観客を焦らしに焦らした終盤、ついに「ここだ!」というタイミングで現れる。この映画の最大の戦慄にして最高の感動の瞬間だ。これは本当に凄い。その感動を体験するためにも、絶対にファースト・カットを見逃してはならない。


 ラースと、その彼女  12/20

黒田邦雄
  映画評論家
一見、心温まるファンタジー。しかし、それだけの映画だろうか。トラウマから女を妊娠させられない宿命を抱えた青年の地獄がベースにあるから、地域社会の善意の輪が凄みを帯びてくる。


 ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー  2009年1/9

皆川ちか  ライター
マイナー人間の受ける精神的&肉体的迫害を切実に詩的にオタクに描いて、やはりギレルモ・デル・トロ映画にハズレなし。グロ描写も相変わらずきついです。


 悲夢(ヒム)  2009年2/7

塩田時敏
  映画評論家
決定的な“画”からドラマを発想するキム・ギドクだが、いつもとちがい、どうも本作は“設定”から練り上げているようだ。でも、やはり面白い。



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